本稿は、PC USERの30周年に合わせたもので(おめでとうございます)、書き手の過去30年のPC遍歴を振り返るというテーマに沿って書かれている。執筆に当たり、写真はメーカー提供のものを使わず、必ず自分で撮った写真を使うというマイルールを定めたため、写真は解像度が低かったり、被写体の全体像がよく見えなかったりと難があるが、そこはご了承いただきたい。
今回、過去30年の写真を掘り返していて、明らかに節目が変わったと感じられたのは、ちょうど四半世紀前の2000年前後だ。当時筆者はネットのオフ会に参加する機会が多かったのだが、今写真を見返すと、2つの事実に気付かされる。
1つは参加者がノートPCを持参している率が高く、かつ機種がバラエティーに富んでいることだ。VAIOやLet's note、PowerBookはもちろん、Libretto、さらにはカシオペアらしきPDAなど枚挙にいとまがない。
もう1つは(当たり前といえばそうだが)、参加者の誰もスマートフォンを持っていないことだ。ケータイがまだPHSとしのぎを削っていた時代である。普段、ネット経由でやりとりしている仲間とリアルでコミュニケーションを取るために、ネット接続可能な端末を持ち込むとなると、ノートPCないしはPDAしか選択肢がなかったわけだ。今ならそのほとんどがスマホだったはずで、時代の違いを実感させられる。
もっとも、これより前となると持ち運べる軽量ノートPCは選択肢も少なかったし、通信環境も整っておらず、ノートPCを持ち込む選択肢がそもそもなかった。当時もPHSカードだと64Kbpsないしは128Kbpsが精一杯で、我慢できるギリギリのレベルだったが、当時は速度の不満よりも、外出先でもネットが見られるという開放感の方が大きかった。
この2000年前後は、そういった高揚感のようなものが、使う側にも漂っていたように感じられる。
デバイス単位でPCや周辺機器を追っていると、こういった因果関係は見えにくい。例えば当時の周辺機器界隈のトピックに、一旦はCD-ROMドライブからDVDドライブに置き換わった光学ドライブが、徐々に標準装備から外れていったという出来事があるが、その背景にはADSLの普及で数百MB単位のデータはネットで受け渡しが可能になり、一方で数MB単位の容量はUSBメモリがカバーするようになり、光学ドライブの需要が激減したという事情がある。
このような因果関係を始めとして、ユーザーがそれらを必要とした理由や実際の使われ方といった背景事情は、後世から見返した時、包括的な理解の助けになるであろうことは想像に難くない。筆者自身、これからも製品レビューを書いていく中で、こういった背景事情はなるべくその中に落とし込んでいければと思っている。
ちなみにPC USERとの接点はメーカー時代、広告を出稿する部署にいたのが最初で、メーカー退職直後にPCUPdate(当時)の方に執筆者として声をかけていただき現在に至っている。紙版の「PC USER」最終号(2005年12月発売)は大事に保管している
バイト代を握りしめて通ったアキバ、「1円PC」全盛期の販売員時代──そんなITライターのPC遍歴
“スマホ”ジャーナリストの山根康宏はどんなPCを使ってきたのか? 過去30年のPC遍歴を振り返る
インターネットと共に生まれ育った“中堅”情シスのPC遍歴
キター! VAIO type Uライクなスライドキーボード搭載の「AYANEO SLIDE」をセットアップしてみた 中年のハートを鷲づかみする外箱も魅力的
文章は“AIと共に”執筆する時代に――「Claude 4」を活用することで変わりつつある執筆術Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.