躍進するスマートフォン市場――メインプレイヤーの覇権争いが鍵に:アナリストの視点(2/3 ページ)

» 2009年08月07日 08時00分 公開
[賀川勝(矢野経済研究所),ITmedia]

スマートフォンの市場規模

 次に2008年のスマートフォン市場について、国内外の様子を見てみよう。国内市場における2008年のスマートフォンの出荷台数は、前年比68%増の158万台だった(2007年出荷実績:94万台)。iPhone 3Gの発売、HTCがWindows Mobile搭載のスマートフォンを全事業者に供給したこと、通信事業者各社がスマートフォンの導入と販売に積極的に取り組んだことなどが、出荷台数を押し上げた。

 一方、スマートフォン市場をけん引してきたウィルコムのW-ZERO3シリーズは、競合製品の相次ぐ登場と通信速度の遅さが足を引っ張り、前年の出荷実績を下回った。消費者の3Gに対する期待の高さが証明され、スマートフォン市場のメインプレイヤーが交代した。

 海外市場における2008年のスマートフォンの出荷台数は、前年比52.1%増の1億3672万5000台(2007年の実績は8987万5000台)だった。市場が急成長した背景として、(1)モバイル環境でのインターネットや電子メールの利用ニーズの増加、(2)主要市場での3G(3.5G)サービスの拡大、(3)スマートフォン市場でヒット商品が相次いで登場したこと――などが挙がる。特に大きかったのは、欧米を中心とした海外においてモバイル環境でのインターネットや電子メールの活用が拡大したことである。

 海外市場では、「iモード」や「EZweb」などのWAP(Wireless Application Protocol)ベースのモバイルインターネットは普及しなかった。こうした中、スマートフォンのニーズが顕在化したのは米Googleの影響が大きい。検索エンジン「Google」や地図サービス「Googleマップ」、動画共有サービス「YouTube」などをスマートフォンからシームレスに利用できるようになったことが、普及の要因の1つだろう。

2009年以降のスマートフォン市場の見通し

国内はiPhone 3G、Windows Mobile搭載端末がけん引

 国内市場は2009年の夏に新たな動きを見せた。NTTドコモはGoogleのスマートフォン向けOS「Android」を搭載した端末を、ソフトバンクはiPhoneの新型機である「iPhone 3GS」をそれぞれ発売した。また2009年は、各事業者がWindows Mobile搭載端末を中心とした機種を拡充するものと予測される。Androidを搭載した端末も2〜3機ほど追加されるかもしれない。こうした背景から、2009年のスマートフォンの出荷台数は前年比31%増の207万台に上る見通しだ。

 iモードを機に進んだ携帯電話の高機能化は、通信事業者にハードウェアとソフトウェアを密接に連携させる開発を促した。3Gサービスの登場により、ハードウェアの性能は大きく向上し、流通している端末は国内の利用者の要求に合わせた作りになっている。国内市場ではSymbian OSやBlackBerryといった海外発のプラットフォームや製品がほとんど普及しておらず、海外製が多いスマートフォンが同市場のメインになるのは、まだ先かもしれない。

 だが、スマートフォンの登場が携帯電話の開発に大きな影響を与えたのは間違いない。大幅な市場拡大が望めない携帯電話端末市場において、スマートフォンは少しずつではあるが確実に市民権を得ているといえるだろう。

image 国内スマートフォンの市場規模推移と予測(単位は千台)(出典:矢野経済研究所)
- 2007年 2008年 2009年(予) 2010年(予) 2011年(予) 2012年(予)
国内スマートフォン出荷実績(単位:千台) 940 1580 2070 2660 3150 3650
前年比 132.4% 168.1% 131.0% 128.5% 118.4% 115.9%

メーカー出荷台数ベース。(予)は予測値

海外市場はメインプレーヤーの乱戦に

 世界市場における2009年のスマートフォンの出荷台数は、前年比11%増の1億5193万台になると予想される。iPhone 3GやBlackBerryが好調な海外市場では、Nokiaや韓国のサムスン電子、LG電子などがタッチパネルインタフェースを採用した新製品を導入し、市場での巻き返しを図っている。

 NokiaはタッチパネルやQWERTYキーボードを装備した端末を拡充した。サムスン電子、LG電子もタッチパネルを装備したスタイリッシュな新製品を打ち出したほか、Windows MobileやAndroid、Symbianの共通プラットフォームである「S60」に対応した製品を導入し、マルチプラットフォームによる幅広い製品で攻勢をかける。目新しいトピックでは、PCで世界シェア2位を目前に控える台湾Acerがスマートフォン市場に新規参入を果たしている。

 プラットフォームの分野を見ると、最大勢力のSymbian OSがオープンプラットフォーム化を発表した事から、Nokia、サムスン電子、LG電子、英Sony Ericsson、米Motorolaなどの大手メーカーが製品のラインアップを強化していくだろう。Windows Mobileは多くのメーカーが製品に導入しているものの、その多くは少量生産にとどまっている。今後の普及は、HTCやサムスン電子、Motorolaといった大手メーカーの取り組みに懸かっている。

 鳴り物入りで登場したAndroidについては、HTCが製品開発で先行している。市場からの期待は高く、今後はサムスン電子やLG電子が開発で追随してくると予想される。Androidを搭載した端末が一定のシェアを拡大するには、もう少し時間を要するだろう。

image 世界スマートフォン市場の規模推移と予測(単位は千台)(出典:矢野経済研究所)
- 2007年 2008年 2009年(予) 2010年(予) 2011年(予) 2012年(予)
世界スマートフォン出荷実績(単位:千台) 8万9875 13万6725 15万1930 17万6000 20万3500 23万800
前年比 141.0% 152.1% 111.1% 115.8% 115.6% 113.4%

メーカー出荷台数ベース。(予)は予測値

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月11日 更新
  1. ダイソーで1100円のノイキャンイヤフォン「TWS009」を試す 騒音カットの効果は実感も電池持ちに課題か (2026年10月09日)
  2. 資産3000万円以上が対象 MUFG「エムット」最上位サービスと“年会費無料”アメックス・プラチナの魅力とは (2026年10月08日)
  3. ダイソーで1100円の「GaN USB充電器」は折り畳みプラグで外出用に持ち歩きやすい 45W出力対応でPCでも使える (2026年10月10日)
  4. 10月1日から楽天モバイルの「au 4G LTEエリアローミング」が縮小も意外と残っている件 (2026年10月10日)
  5. スマホの「実質価格」高騰の恐れ、iPhone 18 Proは2倍高く? 総務省の残価設定ルール厳格化は“誰のため”か (2026年10月10日)
  6. 「iPhone 18 Pro Max」を試して分かった進化と課題 想像以上に“使えた”可変絞り搭載カメラ (2026年10月09日)
  7. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  8. ドコモが「Google Pixel 10a(256GB)」を11万6930円に値上げ 2年7万円台に (2026年10月09日)
  9. 「iPhone Duo」は閉じても開いても迷わず使える Appleが提示するUIの設計思想 (2026年10月10日)
  10. 楽天グループ、1億件超の会員情報流出説を否定 「情報漏えいが発生したという事実は確認されておりません」 (2026年10月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー