ソフトウェアで価値を創出し、AI活用を中心にした機能設計を行う――そのような物作りの世界では、製品がより多く使われるほどにデータが集まり、機能が高度化し、消費者が直接使うエッジデバイスとクラウドのシームレスな連携も進む。
このネットワークの幅は、広いほど好ましい。異なる種類の製品やサービスが集めるデータを相互に学習し合い、新たな価値を創出できるからだ。結果として、1つの企業が全ての役割を担うのではなく、異なる事業者の多様な製品、複数のサービスが産業を進歩させるエコシステムの形成へとつながるだろう。音声や視線、ジェスチャーなど、さまざまな入力手段をAIが認識/解析し、ユーザーの意図を先読みして最適な操作やサービスを提供する「次世代インタフェース」の普及が加速するかもしれない。
一方で、大量の個人情報や行動データがリアルタイムで収集/分析される状況は、利便性と表裏一体の“懸念”もある。AIの意思決定プロセスがブラックボックス化することによる説明責任の欠如や、予期しないアルゴリズムのバイアス(偏見)なども問題となりうる。
しかし、データ交換におけるプライバシーなどの問題を乗り越え、相互信頼の構築が可能になれば、ユーザーはデバイスの存在を意識せずに、自分の行動や意思を自然に反映した体験を得られるようになるだろう。
CES 2024で顕在化したSoftware Definedの潮流は、1年後のCES 2025でよりフォーカスが明瞭なAI Definedへと変化を遂げた。現在は、個別の製品カテゴリーがAIによってどのように改善されるかにフォーカスが当たっている。
例えばUGREENはNASのファームウェアにAIモデルを実装し、NAS内部で保管している文書や画像の認識を行うソリューションを提案した。検索を容易にし、必要な情報か否かの判断をしやすくするためだ。
そうした製品ジャンルのアップデートは今後も進むだろうが、個々のアップデートが集まることで産業構造全体や社会の変化へとつながっていく。
ハードウェアの一括投入で完結していた従来のビジネスモデルから、ソフトウェアを中心に継続的に機能や価値を付与していく「サービスとしての製品」への移行が、今後ますます加速するだろう。
しかし、これほどまでにソフトウェア依存度が高まる時代だからこそ、セキュリティやプライバシー、そしてAIの透明性といった問題は軽視できない。
消費者も社会も、これまで以上に技術の恩恵と危険性を両側面から理解し、それを適切にコントロールしていく仕組みが求められる。
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