ではまとめていきましょう。
MovinkPad Pro 14は、手軽に、かつシッカリ絵を描きたい思いがあるユーザーが待ち望んでいたタブレットそのものです。Androidデバイスとして貴重なレベルの大画面と、高い性能、液タブ上位機のペン、液タブと同等以上の画面処理、PC版と遜色ないフル機能のCLIP STUDIO PAINTを利用できます。
このようなぜいたくな仕様でありながら14万4980円という、最近のワコムの「Pro」液タブなどからは想像しづらいリーズナブルな価格帯に収まっているのも注目点です。
業務などにも利用したい場合は、メモリが12GBでも大丈夫かが鍵になりそうです。今回の実用で、高解像度でキャラを複数描いても大丈夫なことは確認しましたが、クリエイティブPCではメインメモリ32GBや64GBが当たり前、それに頼って品質や作業効率を上げていくのも当たり前の時代です。そういうぜいたくな制作スタイルから見ると、いろんな作業が収容できないという結論になるケースは少なからずありそうです。
また、カメラが搭載されない点にも注意が必要です。Androidデバイスの世界ではカメラがないモデルはマレすぎて、アプリのインストールで要求する仕様の選定で配慮されない可能性があります。幸い、本機が得意そうなイラスト制作やノートアプリは大部分が問題なさそうでしたが、結局どのアプリがインストールできないかはフタを開けてみないと分かりません。
作画作業の面でも、物や動物、自分の手を撮って素早く資料にしたり、紙に描いたラフをスムーズに取り込めたりするのもカメラ内蔵デバイスの利点です。なので、低品質なカメラユニットでもいいので搭載はしておくべきだったというのが自分の意見です。
また、どうあっても伝統的にクリエイティブ分野に強くないのがAndroidエコシステムの弱点です。イラスト用途では多機能なCLIP STUDIO PAINT以外にも選択肢は結構ありますが、iPadでポピュラーな「Procreate」や、高品質で多機能な「Affinity」シリーズが使えるわけではありません。それ以外のクリエイティブアプリの選択肢や品質も、iPadほどではないことを意識して検討すると良いでしょう。
ある意味で本機の価値の多くはCLIP STUDIO PAINTに依存しているとも言えます。それならばタイトルの「クリスタ最強デバイス」というのも、それほど間違った呼び方ではないのかもしれませんね。
といったところで。個人的にはiPad Proの買い替え時期なのですが、最近はiPad Proが高額化しているのと、描き味もさして改善しないままApple Pencil 2から買い替え必須かつ値上げになったApple Pencil Proのおかげで、購入検討の手が止まり続けています。
それでこんなモデルを買っちゃったので、また当面iPad Proはいいかな……(お絵描き以外の用途では便利だし性能も不足ないし)、みたいな気持ちになっちゃいます。喜んでいいのやら、困るのがいいのやらですね。
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