―― 今回展示された製品も含めて、「AI PC」と呼ばれるNPU搭載PCが多数登場しています。市場の反応はいかがでしょうか
ユー氏 Lenovo独自調査の結果では、エンドユーザーの66%以上が自分の仕事などにAI PCが活躍すると回答しています。また、今後3〜5年以内にAI PCによって日常生活が変わるとも考えられているため、市場の反応は非常に良いといえます。
IDCの調査によると、2024年末までに全世界で販売されるPCのうち、AI PCは30%ほどと見込まれていますが、2027年にはその割合が60%に成長すると考えられているといいます。今後(AI PCの市場は)大きく成長していくでしょう。
―― 一般ユーザーの観点から、今後PCに求められる機能はどういったものがあるとお考えでしょうか
ユー氏 現在の一般ユーザーが注目している機能は、やはりAIです。これは世界的に見ても同じで、AIはPCにとって非常に重要な機能となっていくでしょう。PCは既に新たな時代に突入しているといえます。
この点では、プレミアムやゲーミングのセグメントも同様です。こういった分野のPCは今後、(売り上げベースで)PC市場全体の45%ほどに成長していくと考えています。
日本市場では、特にプレミアムセグメントが重要であると考えています。日本はAPAC地域の中でも平均所得が高く、PCの購買意欲も高めです。AIへの需要が高まることで、プレミアムセグメントの比率がより高まっていくでしょう。
―― 「MWC 2024」では、透明ディスプレイを搭載するコンセプトノートPCを展示しました。ただ、そういったコンセプトモデルが製品化に至ることは少ないように思いますが、Lenovoがそういったコンセプトモデルを示す意味はどういったところにありますか。
ユー氏 それは私たちの革新性や優れた技術力を示したい、ということに尽きます。すぐに製品化できないものであっても、将来的には実現可能というものもあります。
有機ELディスプレイを例に取ると、以前は非常に高価でしたが、現在では比較的安価なノートPCでも搭載できるようになりました。私たちが革新的で技術的にも優れた製品を開発するという意欲を持ち続ける限り、コンセプトモデルのような製品も(長い目で見れば)実現できると考えています。
―― 日本のユーザーは、世界と比べてPCに求めるものが違っていると思います。そういった中、Lenovoは日本に大和研究所(横浜市西区)を構えて、主に(ビジネス向けの)ThinkPadシリーズの開発を行っています。日本のユーザーがPCに求めるものは、ワールドワイド向けの製品にどういった影響を与えているのでしょうか。
ユー氏 レノボ・ジャパン(日本法人)の大和研究所の開発チームには、日本人が多く所属していますし、日本市場に関しても非常に詳しいです。
例えば彼らに「日本人の多くはとても小さくて軽いノートPCが好きで、常にノートPCを持って仕事に行ってるんだよね?」と聞いたところ、「日本のノートPC需要の大半は持ち運びを考慮していない15.6型モデルで、会社での仕事はその日のうちに終わらせて、会社にノートPCを置いたまま帰宅する人がほとんどだ」と言うのです。これは、私からすると大きな驚きでした。
しかし、日本市場がPCに求めるものとして重要な「品質と丈夫さ」は、ワールドワイドの製品にも生かされています。例えば、ミリタリーグレードの耐衝撃性能や耐環境性能を実現したり、優れた性能と長時間のバッテリー駆動を両立したりといった部分は、ワールドワイドでも広く求められています。そういった意味で、日本市場(の要望)は、ワールドワイドの製品に対してさまざまな影響を与えていると考えています。
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