「iPhone 18 Pro」は“カメラの原点”に回帰する――機械式絞りとAI時代の“真正性”証明技術に見た新生Appleの挑戦(4/5 ページ)

» 2026年09月16日 21時00分 公開
[林信行,ITmedia]

AIによる加工前提時代に“真正性”を証明する技術を導入

 正直といえば、もう1つ今回のモデルから搭載された「Apple リファレンス画像」という技術も面白い。

 写真の色を整えたり、背景の不要なものを消したりした後で、「撮った時には何が写っていたのか」を確かめたいと思う時がある。その時に、カメラが捉えた内容を確認するための基準になる画像を残す技術だ。

 例えば、取材先で撮った写真を編集部へ送る時。掲載用に仕上げた写真とともに、撮影時の記録も渡せれば、受け取った編集者が両方を見比べられる。生成AIで写真そっくりの画像を作れる今、「これはカメラで撮った写真です」という説明を支える材料にもなる。

 使うには、設定画面で「リファレンスモードを追加」を選ぶ。その後、カメラを開いて「リファレンス」へ切り替えて撮影する。普段の写真とは別に、確認用の記録を一緒に残すための撮影モードだ。

今回、iPhone 18 Pro/Pro Maxから搭載されたApple リファレンス画像。崇高な考えで作られた技術であるのは分かるが、使用できるのはメインカメラで撮った写真だけで、「リファレンス」モードでの撮影が必須だ。署名処理にPrivate Cloud Computeを使っても数分間かかる。数年後に実用化される機能を先行して採用したというイメージだ

 単に編集前の写真をもう1枚保存するのとは違う。光を受け取るセンサーが、撮影データに暗号技術を使った署名を付ける。この署名は、データが後から書き換えられていないかを確かめるためのものだ。

 そのデータをAppleの「Private Cloud Compute」(PCC)へ送り、署名を確認してから、人が見られる画像に仕上げる。

 リファレンス画像の現像にはネット接続が必要だが、現像後のリファレンス画像はiOS 27/iPadOS 27/macOS 27以降の対応環境で確認でき、iPhone 18 Proを持っていなくてもよい。

 これにちょっと似たC2PAという技術がある。「Adobe Content Authenticity」などで扱うContent Credentialsは、この規格に基づいている。写真をどこで作り、どう編集したかという履歴を、対応するカメラや編集ソフトの間で引き継ぐための共通ルールだ。履歴と画像を署名で結び付け、後から書き換えられたかを確認する。

 C2PAを「写真がたどった過程を確認する仕組み」とすれば、Appleリファレンス画像は「カメラが最初に何を捉えたかに戻って、仕上がりと見比べる仕組み」と考えると分かりやすい。役割には重なりもあるが、Appleはセンサーでの記録から現像までを一式で用意した。C2PAの確認ツールでもそのまま扱えるかは、確認した公開資料では分からなかった。

 残念なのは、この技術が使えるのはメインカメラで撮影した写真だけで、せっかくの望遠レンズや超広角レンズで撮影した写真では、まだ生かすことができない。今後、望遠や超広角にも広がってほしい機能だ。

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