米HPは9月24日(米国太平洋夏時間)、米カリフォルニア州パロアルトの本社において年次イベント「HP Imagine 24」を開催し、同社の新製品や最新戦略について発表した。
企業や個人の「AI(人工知能)」への関心がここ数年で高まる中、PCでもAIにフォーカスした「AI PC」が2024年初頭から市場に投入され始めた。PCメーカー各社やMicrosoftを含むソフトウェアベンダー各社は、自身のAI分野での取り組みを活発にアピールしている。
この点において、HPも多分に漏れない。7月には米ニューヨーク市でAIに特化したイベント「HP Imagine AI」と題したAI特化のスペシャルイベントをしている。
今回のイベントは、そのアップデートとなる。本稿では、イベントでの発表内容にフォーカスして掘り下げていく。
2022年末にOpenAIが「ChatGPT」を発表して以降、さまざまなベンダーが大規模言語モデル(LLM)を主体にした「Generative AI(生成AI)」に取り組み、対話型インタフェースを通じてコンピュータを使ったさまざまな作業を効率化するサービスを提供すべくまい進してきた。
例えばMicrosoftは、「Copilot」という名称で自身が提供するオフィスアプリにさまざまな付加機能を提供するようになったし、Windows PCを出荷するメーカー各社もまた「AI」を冠するさまざまな仕組みを自社製品と共に提供することで、製品の差別化を進めている。
このトレンドが始まってから2年弱の期間が経過しているが、企業ユーザーは最新の生産性ツールを取り込み、業務改善の試みを進めている。国や企業文化の違いによって活用方法や進展具合はまちまちだが、先端企業ではそれなりの成果が見えつつあるという話も出てきている。本イベントの冒頭であいさつしたエンリケ・ロレスCEOも、以下のように述べている。
HPは、80年以上前から「人と仕事の関係」を再定義することに常に貢献してきた。(コロナ禍を経て)リモートワークからハイブリッドワークまで、さまざまなワークスタイルを模索する中で、従業員と雇用主の両方の期待が変化し、未来を創造するための働き方を再定義する機会が到来している。
私たちは、AIがこの変化において重要な役割を果たすと認識している。一方で、私たちがまとめた「Work Relationship Index」によると、ナレッジワーカー(知的労働者)のうち「仕事との健全な関係を築いている」と答えた割合はわずか28%であり、そのうち必要なツールが提供されているのはさらに27%でしかない。
従来のように雇用主が単にデバイスを用意すればいいというわけではなく、必要な人に必要なツールが提供されることが重要だと考えている。私たちは現在、(ビジネスユーザーを主体とした)コマーシャル市場に注力しているが、その事業規模は4000億ドルで今なお成長を続けており、これはHPという企業にとって大きなチャンスだと考えている。
ロレスCEOは、AI時代でHPがどのようにユーザーを支援していくのか、以下の3つのポイントを挙げた。
プラットフォームの提供については、同社が「Workforce Experience Platform」により、予測分析と自動化された環境のもと、27万台以上のデバイスを管理することで、CIO(最高情報責任者)やIT部門の負荷を軽減できるとする。
スマートテクノロジーについては、例えば7月に発売された「Omnibook Ultra 14 AI PC」では、最大55TOPSのパフォーマンスを備えるNPUによって、オフィス文書の分析や会議の文字起こしやサマライズ、必要に応じてのコンテンツ生成などがオンデバイスで素早く行えるようになるという。本モデルはAMDの「Ryzen AI 300シリーズ」を搭載したモデルだが、同様にIntelの「Core Ultra 200Vプロセッサ」やQualcommの「Snapdragon Xシリーズ」など、CPU/SoCベンダーとの協業によるAI PC群も順次投入されており、ユーザーがニーズに応じて最適な製品を選べることも強みだとする。
チーム体験については、境目のないシームレスなワークフローを実現するツール群の提供を図るという。今回の製品群にも、オンライン会議向けのビデオバー/ビデオ会議「Poly Studio」の最新モデルが含まれているが、NPUで強化されたPC群と合わせ、企業のコラボレーションを強化していくという。ロレスCEOは「結果として、ITマネージャはシステム保守のみならず、企業のデジタル変革にも集中できるようになる」とメリットを強調する。
HPでは今後も、半導体メーカーやソフトウェアベンダー(ISV)との協業体制で積極的にユーザーを支援していく意向だ。
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