見えぬ「選択と集中」、迫る「タイムリミット」 ウィルコムは再生できるのか神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2010年02月22日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo 会見で頭を下げるウィルコム代表取締役社長の久保田幸雄氏

 2月18日、国内4位のモバイル通信事業者であるウィルコムが、会社更生手続き開始の申し立てを行った。詳しくはニュース記事に譲るが、同社はこれで自力再建を断念し、会社更生法の下で再建を図る。支援の要請先としては企業再生支援機構、ソフトバンク、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)の名前が挙がっている。まずは企業再生支援機構の支援を取り付けて当面の資金と信用力を回復、ソフトバンクとAPをスポンサーに事業再建をしていく計画だ。

 1995年の事業会社DDIポケット(ウィルコムの旧社名)設立から15年。同社は日本独自の通信サービスであるPHSを事業の柱として成長し、NTTパーソナルやアステルなど他のPHS事業者がのれんをたたむ中でも、定額データ通信や音声定額をいち早く市場投入する“オンリーワン戦略”でしたたかに生き残ってきた。2.5GHz帯を用いた次世代ワイヤレス通信サービス「XGP」でも独自路線を掲げて、新時代への移行とさらなる発展を企図していた。だが、その途上でウィルコムは地に膝をついてしまった。

 ウィルコムは今後どうなるのか。再建への取り組みは成功するか。それを考えてみたい。

スマートフォン継続に見えた“現経営陣の甘さ”

 「(支援を要請した)スポンサーとの話し合いの上で具体的なことは決めていきたい」

 記者会見の壇上で、ウィルコム代表取締役社長の久保田幸雄氏は何度もそう繰り返した。18日の時点では、同社は会社更生手続き開始の申し立て行い、企業再生支援機構と、ソフトバンクおよび投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)に支援を要請したものの、具体的な支援内容は決まっていない。久保田氏は管財人として残留する模様だが、ウィルコムの現取締役は全員辞任。経営陣が一新する前に具体的なことが述べられない、というのは致し方ない部分がある。

 しかし、質疑応答の端々に、ウィルコム現経営陣の危機感の弱さや事業見通しの甘さが垣間見えた。その筆頭に挙げられるのが、スマートフォン事業とXGPだろう。とりわけ独自路線のスマートフォン事業継続の意思表示は、彼らの「甘さ」が端的に表れた部分だ。

 「先日発売させていただいた『HYBRID W-ZERO3』は、Windows Mobile 6.5を搭載し、PHSと(ドコモ回線を使うMVNOの)3Gを内蔵したとてもユニークな製品として開発しました。こうしたユニークなスマートフォンは今後も需要が拡大していくものと見ています。引き続きシャープに継続的な開発をお願いしたい。PHSと3G方式(の両方)に準拠した形での、Windows Mobileベースのスマートフォンは今後も展開していきたいと考えている」(久保田氏)

 HYBRID W-ZERO 3が“ユニークな商品”であることに異論はない。他のスマートフォンと比較して、優れた部分もある。だが、問題はユニークすぎてウィルコム以外で販売できないことである。

 今年の「Mobile World Congress 2010」を見れば分かるとおり、今後のスマートフォン市場はグローバル化をさらに進め、その規模の拡大によって1台あたりの開発費負担を抑える方向に進んでいる。しかし、PHSという国内独自規格を採用しているウィルコム向けのスマートフォンは、グローバル化で販売規模の拡大ができず、キャリアとメーカーのどちらにとっても開発費負担が重くリスクが高いものだ。3Gキャリア向けスマートフォンと比べて、価格競争力の点で不利なのだ。

 ウィルコムは、ドコモやKDDIのように国内シェアが大きいわけでもなく、販売力とサポート体制も弱い。独自路線のユニークなスマートフォンは確かにウィルコムの特長になるのかもしれないが、その開発投資に見合うだけの新規顧客の獲得や収益拡大につながるかというと、かなり難しいところがある。今後、グローバルで展開する3Gのスマートフォンが魅力的になり、それに無理に対抗しようとすると、ウィルコムにとってスマートフォン事業が再建の重荷になる可能性も十分に考えられる。

 また、詳しくは後述するが、同社は今後「ナローバンド商品のマーケティングに注力する」(久保田氏)と強調したが、一方でスマートフォン事業も継続するのでは、商品開発やマーケティングにおいてリソースの集約ができなくなる。確かにコンシューマー向けのスマートフォンと、シンプルなケータイに需要が二極化する傾向は国内外の市場に見られるトレンドである。だが、今のウィルコムに“二兎を追うこと”が可能なのか。スマートフォンとシンプルフォンの両方で、他キャリアに対する優位性が打ち出していけるのか。ここは冷静に判断する必要があるだろう。

XGPはタイムリミットが迫る

 同社の次世代事業の柱である「XGP」の先行きも不透明だ。

 久保田氏はXGPの今後について、「支援パートナーもXGPに積極的な考えを持っていると聞いている。(2.5GHz帯の免許取得時に総務省へ提出した)事業計画への影響はない。スポンサーが決まり次第、具体的な投資スケジュールが決まるだろう」と話した。その上で、XGPの優位性を強調する。

 「XGPはユニークな技術。上り通信も最大20Mbpsと速いことや、マイクロセルのネットワーク構成に向いているなど(通信特性が)PHSに似たところがある」(久保田氏)

 しかし、その一方で、XGPを採用しているのは今のところウィルコムのみ。UQ WiMAXが採用している「モバイルWiMAX」や、ドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなど携帯電話キャリア各社が導入する「LTE」と違い、グローバルで複数キャリアに採用される可能性は望み薄のため、設備調達や端末開発における“規模のメリット”が働きにくいという課題がある。今後のモバイルブロードバンド市場で重要な、モバイルノートPCや、iPadのようなさまざまなインターネットデバイスでの「標準搭載化」で、XGPが不利になる可能性も否めない。技術的な優位性が、必ずしも経済合理性やキャリアの経営上のメリットと合致しないことは、ウィルコムのこれまででも度々実証されてきたことだ。

 そして、もう1つ、XGPの前には大きな困難が待ち構えている。それは「タイムリミット」だ。

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