日本の公正取引委員会が中心となって「第1回デジタル競争グローバルフォーラム:規制と国際連携」が開催された。これまで各国でバラバラに行われていた競争促進の議論を、欧州/米国/英国などで競争促進に当たる現場担当者や、Apple/Google/Microsoftなどのプラットフォーマーで一堂に介して話し合おうと企画されたもので、画期的かつ意義深い回だったように思える。オンラインを含め300人近くが参加/聴講した。「こういった議論をもっとオープンにしてもっと多くの人に知ってもらう必要がある」という声も聞かれたが、中継データなどは現在、非公開となっている1月31日、公正取引委員会は「第1回デジタル競争グローバルフォーラム:規制と国際連携」を開催した。国民生活や経済活動の基盤となる中で、スマートフォンの利用に特に必要なソフトウェア(モバイルOS/アプリストア/ブラウザ/検索エンジン、これらを総称して「特定ソフトウェア」と呼ぶ)に関する法律、いわゆる「スマホソフトウェア競争促進法」について議論するフォーラムだ。
セキュリティの確保などを図りつつ、競争を通じて多様な主体によるイノベーションが活性化を目指したという同法律は、2025年12月19日までに全面施行されるという。
同フォーラムでは、EUや米国の規制当局関係者によるパネルディスカッション、アプリ/サービス提供者やプラットフォーマー(AppleとMicrosoft)が参加した政府機関とどのように連携したらいいかなどが話し合われた。
そして、デジタル規制を将来を見据えたものにするためにどうしたらいいかを話し合うパネルディスカッションが行われた。残念ながら筆者は現地に赴くことはできずリモートで議論を聞くことになったが、Appleの競争法/規制担当のシニア・ディレクター、ショーン・ディロン氏が「当事者と政府が正面からぶつかり合っても意味がない。お互いに笑みを交わしながら議論をすることが重要」と言うと、主催者もこの言葉を返し、6時間近くに及んだフォーラムは終始、落ち着いたトーンでの“大人な議論”が続けられた。
競争促進のためにはプラットフォーマーに規制をかけアプリの代替流通網が必要、プライバシーなどについてはアプリ開発者やプラットフォーマーが責任を持って管理すれば良いとする開発者や、一般社団法人モバイルコンテンツフォーラム(MCF)などの業界団体、そしてそれを後押ししてきた各国の規制当局の姿勢と、製品をより安全かつ安心して使えるようにすることが何よりも大事という、Appleなどのプラットフォーマーの基本姿勢が平行線なままなのはこれまで通りだ。
しかし、EUに続いて日本でも規制法案が可決され、後は施行を待つだけになったということもあり、衝突している部分を探すよりかは、良い着地点を探る段階に議論が発展した印象だ。
ところで、この議論から1週間足らずで、日本より1年ほど動きが先行しているEU圏でいくつか興味深い動きがあった。
まず2月5日、日本より先行して代替アプリストアの運用が始まっているEU圏で、初のiPhone用ハードコアポルノアプリ「Hot Tub」がリリースされた。しかも、開発元が「初のApple公認のポルノアプリ」といった趣旨の発信をソーシャルメディアで行ったため、Appleが公式に認めたものではないことを明文化した上で「このような性的に露骨なコンテンツを含むアプリケーションが、EU域内のユーザー、とりわけ未成年者の安全性に及ぼす影響について重大な懸念を抱いている」と表明した。
その直後、2月8日には英国内務省が、企業に捜査当局への情報提供を義務付ける法律「調査権限法(Investigatory Powers Act:IPA2016)」に基づいてAppleが持つ暗号化データの開示を要求したとBBCが報じた。
報道によればAppleはこの要求を突き返したとされ、内務省は「業務内容についてコメントしない。例えば、そのような要求が存在するかしないかを確認することもしない」としている。
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