パン氏のいう4つの評価軸を最もバランス良く満たし、コストパフォーマンスに優れたプロセスノードとして、当面の主力として提供されのはIntel 4やIntel 3だ。
かつて、Intel 4は「7nm」、Intel 3は「7nm++」と呼ばれていたプロセスノードで、やはりTSMCにおける「4nmプロセス」「3nmプロセス」に相当すると言われている。
Intel 3は、Intel 4あたりで実用化された「EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)リソグラフィー技術」を引き続き採用するプロセスノードで、2024年中に登場する予定の自社製CPU「Xeon 6プロセッサ」(開発コード名:Sierra Forest/Granite Rapids)で採用されている。
用語になじみのない人もいると思うので補足しておくと、「リソグラフィー技術」とは、半導体製造における工程の1つで、製造する半導体の土台となる「ウエハ」に光を照射して回路パターンを描く技術だ。
例えば「★」型に切り抜いたシールをお腹に貼って日焼けをすると、★型の日焼け跡ができる。これを★型でなくプロセッサ内部の配線パターンとし、ウエハ上に焼き付けるのがリソグラフィー技術となる。
難しい話を省略して結論だけを言うと、光の波長が短ければ短いほど、微細度の高いリソグラフィーを作れるようになるため、最新の半導体プロセスではEUVを用いることがトレンドとなっている。
Intel 3には、派生プロセスとして「Intel 3-T」も用意される。これはIntel 3に「TSV(Through Silicon Via:シリコン貫通電極)」を適用できる拡張版だ。
詳細は前回の記事でも触れているが、Intel Foundryは、卓越したパッケージング技術に最大の特徴がある。Intel 3-Tを用いて製造したダイなら、前回の記事でも触れた「Foveros 2.5D&3D」的な、ダイ同士を貼り合わせたパッケージングも可能だ。
「Intel 20A」と「Intel 18A」は、処理性能を最重要視するプロセスノードとして訴求される。イメージ的に、Intel 20Aは「Intel 18Aの初期版」的な位置付けとなっているようで、Intel自身はもちろん、顧客もIntel 18Aの方を本命視している節がある。
ナノメートル(nm)を想起する一桁から、突然数値が二桁に増えて驚いた人もいるかもしれないが、18Aや20Aは、かつて原子や分子の大きさを測るのに使われていた「オングストローム(Angstrom)」に由来している。単位は「Å」で表記されるが、同社のプロセス表記ではアルファベットの「A」に置き換えられている。
半導体のプロセスノードは3nmの先、つまり2nmクラス以降は小数点を刻むことになることが見えてきている。ゆえに「1nm=10Å」であるこの単位を引っ張り出してきたわけである。
なお「Intel ○○A」は、TSMCにおける2nm以降のプロセスノードの10倍の値をイメージすれば良いようだ(例:TSMCの2nmプロセスは、Intel 20Aに近いイメージ)。
次のページでは、オングストローム世代のプロセスで使われる新技術について解説していこう。
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