連載
» 2009年05月01日 11時20分 公開

クリエイティブ・チョイス:【最終回】「我がこと」について考えるとき、人間はもっとも創造的になれる

「ほんとうにやりたいことをやっていいんだって、どこか本気で思えない」――。そんなことを感じている人は意外に多いはず。「自分勝手」と呼ばれることを恐れているのかもしれません。一方同じように振る舞っても「ワガママ」と呼ばれるどころか愛され、尊敬されている人たちもいます。

[堀内浩二,Business Media 誠]

連載「クリエイティブ・チョイス」について

 問題を「イエスかノーか」に絞り込んでしまってませんか?――。連載「クリエイティブ・チョイス」は、選択肢以外の「第三の解」を創り出し、仕事や人生の選択において、満足度を高めることを考えます。4月23日発売の書籍『クリエイティブ・チョイス』から抜粋したもので、今回は第1章から。


 クリエイティブ・チョイスとは目的と手段を再定義にほかなりません。前回もお伝えしましたが、再定義すべき目的は、方向感と目的地のイメージ、言い換えれば価値観(北極星)とビジョン(まだ見ぬ島)からなっています。まだ見ぬ島とは、挑戦すべき目標でもあります。どうしたら、数ある“チャレンジ島”の中から「これだ!」と思える島を見つけられるのでしょうか?

 答えは、チャレンジを「我がこと」すなわち「自分の人生にとって重要な意味を持つこと」にすることです。脳科学者の茂木健一郎氏は、脳が「生きのびるために進化してきた臓器」であるがゆえに、自分や他人の「人生が左右される場面」において、人間はもっとも創造的になるだろうと述べています(茂木健一郎著『脳と創造性 「この私」というクオリアへ』PHP研究所、2005年)。

「我がこと」とは、筋の通った「わがまま」

 30歳を目前にして転職するか起業するかで悩んでいたエンジニアの山本さんは、あるときこんなことをいいました。

 「ほんとうにやりたいことをやっていいんだって、どこか本気で思えないんですよね。バカみたいですけど『みんながワガママをやりだしたら、社会が崩壊しちゃうんじゃないか?』って気がするんですよ。たとえば僕なんか自宅で働けたらいいなと思ってますけど、どうしても現場にいなければいけない仕事ってありますよね。発電所の人とか。そんな人たちがみんな『私も自宅で働きたい!』と思ってしまったらどうなるのかと思うんですよね……」

 「わがまま」には大きく2つの意味があります。第一はただ「自分の思うままにすること」で、第二は「相手や周囲の事情をかえりみず、自分勝手にすること」(どちらも広辞苑より)です。

 われわれが恐怖を感じるのは、この二番目の意味で人から「わがまま」と呼ばれることでしょう。本書では区別するため、第一の意味を「わがまま」とひらがなで、第二の意味を「ワガママ」とカタカナで表記します。

 山本さんは「ワガママ」と呼ばれることをおそれて、「わがまま」に振る舞えない葛藤を感じていました。一方で「わがまま」な生き方をしながら「ワガママ」どころか愛され、尊敬されている人たちもいます。たとえば「リヤカーマン」こと永瀬忠志さんは、文字どおりリヤカーを引いて地球一周四万キロ以上を歩いている「わがまま」な人です。ただただ「わがまま」に歩いていたら、50歳を目の前にした2006年に「若い人に夢を与える」という理由で植村直己冒険賞を受賞しました。

 岡崎友子さんは風と波と雪を追いかけ続ける「わがまま」なアスリートですが、世界的なアパレルブランドであるパタゴニアのシンボル的存在である「アンバサダー」という役職に、日本人女性としてはじめて就きました。

 われわれはまず「ワガママ」といわれそうなゾーンを想定し、そこに踏み込んでしまわない範囲で「わがまま」をしようと考えがちです。しかし何が「ワガママ」かは、相手によって、また時によって違います。であるならば、まずは自分の「わがまま」をしっかり語れるようにすべきでしょう。いってみれば「わがままに筋を通す」必要があるのです(ジョン・オニール著『成功して不幸になる人びと―ビジネスの成功が、なぜ人生の失敗をよぶのか』ダイヤモンド社、2003年)。

連載「クリエイティブ・チョイス」、いかがだったでしょうか? 誠 Biz.IDでの連載は今回でいったん終了です。続きは書籍でお楽しみください。

今日のクリエイティブ・チョイス「まとめ」

 「クリエイティブ・チョイス」のための目的は「我がこと」でなければなりません。「我がこと」感のある目的とは、筋の通った「わがまま」です。

著者紹介:堀内浩二(ほりうち・こうじ)

株式会社アーキット代表。「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。外資系コンサルティング企業(現アクセンチュア)でシリコンバレー勤務を経験。工学修士(早稲田大学理工学研究科)。著書に『「リスト化」仕事術』『リストのチカラ』の文庫化/ゴマブックス)がある。グロービス経営大学院客員准教授などを兼任。


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