Lenovoは3月27〜28日、アジア太平洋地域のコンシューマー事業に関する説明会「Lenovo Innovate '24」をタイのバンコクで開催した。本イベントでは、1月に米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」に合わせて発表したプレミアムブランド「Yogaシリーズ」と、ゲーミングブランド「Legionシリーズ」「LOQ(ロック)シリーズ」の詳細が紹介された。
本イベントに合わせて、同社は日本を含むアジア太平洋(APAC)地域におけるゲーミングPC(Legion/LOQシリーズ)事業の責任者であるクリフォード・チョン氏に対するグループインタビューを開催した。LenovoがゲーミングPCに対してどう取り組んでいるのか、同氏が基調講演で話したことと合わせてお伝えする。
Legion/LOQシリーズの最新ノートPCでは、最新の本体冷却システム「Coldfront Hyperchamber」が採用されている。
ゲーミングPCには、非常に高性能なCPUやGPUが搭載されている。これらが発する熱をどう処理するか――ゲーミングPCでは、この問題をどう解決するかが、パフォーマンスを左右する。
とりわけ、部品が密集して内部スペースにも限りがあるゲーミングノートPCでは、これが大きな課題となる。ハイエンドモデルを見てみると、背面だけでなく側面にも排気口を用意して排熱するケースも少なくない。少し言い方を変えると、フルパフォーマンスを維持するには、背面と側面の“両方”から排熱しないと追いつかないということでもある。
その点、Coldfront Hyperchamberは背面排気のみで優れた冷却性能を実現していることが大きな特徴だ。チョン氏は、基調講演において時間を掛けて本機構を説明していた。
Coldfront Hyperchamberは、デュアルファンに複数のヒートパイプを組み合わせた冷却システムだ。これだけを聞くと何の変哲もないように思えるが、最大の特徴として本体内部にもエアフローを確保している点がある。
一般的なノートPCの冷却システムは、ファンのエアフローをヒートパイプと繋がるヒートシンクに向かって確保する。それに対して、Coldfront Hyperchamberでは本体内部のファン側面にあえて穴を開けて、本体内へのエアフローを確保している。
さらに、内部の空気を届かせる空間には“隔壁”を設け、熱を持った空気が漏れることなく排気口に向かう「密閉空間」としている。ファンから空気が届くと、密閉空間の気圧は周囲よりも高くなる。この気圧差をうまく使って、エアフローの効率を高めているのだという。
隔壁の内側には、CPUやGPU、電源回路、メモリなどといった発熱しやすいパーツを集中配置している。エアフローの工夫と組み合わせることで、背面排熱だけでも高効率な放熱を実現したのだ。
チョン氏によると、このColdfront Hyperchamberを搭載するLegionノートPCは、電力が25W増えた状態でも従来モデルと比較して本体の表面温度が2度低く、ファンノイズも2dB低減するという。
実際に、Coldfront Hyperchamberを搭載する2024年モデルと、従来の空冷システムを搭載する2023年モデルを利用した比較デモを見る限り、新冷却機構を採用する2024年モデルの方が高負荷時の動作音がはるかに静かで、キーボード面に触れても温度が低かった。これは、ファンがより低回転でも十分な冷却が行えている証拠で、Coldfront Hyperchamberの効果はてきめんだ。
その上で、チョン氏は「従来はLegion ProとLegion 9iでのみ『Core HXプロセッサ』を採用していたが、最新モデルではLegion(ノートPC)の全シリーズにCore HXプロセッサ(第14世代)を搭載した。これは、Coldfront HyperchamberでCore HXプロセッサの発熱に対応できるようになったからだ」という。
他社では「Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)」を搭載するゲーミングノートPCが登場している。一方で、Legion/LOQノートPCの2024年モデルには、同CPUを搭載するモデルが用意されていない。
これから「AI PC」が盛り上がりそうな中、LenovoはなぜCore Ultraプロセッサの採用を見送ったのだろうか。
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