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» 2010年12月08日 12時00分 UPDATE

最強フレームワーカーへの道:Webだからこそ「おもてなし」

日増しに複雑化、高度化するIT業界の中で、おろそかになりがちな「おもてなし」の心。今回は、Webだからこそ心がけたい“接客技術”について考えてみたい。

[永田豊志,Business Media 誠]

 安くて、ソコソコ高い品質――のファストファッションやコンビニグルメがもてはやされる一方で、数カ月、ヘタすると1年以上も予約が取れない人気の高級旅館やレストランがあります。

 それらが人気を維持できる秘密は、豪華な食材や設備ではありません。訪れた人々の脳裏に、金には換えられない感動的な体験を刻むことができる「おもてなし」があるからです。

仙仁温泉・岩の湯に見る、リアルのおもてなし

 例えば、長野県須坂市にある仙仁(せに)温泉・岩の湯は1年前から予約待ち。山奥にぽつんとたたずむその旅館は、洞窟風呂など名物もありますが、なにより訪れたすべての人が強調するのは、その群を抜く接客クオリティの高さ、です。

  • 「到着時間を伝えたわけでもないのに玄関で従業員一同にお出迎えされた」
  • 「暖かい料理は取り皿まですべて暖められていた」
  • 「ベテランはもちろんのこと、若い従業員まで細部に気が届いている」

 とベタぼめです。

 旅館の社長さんは「幸せをアートする」を企業理念に、お客様と従業員の心をケアする独自のサービススタイルを貫きとおしています。当初は「団体客はとらない」「カラオケもコンパニオンも入れない」「ゲームコーナーも作らない」とポリシーを貫いた結果、閑古鳥が鳴くありさま。それでも歯を食いしばって「幸せをアート」し続けてきたといいます。その結果、現在では「稼働率100%」「ユーザー満足度全国1位(リクルート調べ)」「1年待ちの宿」になったというわけです。

Webの「おもてなし」とは何か

 Webの「おもてなし」に話を移しましょう。例えば、あなたがリアル店舗を想像してみてください。お客さんがせっかく店に訪れても、店員の接客がまずいとお客さんはものを買ってくれませんよね。それどころか、お客さんの気持ちの中で不満が強く残ると、口コミで悪評がたち、負のスパイラルに陥ってしまいます。

 そのためにも、買う買わないに関わらず、常にお客さんには大いに「サービスに満足して」帰ってもらう必要があるのです。

 ところがリアルでは接客に気遣っていても、Webではそれがないがしろになるオンラインショップも少なくありません。派手に宣伝、販促はしたもの、サイトに来ればどこに求めている情報があるのか分からない。いざ買おうとしても、仏頂面した入力フォームが口を開けて待っているだけ。リアル店舗だったら、申込書類を渡すだけで説明もしてくれない店は、二度と訪れないはずです。

 あなたはWebサイトを閲覧していて、「サイトのおもてなし」で感動したことがあるでしょうか? わたしは職業柄、楽しいサイト、クールなサイトは死ぬほど見ましたが、おもてなしに心が動かされたことはありません。

 しかし、最近になって「サイトにもおもてなし」が注目を集めつつあります。その1つがWebマーケティングで言う「EFO(エントリーフォーム最適化:Entry Form Optimization)」わが社でも提供しているサービスですが、これは前述したような無機質な入力フォームにおいて、店員が丁寧に説明してくれるように入力項目ごとにナビゲートし、間違ったらリアルタイムに訂正をうながすようなシステムです。

 いわば、オンラインショッピングの商品購入時に必要とされる「おもてなし」を提供するサービス。おもてなし機能をとりいれたオンラインショップはいずれも、来訪者数が変わらなくても売上を10%前後増やすことに成功しています。

st_form01.jpg わが社が提供している入力フォームサービス。入力のサポートをしてくれる。

日本が世界に誇るユーザーエクスペリエンスをすべてのサイトに

 入力フォームに限らず、Webに商品を並べれば自然と売れることは決してありません。商品を並べて待っているだけでは自動販売機を置いているだけなのと同じ。自販機で売れるものはたかが知れています。

 価格競争に陥らない、高い付加価値を提供するサービスであれば、それがリアルな店であれ、Webであれ「おもてなし」は欠かせません。偉大な東洋思想であり、日本が世界に誇るユーザーエクスペリエンスが、「おもてなし」なのです。

 “安・近・短”のデフレスパイラルが続く中、なぜ1年も待って、高額な利用料金を払うお客さんがいるのか? なぜ、頼んでもいないのに、周囲に宣伝しまくってくれるのか? こうした「おもてなし」ノウハウを持つことも、グローバル競争に勝ち残こる重要なファクターの1つだと考える今日このごろであります。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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