驚いたことに、M4チップは大半のテストで安定した電源に繋がれたM3チップ搭載のiMacを上回る性能を発揮した。
特に性能が良かったのが、画像の中に写っている物体を画像認識する「Object Detection」の処理で、シングルコアつまりプロセッサ内の1コアで行う処理でM2搭載iPad Airの2.4倍、複数コア処理でも1.8倍近い性能を発揮した。同様にレイトレーシングと呼ばれる3D表現の性能も1.5倍以上だった。GPUを使った処理でも、画像などの特徴を抽出する処理や背景をぼかす処理などで1.3〜1.4倍の性能を発揮している。
一方、AI処理に特化したApple Neural Engineを使うテストではイメージの分類、画像のスタイル変換(加工処理)、画像の解像度を向上させる処理、そして機械翻訳などの処理でいずれも約1.4倍というスコアを出し、文章を解析して分類するText Classificationのテストに至っては最大2.2倍という性能をマークしている。
とはいえ、M4チップの最適化はまだまだこれからであり、従来のベンチマークテストのスコアは参考程度に見ておくのがいいだろう。
新旧3モデルのiPadとCPUを比較する意味でM3チップ搭載の24インチiMacを加えた計4モデルで、Geekbench 6とGeekbench MLのテストを行った。M2版iPad Airのスコアを「1」として、M2版iPad Pro、M3搭載iMac、M4搭載iPad Proが何倍の性能を発揮したかをグラフにしている。まずはGeekbenchのシングルコアテスト結果だ別の記事でも書いたが、これからはプログラムコードではなく、AI処理によってテキストや画像、音の識別や加工を行うアプリが増えてくる。そういったアプリのAI化が進めば進むほど、M4版iPad Proを使うアドバンテージは大きくなるはずだ。
特に、既にアドビのアプリのAI化が進んでいることからも想像できるように、今後、写真や映像加工といった分野のアプリはAI化が最も著しく進むことになるはずで、iPad Proのターゲットユーザーであるプロのクリエイターは、その恩恵を受けやすい。
次に、M4 iPad Proのもう1つの売りであるUltra Retina XDRディスプレイを検証した。
筆者がiPhoneで撮影した動画や、何枚かのRAW形式での写真を見比べてみた。正直、違いを見極められるか自信がなかったが、何枚かの写真でハッキリと違いが分かった。
ハンバーガー屋のネオンと日没後の空のグラデーションをビーチ際で捉えた写真では、新型iPad Proと従来のiPad Proで明らかに空のイメージが違った。異なるのは空の明るい部分で新製品の方が空が明るく描かれていた。
空の微妙な色のグラデーションの変化は、どちらもきれいに描写されている。しかし、明るさのピークを見比べると旧モデルの明るさは一段低くなっている。これは、やはり新モデルのタンデムOLEDの効果なのだろう。
写真は、どちらも上段が従来のiPad Pro、下段が新型iPad Proだ。写真ではなかなか実際の画面の違いをお伝えしにくいが、ビーチの写真の左上すみなどを見てもらうと新iPad Proの方が空が明るいことが分かる
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