ここまで3本の記事でIntel Foundryについて見てきたが、Intelが言いたかったことをまとめると以下のようになる。
製造業における「脱中国依存」的な事情だけでなく、昨今の「AIブーム」の追い風もあって、“先端”半導体の不足傾向は世界的に続いている。Intel Foudry事業は同社にとっての好機だと見る向きは、確かに説得力はある。
言うまでもなく、現在のIntelの主な収入源はCPUを始めとするプロダクト事業(プロセッサ関連の販売)だ。しかし、Intel Foundryが本格的に立ち上がって10数年経過すると、もしかするとIntel Foundryの売上がプロダクト事業を上回るかもしれない。
しかし、最先端の製造プロセスは、利用コストが非常に高いとされる。Intel Foudryの価値を最大限使いこなせるのは、AMD、NVIDIA、QualcommやArmといった先端プロセッサ(設計)メーカーや、AppleやMicrosoftクラスの大手メーカーに限られる。
もっというと、このような最先端プロセスが必要なのは超高性能プロセッサのみで、一般的な家電製品に搭載される各種LSI、PC周辺機器の制御チップ、自動車に利用される制御プロセッサなどのほとんどは、枯れた二桁nmの製造プロセスで製造されている。コロナ禍で「半導体不足」が叫ばれたときに、実際に足りなかった半導体製品は、まさにそうした「枯れた二桁nmの製造プロセス」で製造されるプロセッサ群だった。
2024年2月時点でIntel Foundryの採用を表明しているのは、Qualcomm(Intel 20A)、Arm(Intel 18A)とMicrosoft(Intel 18A)くらいで、他の大型顧客が付きそうな気配はよく見えていない。そのこともあって「Intelが言うほど(Intel Foundryは)うまく行かないよ」と言う業界関係者もいる。
いずれにせよ、今の時点でIntel Foundryの成否を判断することは出来ないので、今後の動向に注目していきたい。
最後に、少し違う視点からIntel Foundryについて考えてみよう。
ファウンドリーを含めて、半導体製造業はどんなに先端技術メニューがそろっていても、農業と同じように高い実動経験値が求められる。その点、Intelは自社CPUで豊富すぎるほどに実績を積んでいる。たとえ“できたてホヤホヤ”の最新プロセスノードであっても、Intelには自社CPUの製造によって迅速かつ重厚に鍛え上げられたアドバンテージで対処できるだろう。
このことは、Intel Foundryにとって大きな強みとなりうる。
かつて、Intel以外のプロセッサメーカーは、CPUやGPUのアーキテクチャを刷新する際に最新プロセッサノードでの製造を避ける風潮があった。これは、製造したCPUやGPUが想定通りのパフォーマンスを発揮できない場合に原因の切り分けが難しいという課題があるからだ。もっとハッキリいうと、アーキテクチャ自体に問題が残っているのか、製造プロセスに問題があるのか判別しづらいがゆえに、あえて最新プロセスに行かないという感じだ。
特に、大規模なモノリシックダイ(シングルチップ)構成のGPU(特にハイエンドモデル)では、その傾向が強い。NVIDIAやAMDは共に、最新アーキテクチャのGPUの初期製品は最新プロセスノードで作ることを避け、ある程度時間がたったタイミングで移行することが多かった。
その点、Intel Foundryの場合、利用するプロセスの基礎的な“鍛え上げ”はIntelの自社製品を通して済んでいる可能性が高い。卓越したパッケージング技術も備わっている。
実は「超高性能かつ最先端アーキテクチャの大規模プロセッサを開発したい」と考えている半導体メーカー、特にIntelのライバルであるNVIDIA、AMDやAppleこそ、Intel Foundryに大きな魅力を覚えているのかもしれない。
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