1月9日から12日(米国太平洋時間)まで米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」では、MicrosoftがWindows 95の発表以来初めて、新しい機能を持つ「Copilotキー」をキーボードに追加したことが話題になった。Windows 11でCopilotキーを押すと、Copilot in Windowsが呼び出され、日常的な作業の手助けをしてもらえるという。
ご存じの通り、Copilot in WindowsはWindows 11のタスクバー上のアイコンや「Windows+Cキー」のコンビネーションでも呼び出せるが、Windowsの標準機能と結び付く専用キーが設けられる意味は大きい。長期的には大きな変革をもたらすことができるからだ。
Copilot in Windowsと同様の機能は、Webブラウザ「Micorosoft Edge」やWeb検索の「Bing」にも統合されていたが(参考記事)、Windowsへの実装に合わせて機能を大幅に洗練し、大規模言語モデルを用いた「ユーザーのお助け機能」として統合された。「ダークモードを有効にする」や「音量をミュートする」など、機能の呼び出しや設定を文章で指示することも可能だ。
実装に至った背景としては、AI処理の演算量削減や専用プロセッサを使ったクラウド(サーバ)の構築により、低コストで提供可能になったことなどが想像される。ユーザーの視点で見ると、特定のアプリやサービスに依存するのではなく、Windows全体の機能、すなわちPCの機能として一般化されたことの意味は小さくないだろう。
閑話休題。本稿は必ずしもCES 2024のレポートとして書いているわけではない。それでも、今回のCESにおけるコンシューマー向けPCの“熱量”は、かつてほどではないにしろ、気持ちを高ぶらせる程度には十分だった。
少しだけ昔話をしたい。
かつて、パーソナルコンピュータの新たなトレンドは「Computer Dealer's Exhibition(COMDEX) 」というイベントで発表されていた。業界のリーダーは、COMDEXで大きな“ネタ”を投入し、それが大波となって伝わり、新たなうねりへとつながることが通例だった。
しかしその後、MicrosoftとIntelが強力なリーダーとしてプラットフォームを支配するようになると、少しづつ中堅プレーヤーは目立たなくなり、大手企業はプライベートイベント(正式なイベント会場の外で行う展示会や説明会)に主軸を移した。
コンシューマー市場におけるPCの役割が大きくなってくると、展示会におけるトレンド発表の場は「Consumer Electronics Show(CES)」へと引き継がれた(※1)。当初はメディアがデジタル化することに伴い、その高度な応用をPCがけん引ししてきた。その後はハイエンドなゲーミングPC、あるいは自分自身で創作をするためのクリエイター向けPCなど、ハイエンドツールとしてのPCがCESの“一部”を彩ってきた。
(※1)コンシューマー(消費者)向け電化製品から“乖離(かいり)”した展示が増えたこともあり、現在は略称だった「CES」を正式名称としている
とはいえ、進化軸が固定され、CPUやGPUのパフォーマンスに偏った注目の浴び方をしていたことで、PC関連の展示は、やや惰性化していたことは否めない。
しかし2023年、AMDやQualcommに続き、IntelもNPUへの投資(もっというとCPUへのNPUの搭載)という方針を明確にしたことで、従来とは異なる方向性が生まれ始めている。
CES 2024の展示内容は、前年までと大きな違いがあるわけではないのだが、それでもこのたった1つ、AIという“キー”に注目が集まるのは、PC業界全体が今までとは別の進化軸を見つけたからに他ならない。
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