第1回デジタル競争グローバルフォーラム:規制と国際連携でAppleがスライドとして表示した、政府などの規制に対しても変えることができないAppleの基本姿勢。他の登壇社の資料もこちらからダウンロードできる最後に、第1回デジタル競争グローバルフォーラム:規制と国際連携でAppleの競争法/規制担当のシニア・ディレクターであるショーン・ディロン氏が行ったAppleのデジタル市場規制に関する考えを、簡単に振り返りたい。
ディロン氏が提示したスライドは、実質1枚だけで極めてシンプルなものだ。こうした規制を受けても変わらない、Appleが重視する姿勢5つが書かれていた。
1つ目は、Appleの製品は児童からシニアまで性別も関係なく幅広い人々が利用する。そうした人々があまねく安心して使える製品であること、家族や友人が愛着を持って楽しく使える製品であるように心掛けることだ。
2つ目はユーザーがAppleに寄せる信頼は、「ユーザーのデータを保護する」というAppleの強いコミットメントから生まれているので、これからもそれを大事にするというもの。
3つ目のコンプライアンスというと、何かどこかからよそから与えられたルールのようなイメージで接するものも多いが、Appleの場合は「プライバシー保護」などの同社が大事にしている基本原則と一致する、内側から出てくるものだという考えだ。
4つ目は規制が漠然としたものではなく、ちゃんと透明性があって、そういった規制をすることでどのような状況を作ろうとしているか予見できるような規制であることが重要という考えである。
そして5つ目は、規制当局が毎日実際に製品を利用しているユーザーたちとちゃんと正面から向き合い、彼らの最善の利益を優先すべく規制を執行するのが理想とするものだ。
極めて明瞭で、フェアな主張に思える。
幸か不幸か、日本がスマホソフトウェア競争促進法を施行するよりも1年半早く、EUがほぼ同等の法律を実施して、実験台の役割を果たしてくれている。
21世紀に入って四半世紀が過ぎた今でも、PCは大量のマルウェアや違法ソフトが出回る無法地帯の側面があり、リスクを避けられない状況が続いている。これを良しと思っている人はほとんどいないはずだが、残念ながら人類はこの状況を覆す知恵をまだ持ち合わせていない。
しかしApp Storeは、これとは全く異なる人々が安心してiPhoneを使える市場を生み出した。これを未来の日本のiPhoneユーザーに残すか否かは、私たちの手に委ねられている。ぜひ、今後もヨーロッパなどの状況を注視してこの問題について引き続き考えていきたい。
本記事では、Appleのセキュリティ戦略とプライバシー保護の取り組みについて言及しましたが、その後、英国政府の要請を受けて、同社が「Advanced Data Protection(ADP)」機能を英国市場から撤廃する決定を下したことが報じられました(BBC記事)。
ADPはエンドツーエンドの暗号化を提供し、Apple自身もユーザーのiCloudデータにアクセスできない仕組みでした。しかし、英国政府は「Investigatory Powers Act(IPA)」に基づき、法執行機関がデータにアクセスできるよう求めました。Appleはこれに強く反対していましたが、最終的に英国でのADP提供を停止する決定を下しました。
この動きにより、英国のAppleユーザーのiCloudデータは、今後Appleがアクセスできる状態となり、法的手続きを経れば政府機関にも提供可能となります。サイバーセキュリティの専門家やプライバシー擁護団体は、これを「オンラインプライバシーの大きな後退」と批判しています。Apple自身も声明で「深い失望」を表明しており、将来的に英国で再導入できることを望んでいると述べています。
この件は、英国政府の規制がテクノロジー企業に及ぼす影響の大きさを示すとともに、各国のデータプライバシー政策の対立が今後も続く可能性を浮き彫りにしています。【2025年2月22日午前8時7分】
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