今どきのGPUはゲーミングだけでなく、動画のエンコードやAI(人工知能)の演算処理にも活用されている。今回は、これらパフォーマンスをULの総合ベンチマークテストアプリ「Procyon」に内包されたテストでチェックしてみる。
GeForce RTX 50シリーズには第9世代NVENC(動画エンコーダー)と第6世代NVENC(動画デコーダー)が内蔵されている。先日紹介したGeForce RTX 5080では、NVENC/NVDECが共に2基構成となっていたが、GeForce RTX 5070 TiはNVENCが2基、NVDECが1基という構成だ。5080と比べると、グラフィックスメモリの帯域が約7%狭くなった(毎秒960GB→毎秒896GB)ものの、動画の書き出し(=エンコード)の性能は大きく変わらず、再生(=デコード)で差が出そうな予感はする。
実際はどうなのか、Procyonの「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264コーデック)と4K(H.265コーデック)の動画を2種類ずつ書き出す際のパフォーマンスを点数化する。負荷の大きいテストはエフェクト処理でGPUによるアクセラレーションを有効にできる。
総合スコアではなく、あえて書き出しに掛かった時間をチェックしてみると、以下の通りとなる。
テストがエンコード特化型ということもあり、5080と5070 Tiは高速で“僅差”という結果となった。解像度やフレームレートの高い動画のプレビューをする場合はNVDECの削減による影響が出る可能性もあるが、エンコードメインでGPU(グラフィックスカード)を選ぶなら、5070 Tiの方がコストパフォーマンスは良さそうだ。
一言で「AI」といっても、さまざまなものがある。ProcyonではAIに関するベンチマークテストがあるが、今回は機械学習データを使って物体を検知する「コンピュータビジョン」の処理パフォーマンスを確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみよう。
ProcyonのAIベンチマークでは、テストによってはAPIや演算器(CPU/GPU/NPU)を指定して実行可能で、AI Computer Vision BenchmarkでGPUの演算能力を試す場合はAPIとして「Windows ML(Direct ML)」か「NVIDIA TensorRT」を選べる。GeForce RTXシリーズにとっては、TensorRTの方がパフォーマンスを発揮しやすいのだが、まだGeForce RTX 50シリーズには対応していない(対応に向けた修正を準備している)。
そこで今回はWindows MLを使った場合の演算パフォーマンスを比較する。総合スコアは以下の通りだ。
スコアは5080比で約7〜9%減、4080比で約5〜11%増しとなった。5080よりも低く、4080よりも高いという順当な結果といえる。
GeForce RTX 5070 TiはGeForce RTX 5080と比べると、公称の消費電力が60W低く、推奨の電源容量も100W少ない。何らかの理由で電源の交換が難しい(できない)デスクトップゲーミングPCのパワーアップに適するGPUといえる。
3DMarkの「Time Spy Extreme」でシステム全体の消費電力を測ってみた所、以下の通りとなった。やはり、GeForce RTX 5080と比べると消費電力と処理パフォーマンスのバランスは良いように思える。
今回試したGeForce RTX 5070 Ti GamingProは、大きめのボディーに大きめの3連ファンを備えている。今回はパフォーマンス重視のPモードでテストを実施したが、それでもファンの音は静かだった。
ただ、“大きい”ということは場合によってはデメリットとなる。筆者の調査不足が原因だが、Intel NUC 13 Extreme Kitでは本体をほぼ全解体しないとカードを差し込めなかった。ただ、Intel NUC 13 Extreme Kitに組み込める寸法のカードをリリースするパートナー企業もあるので、コンパクトなケースを使った自作PCやベアボーンキットに組み込む場合は、事前にグラフィックスカードのサイズを“念入りに”調べるようにしたい。
GeForce RTX 5080 Founders Edition(下)と比べると、GeForce RTX 5070 Ti GamingProがいかに大きいか分かると思う。逆に、GeForce RTX 5080 Founders Editionがコンパクトすぎるというだけかもしれないが……価格面も気になるポイントだ。GeForce RTX 5070 Tiを搭載するグラフィックスカードの想定販売価格は14万8800円からで、GeForce RTX 5080を搭載するカードと比べると5万円安いが、この価格で販売されるグラフィックスカードは一瞬でなくなる可能性も否定できない。価格のメインストリームは17万円台〜20万円弱となるだろう。
GeForce RTX 30シリーズからの買い換えを考えた場合、特にDLSS 4による超解像/マルチフレーム生成を期待する人にとって、5070 Tiは5080よりも価格/消費電力/性能のバランスは良いと思うのだが、価格は「安い」とは言いきれない。表示する解像度がWQHDメインであれば、10万8800円とさらに4万円安い「GeForce RTX 5070」を待ってもいいかもしれない。GeForce RTX 5070の発売は3月5日の予定だ。こちらのカードも入手でき次第、別途テストを行うつもりでいる。
「GeForce RTX 5080」への乗り換えはアリ? 「GeForce RTX 3080 Ti」搭載PCで試した結果
「GeForce RTX 5090」を速攻テスト! 約40万円からだが“異次元”のうたい文句はダテではない ただし電源容量と冷却面に注意
約40万円〜の「GeForce RTX 5090 Founders Edition」を先行開封 小型化したがGPU補助電源は「8ピン×4」相当必須
NVIDIAが新型GPU「GeForce RTX 50シリーズ」を発表 新アーキテクチャ「Blackwell」でパフォーマンスを約2倍向上 モバイル向けも
これからは3090 Tiよりもこれ! 良コスパGPU「GeForce RTX 4070 Ti」の実力をチェック!Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.