新型「iPad Pro」が見せる未来の夢と「iPad Air」が見せたバランス感覚 実機を試して分かったiPad購入ガイド(4/5 ページ)

» 2024年05月14日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

Apple Pencil Proはデジタルのキャンバスにブラシの表現力を呼び戻す

 新型iPad Proは、アクセサリーも進化している。別売りのMagic Keyboard(や他社製のBluetoothキーボード)を追加することでノートPCのように使ったり、Apple Pencilを追加して筆記具のように使ったりできるiPadシリーズだが、iPad Proはプロ用だけあって良質のキーボード、Magic Keyboardをオプションとして用意している。

Apple 新型iPad Pro 13インチ 11インチ iPad Air 標準iPad 第10世代 タブレット Apple Pencil Pro 新登場のApple Pencil Proの特徴

 iPad Pro前モデル用のMagic Keyboard Folioは、肌触りの良い持ち歩きケースとしての特徴も備えており、キーボード全体をポリウレタン素材で覆っていた。

 これに対して新モデル用のMagic Keyboardは、アルミのフレームからキートップがのぞくMacのMagic Keyboardと同じ外観のキーボードを、ポリウレタンの外装で覆っただけのシンプルなスタイリングになっている。そのおかげか重量も軽くなっているようだ。あまり正確な重量計がなかったが、簡易な計測をしたところ旧モデルのMagic Keyboard Folio(12.9インチ用)が0.7kgだったのに対して、新しいMagic Keyboard(13インチ用)は0.65kgと表示された。

 Appleが公開しているスペックでは12.9インチと13インチモデルの本体重量にも100gの差があるので、キーボードを合わせた重量差は約600gとなり、これは携帯時の負担にも大きな差が出そうだ。

 ただし、素材に関しては注意が必要になる。Appleの販促用の写真では白モデルのキーボードのフレームが白く見えるが、実際には無垢(むく)のアルミ素材であり、アルミと白いキートップの2トーンで、閉じた際にも白いカバーの横にメタルの棒が飛び出たような外観になっている。

 反対側にApple Pencil Proも吸着して持ち歩く際には、すぐにペンシル位置の見分けがついて良さそうだが、前のMagic Keyboard Folioの全体が白で統一され、りんとした美しさが好きだった筆者としては個人的に少し寂しい。

Apple 新型iPad Pro 13インチ 11インチ iPad Air 標準iPad 第10世代 タブレット Apple Pencil Pro Magic Keyboardのホワイトモデルを装着したところ。Appleの購入ページで見ると白一色に見えるが、実はキーボードのフレーム部分はメタリックで白とメタリックの2トーンになっている(PC用のMagic Keyboardと同じ配色だ)。これまでのMagic Keyboard Folioにはなかったファンクションキーが加わっている。ブラックカラーも用意され、価格は5万9800円となる
Apple 新型iPad Pro 13インチ 11インチ iPad Air 標準iPad 第10世代 タブレット Apple Pencil Pro 新型Magic Keyboard閉じた状態

 もっとも、新型Magic Keyboardは軽さ以外にも頑張っている部分がある。本体を軽量化しつつも14個のファンクションキーを追加しているのだ。画面の明るさ調整やミュート、おやすみモードといった操作に指を伸ばすだけでアクセスできるのは何ともありがたい。

 今回、衝撃を受けたアクセサリーがApple Pencil Proの登場だ。今や世界中のiPadユーザーが愛用しているApple Pencilは、まるで本物の鉛筆のような描き心地でプロの絵描きからも一定の評価を得ている。一方で2万円近い高価な製品だけに、紛失した時に見つけられる「探す」機能への対応はユーザーからも従来から要望があった。

 また、ペン側に触角のフィードバックをリクエストする声も見かけたことがある。しかし、それらに加えて、スクイーズとバレルロールという2つの操作が加わったことでデジタル手描き表現の新境地が開かれた印象を持っている。

Apple Pencil Proは、今の所、最新のiPad Proと最新のiPad Airの2モデルのみに対応する。スクイーズ操作で画面上にいつでも必要な時にパレットを呼び出せる。そのため画面上にパレットを常時表示しなくて済むことも大きな魅力だ。ペンを回転させると、ペン先の向きが回転する点にも注目してほしい

 これまでのApple Pencilが、ボールペンのようなペン先の向きが関係のない筆記具だとしたら、Apple Pencil Proは、まるで絵画や習字で使う筆/ブラシのような表現を可能にする。

 ブラシでは多くの人が筆先が伸びる方向をうまく使って太い線と細い線を描き分けている。このブラシであれば、当たり前の筆先の回転に対応したのがApple Pencil Proだ。残念ながらApple Pencil Proの先っぽがブラシのように変形することはないが、2022年に追加された画面上にペン先の影を落とすホバーモード機能によって、今、ペン先がどのような向きになっているかを確認して太い線、細い線を描き分けることができる。

 これはiPadを使った手描き表現を大きく進歩させる画期的なアクセサリーと言えそうで、今後、このApple Pencil Proに対応した新世代の描画アプリが出てくることで、さらに大きな広がりが生まれそうだ。

 またスクイーズ機能も良い。スクイーズとはペン先を強く握る操作のことで、実行するとペン先にクリック感を感じた後に、iPad画面上にペン先や色を選べるパレットが円弧を描いて表示される。これまでは自分の描いた作品の上に、常にこうしたパレットを表示しておく必要があった。

 スクイーズ操作に対応したアプリが増えれば、Apple Pencil Proを使用している間は画面を自分の作品だけの表示にして、必要な時だけパレットを表示することが可能になる。2万1800円と通常のApple Pencil(第2世代)と比べて8000円も高いのが残念だが、探す機能も含めていずれは値下げをしてApple Pencil Proがスタンダートになることを期待したい。

Apple Pencil Proの公式映像はこちら

 ちなみにApple Pencil Proは、M4チップ搭載の新型iPad Proだけでなく、M2チップ搭載の新型iPad Airでも使うことができる。

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