「Alienware Proワイヤレス ゲーミング キーボード」(以下「Proキーボード」)は、独自の2.4GHz無線、Bluetooth、有線(USB)の3種類で接続できる他、キースイッチの交換にも対応する、プロゲーマー向けのハイエンドキーボードだ。先に紹介したProマウスと同様、2色展開となる。
日本では米国英語(US)配列モデルのみ発売される予定で、今回のレビューも同配列モデルで行っている。
本キーボードは、一般的なデスクトップ向けキーボードからテンキーと一部の機能キーを省いた、いわゆる「75%キーボード」となっている。
最近のeスポーツシーンでは、ゲームで使う機会の少ないファンクションキーも省いた「60%キーボード」が多く使われるようになっている。しかし、普段使いも考慮に入れると、カーソルキーなども備える75%キーボードの方が実用面で有利だ。
サイズは約312.4(幅) ×127 (奥行き)× 40.6(高さ)mmで、マウスの操作スペースを大きく取りたい場合も扱いやすい。本体重量は約819.73gと、サイズの割にズッシリとしているため、不意にキーボードの位置がずれてしまう心配も少ない。
先述の通り、PCとの接続は独自の2.4GHz無線、Bluetoothと有線の3方式に対応する。2.4GHz無線は、通信規格自体はProマウスと同一だが、同じUSBドングルでキーボードとマウスを同時接続する機能は備えていない。Proマウスと同時に無線接続する場合は、それぞれのドングルをPCとつなげる必要がある。
Bluetooth接続の場合、最大3台のデバイスのマルチペアリングに対応している。接続先は、本体前方にあるボタンでスムーズに切り替え可能だ。
なお、Bluetooth接続時は、独自の2.4GHz無線と比べると、伝送にどうしても遅延が発生してしまう。精密かつスピーディーな操作が求められる競技ゲームシーンでは、独自無線による接続か有線接続をお勧めする。
無線接続時のバッテリー駆動時間は2.4GHz無線で最長798時間、Bluetooth接続で最長1800時間となっている。この値はいずれもRGBライティングを無効化した状態での公称値なので、有効化した場合は持続時間が変動する。
とはいえ、基本的にプレイ中にバッテリーが枯渇するといった心配はせずに遊べそうだ。
キースイッチには、Alienwareが独自開発した「Alienware リニア メカニカル スイッチ」を採用する。プロゲーマーと緊密に連携しながら調整を重ねたというキースイッチは、キー荷重は約40gとゲームはもちろん、タイピングでも快適な操作感を実現たという。
実際に使ってみると、快適さに偽りはない。スイッチには、潤滑剤(ルブ)があらかじめ塗り込まれているため、キーストロークも滑らかだ。コトコトとしたタイピング感に心地よさすら覚える。
Proキーボードでは、「ホットスワップ」と呼ばれるキースイッチの換装にも対応している。他社製の3ピン/5ピンおよび3ピンのメカニカルキースイッチのほとんどと互換性があるため、アクチュエーション(反応)ポイントやキー荷重などを自分好みにカスタマイズしたいというニーズにも対応できる。
なお、Proキーボードは、ここ半年ほどで対応モデルが増えた「ラピッドトリガー」には対応していない。
ラピッドトリガーは、キーから指が離れたことを検知すると、アクチュエーションポイントまで戻るのを待たずにキー入力を“オフ”にする機能だ。最近は、キー入力を一層迅速化する観点から、本機能を備えるキーボードが増えつつある。筆者も、普段はラピッドトリガー対応キーボードでFPSゲームをプレイしている。
そのせいか、ラピッドトリガーに対応しないこのキーボードでFPSゲームをプレイしてみると、キャラクター操作の“機敏さ”が感じられなくなってしまい、明確な違和感を覚えた。ラピッドトリガー非対応のキーボードからの買い換えであれば問題ないだろうが、ラピッドトリガーキーボードに慣れてしまった身からすると少しつらい。
eスポーツ向け製品としては後発なだけに、ラピッドトリガーに対応しない点はもったいないと感じた。
Proマウスと同様に、ProキーボードもAlienware Command CenterからRGBライティングの設定や各キーの機能変更(リマップ/マクロ設定など)を行える。ゲーム中に誤って押したくない「Windowsキー」も無効化できるため、快適なゲーム体験を追求したい人は利用して損はない。
Proマウスと同様に、Proキーボードも数日間ゲームや簡単なPC作業で試用したが、やはり潤滑剤の塗られたキースイッチの持つ、独特の打ち心地が印象的だった。キーボード本体に搭載されている2層構造のシリコンレイヤーも操作性の向上に貢献しているようで、使っていて操作に引っかかりを感じることはなかった。
ただし、本製品は先述の通りラピッドトリガーに対応していないため、対応製品と比べるとキー入力のレスポンスは明らかに遅い。ごく普通のタイピングや一般的なPCゲームで遊んでいる場合は支障にはならないが、精密かつスピーディーなキーボードレスポンスが求められるFPSゲームでは、ストッピング動作にもたつきや遅れを感じる場面も少なからずあった。
米ドル建てで199ドルという価格は、Proマウス同様に競技ゲーミング向けキーボードとしては標準的か、少し安価な設定だ。それでいてキーボードとしての作りや、キーの打ち心地はしっかりとしている。それだけに、ラピッドトリガーに対応していないのは非常に惜しい。
この点に関しては、今後のキースイッチとソフトウェア両面でのアップデートに期待したい。
気になるポイントはあったものの、総じて両製品はブランド初の競技ゲーミング用製品とは思えない完成度だった。日本での正式発表に期待したい。
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