AMDは5月20日(米国太平洋夏時間)、PCベースの中小規模サーバ向けの新型CPU「EPYC 4004シリーズ」を発表した。本CPUを搭載するサーバは、順次発売される予定だ。
新たに登場するEPYC 4004シリーズは、外観的にデスクトップPC向けの「Ryzen 7000/8000シリーズ」と酷似している
EPYC 4004シリーズは、Zen 4アーキテクチャを採用する「第4世代EPYCプロセッサ」のエントリーモデルで、「価格(コスト)重視の中小企業が導入するシングルプロセッサ構成のサーバ」で使われることが想定されている。直接的には、Intelの「Xeon Eプロセッサ」と競合する製品ともいえる。
EPYC 4004シリーズは、Zen 4ベースの「第4世代EPYC」のエントリー製品と位置付けられる。従来のエントリー製品だった「EPYC 8004シリーズ」が用途特化型だったのに対して、EPYC 4004シリーズは汎用(はんよう)的な使い方で、低価格(またはコスト/ワットパフォーマンス)重視のユーザーに向いているという
今回の発表に合わせて、EPYCシリーズのモデル名の規則も公開された。EPYCの場合、一の位の数字が世代を表すそうだ
CPUソケットは、デスクトップPC向けのRyzen 7000シリーズやRyzen 8000シリーズと同じく「Socket AM5(LGA1718)」で、CPUコア数やTDP(熱設計電力)にはバリエーションがある。ターゲットユーザーと設計面の都合から、マルチプロセッサ構成には対応していない。
主な仕様は以下の通りとなる。
- CPUコア:Zen 4アーキテクチャ(4基8スレッド〜16基32スレッド)
- GPUコア:RDNA 2アーキテクチャ(DisplayPort 2.0/HDMI 2.1出力対応)
- 対応メモリ:DDR5 DIMM×2チャンネル(ECC対応:最大192GB)
- PCI Expressバス:最大28レーン
- USBポート:USB 3.2 Gen 2x2対応(USB4対応はオプション)
EPYC 4004シリーズの設計概要図
EPYC 4004シリーズのラインアップは以下の通りとなる。なお、モデル名の末尾の「P」はシングルプロセッサ専用であること、「X」は3D V-Cacheテクノロジーを適用してL3キャッシュを増量したモデルであることを意味する。
- EPYC 4124P
- CPUコア:4コア8スレッド(3.8GHz〜5.1GHz)
- L3キャッシュ:16MB
- TDP:65W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):149ドル(約2万3000円)
- EPYC 4244P
- CPUコア:6コア12スレッド(3.8GHz〜5.1GHz)
- L3キャッシュ:32MB
- TDP:65W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):229ドル(約3万6000円)
- EPYC 4344P
- CPUコア:8コア16スレッド(3.8GHz〜5.3GHz)
- L3キャッシュ:32MB
- TDP:65W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):329ドル(約5万1000円)
- EPYC 4364P
- CPUコア:8コア16スレッド(4.5GHz〜5.4GHz)
- L3キャッシュ:32MB
- TDP:105W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):339ドル(約5万3000円)
- EPYC 4464P
- CPUコア:12コア24スレッド(3.7GHz〜5.4GHz)
- L3キャッシュ:64MB
- TDP:65W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):429ドル(約6万7000円)
- EPYC 4484PX
- CPUコア:12コア24スレッド(4.2GHz〜5.7GHz)
- L3キャッシュ:128MB
- TDP:120W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):599ドル(約9万3000円)
- EPYC 4564P
- CPUコア:16コア32スレッド(4.5GHz〜5.7GHz)
- L3キャッシュ:64MB
- TDP:170W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):699ドル(約10万9000円)
- EPYC 4584PX
- CPUコア:16コア32スレッド(4.2GHz〜5.7GHz)
- L3キャッシュ:128MB
- TDP:120W
- 想定価格(1000個購入した場合の1個当たり):699ドル(約10万9000円)
EPYC 4004シリーズのラインアップ
Xeon E-2400シリーズとの比較。大きく見ると「物理コアの多さ」「価格当たりのコア数」「より高い動作クロック」「より多いL3キャッシュ」「メモリの最大容量や最高速度」で勝負をするようだ
最大16コアとしたのは、「Windows Server 2022 Datacenter/Standard」の最小ライセンスで対応できる“限界”だったこともあるようだ。確かに、コストを重視するユーザーには刺さるポイントといえる
最大コア数の多さを生かして、整数演算のパフォーマンスが優れていることを示した図。よく見ると、Zen 4アーキテクチャの出来の良さを示すかのようにより少ないコアでも良好な演算結果を得られているケースもある
8コア同士でアプリ開発ベンチマークテストを行うと結果はほぼ同じだが、価格当たりのパフォーマンスでは優れているという
動画のエンコードともなると、16コアモデルの威力はてきめんなようだが、CPU自体のTDPの違いには注意したい
レイトレーシングや3Dレンダリングも同様だが、やはりCPUのTDPの違いに注意したい。恐らく、EPYC 4004シリーズのメインストリームは8コア16スレッドモデルなのだろう
さまざまな演算処理を混合する場合、TDPの高い16コアモデルの方がコスト/ワットパフォーマンスはむしろ良くなるという
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