本体全体を見渡すと、iPhone 16シリーズは美しいガラスの色が目を引く。そしてiPhone 16 Proシリーズは、少しだけ大柄になったことと、額縁を細くしたこと、そしてわずかに大きくなったディスプレイに視線を奪われがちだ。
もちろん、そういう所も重要なポイントだ。ここまでやるには、外観のデザインから細かなディテールに至るまで、かなりのこだわりをもって取り組まないと難しい。
だが、それはあくまで“見た目”の話であり、機能面での変化を一番体感できるのは、やはりカメラコントロールの搭載だろう。
カメラコントロールは、一部のAndroidスマートフォンにもある「カメラ起動兼シャッターボタン」にとどまらない機構を備える。圧力センサーとスライドセンサー、触感フィードバック機能(Tapticsエンジン)を搭載した電子コントローラーの一種なのだ。スライドセンサーは、MacやPCにあるタッチパッドと同じ静電容量式となっている。
このコントローラーの最も大きな特徴は、操作フィーリングをソフトウェアで制御できることにある。単体のカメラを使ったことがある人なら、レリーズボタンが「半押し」と「全押し」の両方で成り立っていることを知っているはずだ。iPhoneに搭載されたカメラコントロールでは、この操作を圧力センサーで実現している。半押しか全押しかは、Tapticsエンジンが生み出す振動で把握できる。
実際に使ってみると、カメラを起動してレリーズ(シャッター)を切るところまでは、極めてスムーズに進む。さらに、コントローラーを半押ししてから指をスライドさせると、あらかじめ選んでおいたパラメーター要素を切り替えることができる。例えば「露出補正」を設定してあれば、簡単に露出を切り替えられるし、「トーン」を選んでおけばトーンカーブの深さを手軽に変えられる。
ただし、現時点のカメラコントロールは、「カメラのあらゆる機能を自在に操る万能コントローラー」とは言いがたい面がある。カメラのほとんどの機能にアクセスできるものの、操作にかなりの“コツ”を必要とするからだ。
具体的な話は後に回すが、現状ではApple製品の良さである「シンプルさ」「機能の取捨選択の巧みさ」が十分に感じられない。多くのことをこなせるがゆえに、かえって操作性を損なっているようにも思う。
また、同じくAppleが得意とする、実際の使用感――機能ではなく感覚的なもの――についても、まだ検討の余地があるだろう。MacBookシリーズのトラックパッド(タッチパッド)が好評なのは、単なるハードウェアの優位性ではなく、OSのUI(ユーザーインタフェース)とのすりあわせがうまく行っているという面も強く働いている。そうした操作の“ニュアンス”に関する部分について、カメラコントロールはまだ問題を抱えていると思う。
ただ、先述しているが、このコントローラーを構成している半分の要素はソフトウェアによる。ソフトウェアで操作フィーリングや機能を定義しているということは、今後アップデートによって改善されることも期待できる。
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