―― 従来のセキュリティソフトウェアでは、ウイルスやマルウェアの検出に「パターンファイル」を使っているため、最新のパターンを適宜取得してアップデートする手法を採用していたと思う。今後はPCのエンドポイント上で言語モデルが動作し、自ら学習(トレーニング)するようになるのか?
プラット氏 違う。トレーニングは通常、クラウド上で行う。もちろん、トレーニングにNPUを活用して、新しい事象を学習して言語モデルをカスタマイズする微調整も可能だ。
今日では基礎モデルのトレーニングに必要な計算量は膨大で、通常は何万ものGPUが数週間に渡って稼働し、トレーニングに際して大量のメモリを消費する。実行には数TBのメモリが必要であり、エンドポイント上での学習は現実的ではない。NPUは、あくまでも推論のために活用される。クラウド上でトレーニングし、実際の推論の実行と微調整をローカルで行うという流れだ。
こうした言語モデルでは、都度最初からトレーニングをし直すのではなく、新しいデータを追加することで逐次改良を続け、エンドポイント(PC)ではその差分をダウンロードする形になる。同期により、最新の言語モデルの力で、脅威に対抗できると考える。
―― 個人ユーザーを主体としたマルウェア以外に、最近では企業システムそのものを狙った「ランサムウェア」が猛威を振るっている。このトレンドをどのように考えるか?
プラット氏 ここ数年、マルウェアのグループの戦術がどのように変化してきたのかを見ているが、数年前はユーザーのPCをロックして250ドルを請求していたのが、今日では2台のPCにマルウェアを感染させてその倍の金額を得るのではなく、むしろ感染していることを隠す「ステルス性」を追求しているように思う。
感染したユーザーのPCを経由して別のPCに移動して、さらには管理者のPCへと移動し、管理者がドメインコントローラーやクラウドサービスのWebポータルへとログインする瞬間を待ち、そのログイン情報を追跡してセッションを乗っ取ろうとする。要するに、長期戦の様相を呈している。
そしてステルス状態でネットワークを動き回り、内部の高価値なリソースへのアクセスを試みる。これにより、1台250ドルどころではなく、企業システムを乗っ取って200万ドルを請求するわけだ。この過程には数カ月単位の長い期間が必要なことを彼らは知っており、そのステルス性から従来型のアプローチでの検出は難しいと考えている。
―― 日本でも近年、大企業がランサムウェアのターゲットとなり話題となっている。クライアントとしての日本市場をどう捉えているか?
プラット氏 私たちにとって、日本は非常に有望な市場だと考えている。私自身、年に数回ペースで日本を訪問して、顧客との商談を行っている。
日本の顧客は長い時間をかけてテストを行い、いざ採用の段階となると迅速に動く。世界的に見ると、日本はドイツとセキュリティの取り組み方で似ている部分がある。企業や組織がより優れたセキュリティ対策を必要とし、政府自身もそれを推奨していることも、有望な市場だといえる理由だ。
「全体の保護」は非常にコストがかかるかもしれないが、幸い私たちのWolf Securityは、HP以外のデバイスにも導入できる。実際、私たちがカバーしている顧客のエンドポイントのうち、65%が他社製のPCで、HP製はわずか35%でしかない。
またNPUを使った最新の保護システムなどは確かに最新のPCでしか動作しないかもしれないが、仮想マシンを使った対策などはローエンドを含む全てのマシンで動作可能だ。
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