動き出す「電車+カーシェアリング」――鉄道会社が参入する3つのポイント神尾寿の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年03月20日 06時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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 このカーシェアリング事業に、JR東日本のような大手鉄道会社が参入するインパクトは大きい。そこには3つのポイントがある。

 1つはサービス開発・提供における「交通ICの優位性」だ。JR東日本など大手鉄道会社は、Suicaなど“認証”と“決済”が可能な交通IC/電子マネーのサービスインフラを構築している。これらは電車・バスですでに稼働中であり、交通ICを持つ鉄道会社は、これら公共交通サービスの延長線上としてカーシェアリング事業を展開できるのだ。交通ICには鉄道の利用履歴情報も記録されているため、例えば“鉄道利用区間が長い人ほど、カーシェアリング利用料を割り引く”といった柔軟な価格設定や利用促進が、鉄道会社のカーシェアリング事業ならば実現可能だ。さらに昨年からJR東日本など一部の鉄道会社が注力する「パーク&ライド」(参照記事)とカーシェアリングを組み合わせれば、ユーザーが“クルマが使いたいシーン”で我慢させることなく、電車とクルマの効率的な使い分けを1枚の交通IC上で実現できる。

 2つめは「拠点整備の優位性」である。大手鉄道会社は駅周辺に土地や商業施設を所有している。そのため鉄道とカーシェアリング事業の連携に本腰を入れれば、自らの駅に専用駐車場を用意できる。また今後、カーシェアリング事業では運用コストとエコの両面から、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド自動車、参照記事)を採用する必然性が高い。その際に課題になるのが“充電設備付きの駐車場確保”だが、駅や駅周辺の自社用地が利用可能な鉄道会社はこの点でも有利な位置にある。大手鉄道会社が本腰を入れれば、駅を拠点にするEVカーシェアリングの実現は難しくないのだ。

 そして、3つ目が「相互利用化が可能である」こと。交通ICの世界ではJR東日本などが中心になり、鉄道・バス会社をまたいでの相互利用化が進んでいる。そのため将来、複数の鉄道会社が交通ICベースのカーシェアリング事業を展開したときに、電車・バスと同じく、カーシェアリングの部分でも相互利用が可能になるシナリオも考えられるのだ。むろん、この場合には利用料金の事業者間精算をどうするかという課題が生じるが、交通ICには電子マネー機能があるため、例えば「他社エリアではビジター料金を電子マネーで都度払いする」ことも不可能ではない。

プチレンタも山手線全域に展開――進む電車連携

都営地下鉄とプチレンタのキャンペーンページより

 一方、カーシェアリング事業の古参であるオリックス自動車も、「電車とカーシェアリングの連携」を強化する(参照記事)。オリックス自動車は3月18日、JR山手線29駅すべての周辺にカーシェアリング拠点を設置すると発表。4月17日から整備を進め、5月中旬にはすべての駅周辺への展開が完了するという。

 プチレンタは独立系のカーシェアリングであり、JR東日本のように鉄道会社自らが乗り出すサービスではない。しかし、電車など他の公共交通との連携は以前から重視しており、東京や京都などでは駅周辺にも積極的にカーシェアリング拠点を整備している。今回、JR山手線全駅に集中展開することで、これまで以上に“電車からカーシェアリングへの乗り継ぎ”を促していく模様だ。また、プチレンタは他にも都営地下鉄と共同で、「都営地下鉄+カーシェアリング」の利用促進キャンペーンを行うなど、電車との連携に注力している。プチレンタの認証用カードとして交通ICを使うことも可能であり、今後、私鉄や地下鉄会社と提携して、ecoレン太のような鉄道連携型カーシェアリングを展開することは十分に考えられるだろう。

 これまで「自動車交通」と「公共交通」は異なる領域の交通ビジネスとして、相互連携のサービス作りや商品開発が行われてこなかった。しかし、ここにきてカーシェアリング事業の潜在需要が高まり、そこでICカードとテレマティクスが使われるようになったことで、状況が変わった。クルマと公共交通がサービスとして連携し、新たな都市交通を構築する素地ができたのだ。

 電車+カーシェアリングのサービスがどれだけ広がるか。クルマ利用型のビジネスがどこまで発展するかを考える上でも、この分野の動向は注目である。

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