あの時、Appleは何をしていたのか 数々のデジタル革命をApple視点で振り返る(後編):Mac40周年(4/4 ページ)

» 2024年01月31日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]
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デジタルハブへと進化したMac

 iMacの発表は、PC業界の雰囲気を一変させ、市場には半透明のUSB周辺機器などがあふれた。Appleは止まることなくiMacに新たな魅力を加えようとビデオ編集ソフト「iMovie」を発表するなど付属ソフトを開発したり、ビデオ編集をしやすくするように「FireWire」(規格名はIEEE 1394、ソニーはiLinkと呼称)と呼ばれるソニーらと開発した周辺機器の接続技術をMacに標準搭載したりしていた。

 AppleはiMac発売後の1998〜2000年頃、PC業界の潮目が変わったのを感じ始めていたのだろう。ちょうど高画素化や小型化でデジタルカメラの実用性が急速に高まっていた時期で、フィルムカメラと市場シェアが逆転しそうな時代だった。

 この頃には携帯電話も一般に普及し始め、高機能化した携帯電話には高性能なカメラなどの機能が搭載され始めていた。また、Napsterに代表されるP2Pファイル交換ソフトが話題となり、MP3の音楽ファイルが一気に増え、それをPCだけでなく外出先でも聞くためのデジタル音楽プレイヤーも次々と登場していた。

 しばしばガジェットと総括される、これらの小型機器は、Windows 95の大ヒットで力をつけていた世界中の量販店や電気店の新たな収益源としても大きな注目を集めていた。

 2000年頃には、これらの機器の話題があまりにも大きくなってきたため、米国でもウォール・ストリートジャーナルの名物記者、ウォルト・モスバーグ氏が「24年間、時代の先頭を走り続けてきたPCは、今ではつまらない存在になってしまった」と書き、Windows PCメーカーのCompaq Computerや旧Gatewayの代表もPCではなくガジェットの開発に力を入れると宣言をしていた。

 2001年1月、Macworld Expoというイベントの基調講演でスティーブ・ジョブズ氏はこれらの動きを受けて「PCの時代が終わったのではなく、PCの役割が変わった」と述べた。

iMacの発表で一時勢いを取り戻したMacだが、2000年頃からガジェットの時代が始まると停滞期を迎えた。スティーブ・ジョブズ氏は、これからはガジェット類を中心にしたデジタルライフスタイルの時代が始まると予想し、Macがそれらの機器を繋ぐデジタルハブになると宣言した(写真は2001年1月に開催されたMacworld Expo/SAN FRANCISCOの基調講演より)

 では、そのPCの新しい役割とは何かというと、さまざまな新しいデジタル機器と接続することで、それらの機器単体では難しい設定を簡単に行ったり、収集したデータの分析や編集を行ったりする装置になるということだった。

 そしてMacは、まさにそんなデジタルライフスタイル時代の中枢になると宣言した。デジタル音楽プレイヤーと連携するiTunesやビデオカメラと連携するiMovieの新バージョンなどを発表し、後にデジタルカメラ連携を果たすiPhotoなども発表した。

 実はiTunesの最初のバージョンを出した時点は、Appleはまだ音楽プレイヤーのiPod(2001年)を出す前だったので、最初のiTunesは他社製の音楽プレイヤーと連携して時計を合わせたり、プレイリストを転送したりする機能を備えていた。

 しかし、それから10カ月後には、Appleはわずか半年で開発をしたという初代iPodを発表。このiPodが大変評判がよく、後にWindows版を出すと大ブレークした。

 それまで市場シェアが約3%だったMacユーザーだけを相手にビジネスをしていたAppleのビジネス規模が急拡大し、Appleが成長するきっかけとなった。その後、Appleはその成功を礎に、Apple直営店でiPod売り場にiPodと連携しやすいお勧めPCとしてMacを売るなど工夫を始めたが、さらにAppleを大きく変えたのは2007年のiPhone発表、そして2010年のiPadのリリースだった。

 これら2製品は、Macとは出荷数でもビジネス規模でも桁が違う成功を収めることになった。

 iPadの発表が行われた2010年末、Appleは最新OS「Mac OS X Lion」の発表時に「これからはiPhoneやiPadといった新世代のデバイスで搭載した成功要因をMacに還元していく」とする「Back to the Mac」宣言を行った。

2010年10月のスペシャルイベントの名称が「Back to the Mac」だった

 これは当初、App Storeの採用や(トラックパッドを使った)マルチタッチのジェスチャー、自動保存機能などを指していたが、その後、この考え方がハードウェアにも浸透してきて、AppleはiPhone/iPad同様、2020年からMacのプロセッサも自社開発に切り替え始めた。このプロセッサが省電力でありながら、驚くべき性能を発揮するとして大きな話題を呼んでいる。

 また、今日のMacはiCloudを介した連携でiPhoneやiPadで行っていた作業の続きをするといった連携もやりやすくなり、幅広い人々が幅広い用途で活用する万能PCとして、40年の歴史の中でも製品の人気も最高潮に達している。

 そんな中、AppleはMac成長の今後の注目エリアとして空間コンピューティング用コンテンツの製作、大規模言語モデルなどを含む生成系AI利用のためのプラットフォーム、そして最高のゲームマシンとなることの3つを掲げている。

 10年後の50周年に向けて、現存する最古のPCブランドであるMacが、さらにどんな成長をするのかは気になるところだ。

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