実は最古のPCブランド「Mac」進化の旅路と、1980年代を象徴する“ニューメディア”を振り返る(前編)Mac40周年(1/3 ページ)

» 2024年01月30日 12時00分 公開
[林信行ITmedia]

 現存する最古のPCブランドとして、「Mac」は1月24日に40周年を迎えた。ただし、1981年登場の富士通「FM-8」をFMVシリーズ(現:富士通クライアントコンピューティング)の前身とするなら、こちらの方がMacより3年古いことになる。

 次いで継続しているPCブランドを挙げるとすれば、米IBMの「ThinkPad」が続く(現在はLenovoがブランドを継承)。1992年に登場し、現在は32周年であることを考えると、40年の歴史を持つMacがどれほど際立っているかがうかがい知れる。

 「1月24日、AppleはMacintosh(Mac)を発表する。なぜ1984年は(ジョージ・オーウェル氏のディストピアSF小説)『1984』のようにならないかを知ることになるだろう。」というコピーを使った伝説のCMで鮮烈なデビューを果たしたMacは、その後も時代の先頭に立ち、革新を続けてきた。いったい、40年でどれほど世の中を変えてきたのか、簡単に振り返ってみたい。

Appleが公開したMacの40周年を記念するロゴ

Macが登場した1984年の時代背景

 その前に、50歳代未満の読者も多いことを考えると、40年前の1984年がどんな時代で、人々がどのように過ごしていたかを振り返る必要があるだろう。

 当時は当然ながら携帯電話は存在しておらず、その前身の自動車電話もほとんど普及していない。世間一般に知られるようになった、肩からぶら下げて使う「ショルダーフォン100型」が登場するのは翌1985年だ。TVはブラウン管を搭載した奥行きのある箱型で、画面の横幅は今よりかなり短かった。

 社会に目を向ければ、JRグループはまだなく、国が運営する日本国有鉄道として通称「国鉄」(こくてつ)が存在していた。

 電車に乗るには、改札に立っている鉄道員に定期券を見せるか、券売機で買った切符に改札ばさみと呼ばれる特殊な器具で使用済みであることを示す切り込みの印をつけていた(自動改札自体は1967年に発明されたていたが、まだ超レアな存在だった)。その後、スタンプに代わり、ICカードなどに置き換わっていった。

日本電信電話公社(現:NTTドコモ)が1985年に発売した「ショルダーフォン」

 人々の情報源は新聞や雑誌、TVやラジオがメインで。朝夕の電車では人々が当たり前に新聞や雑誌を読んでいて、ほとんどの人が何かしらTV番組を見ていた。翌日に学校や職場へ行くと、人々は前夜のTV番組の話題を興じていた。

 月刊誌などは時間をかけて丁寧に作られていた。ファッション雑誌では1枚の写真を撮るために何日もかけることは珍しくなく、記事の文章も何度も丁寧に校正が行われた。

 これには理由がある。当時は原稿と写真や絵図などの記事の材料がそろったら、それに手で描いたページのラフイメージを添えて印刷所や写植屋などにバイク便などを使って送っていた。そこで写真植字機(写植機)などを使って印画紙に打ち出された文字に、写真や図版などを組み合わせて誌面のレイアウトを組んでもらう。

 さまざまな工程を経て出来上がった、文字や図版といった要素を組み上げた校正刷り(ゲラ)が編集部に戻される。時間がないときは、編集部自体が印刷所に缶詰のような状態も多々あった。この状態でもまだ修正はできるが、その分だけ追加の費用や工数が発生するため、大きな変更は厳しい(そもそも、その時間すらない場合もある)。

 こうしたやりとりを通して、ようやく雑誌が作られていたので、例えばイベントの取材レポートなども月刊誌であれば2〜3カ月後にようやく記事になるといったことも珍しくなかった(その分、速報は新聞やTV、ラジオなどの役割となっていた)。

2005年12月まで、PC USERも雑誌として販売されていた(写真は1998年6/24号)

 それでもWebがない時代なので、TVやラジオでは紹介してくれないようなニッチ分野のレポートなどは、ひたすらその分野の雑誌のレポートを待つ必要があった。

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