プロナビ

「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/4 ページ)

» 2024年04月24日 16時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

IT/AI人材育成に注力 グローバル人材を育て新たなイノベーションを

―― その一方で、生成AIは多くの仕事に取って代わるという議論もあります。

山口 それもクルマの場合と、考え方は同じです。クルマはモノを運んだり移動したりという点では、人間の能力をはるかに超えています。しかし、あくまでもツールです。生成AIは、情報の整理や多くの情報を元に思考する能力はありますが、使うのは人であり、人の仕事や判断などをサポートするものです。

 大切なのは、そこに倫理が必要だという点です。クルマも交通ルールが守られなければ、事故が多発することになります。生成AIも倫理を守らなければ、大変なことが起きます。IBMが、責任あるAIに対して力を注いでいる理由もそこにあります。既に生成AIは、さまざまな形で使われ始めています。また、多くの大規模言語モデルが作られ始めています。この流れを止めることはできません。

―― 価値共創領域で掲げている「CO2やプラスチック削減などのサステナビリティー・ソリューションの共創」に関する取り組みにはどのようなものがありますか。

山口 カーボンニュートラルや循環型社会への関心が高まる中で、サステナビリティー・ソリューションの共創が増えており、ここでも成果が生まれています。既に三井化学や旭化成、三菱重工と、それぞれに取り組みを進めていますし、2024年1月には、北九州市およびIHIとともに、熱マネジメントによって北九州地域のGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する連携協定を締結しました。

日本アイ・ビー・エム IBM 山口明夫社長 テクノロジーカンパニー 価値共創領域 地域GX推進に係る連携協定締結式

 2024年にも、いろいろな事例を紹介できると思います。サステナビリティー・ソリューションは、1社でやっても意味がありません。例えば循環型社会の構築においては、製品を生み出して、消費者に届ける「動脈産業」と、不要となった製品を回収して再活用するために処理を行う「静脈産業」との連携が不可欠です。

 また、脱炭素においてはサプライチェーン全体での連携が不可避です。特にサステナビリティは、多くの人の価値観を変えなくてはならない領域でもあります。リサイクルされたものは使いたくないという人はまだまだ多いですし、リサイクル素材はコストがかかるという課題も解決にしなくてはなりません。仕組みを大きく変えていくためには、長期的な活動が必要になりますから、その姿勢で取り組んでいきます。

日本アイ・ビー・エム IBM 山口明夫社長 テクノロジーカンパニー 価値共創領域

―― 価値共創領域の最後に挙げている「IT/AI人材の育成と活躍の場」についてはどんなことに取り組んでいますか。

山口 全ての価値共創領域において人材が重要です。しかし、ITやAIの人材不足は深刻な課題となっています。デジタル変革を進め、よりよいサービスを提供していくためには、デジタル技術を使いこなすIT人材を育成しなくてはなりません。

 当社では、グローバルで展開している官民連携の新たな教育モデルである「P-TECH」や、大学などと一緒になって量子ネイティブな人材育成にも取り組んでいきます。さらに、日本IBM社員に対する教育については、最初はITスキルに関するものから始まりましたが、今では量子やAI、クラウドに加え、リーダーシップや経済安全保障など、幅広いテーマで教育を実施しています。

 国際的センスを持った人材をさらに増やしていきたいと思っており、日本IBMの社員を対象にした海外研修も増やそうと思っています。生成AIの浸透などにより、言語の壁が低くなってきます。これは、日本から外に出ていきやすくなるだけでなく、海外から日本に入ってきやすくなることにもつながります。世界の中での経験が必要になり、国際的センスを持ってイノベーションを起こすことが、ますます重要になると思っています。新たなスキルを備え、自分の軸をしっかりと作り上げる必要があり、教育を通じて、そのきっかけの場を作りたいですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月09日 更新
  1. 超小型レトロオーディオ体験をFIIO「Snowsky ECHO NANO」で スマホリスニングのモヤモヤを解消するかも? (2026年09月08日)
  2. 「RTX Spark」搭載のWindows PCは10月に登場 LAN内のPCを束ねてローカルAI処理を分散・高速化する「NVIDIA PAIR」β版も公開 (2026年09月07日)
  3. 10月に登場する「RTX Spark」搭載PCで見た“不可解な”設定値 次期Windowsで変わるGPUメモリの仕組み (2026年09月07日)
  4. 両手が塞がっていても瞬間解錠できるスマートキー「SwitchBot スマートロック Ultra 顔認証パッド」がセールで20%オフの2万7980円に (2026年09月08日)
  5. 再来する“グラボ複数挿し”需要! 220mm径の巨大ファン搭載ケースやFractal新モデルがアキバで話題に (2026年09月07日)
  6. 省スペースで静音性に優れた3Dプリンタ「Bambu Lab A1 mini」がセールで25%オフの2万9900円に (2026年09月08日)
  7. 実売1万円台&縦置き対応! ONPUの14型モバイルディスプレイは初心者の強い味方だった (2026年09月08日)
  8. バッテリーを外せば約639g! 最新CPU「Intel Arc G3 Extreme」搭載の8型ゲーミングPC「OneXFly APEX Air」に触ってきた (2026年09月07日)
  9. HUION、アス比3:2の90Hz駆動ディスプレイを搭載したペン入力対応12.2型Androidタブレット (2026年09月08日)
  10. ラトックシステム、デュアル4Kディスプレイにも対応したHDMI切替器 (2026年09月08日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー