折りたたみ型の出遅れ認めるNokiaNOKIA CONNECTION 2004

» 2004年06月15日 16時25分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 6月14日に開幕した2日間のNokiaの年次カンファレンス「Nokia Connection 2004」のフィンランド会場では、Nokiaの経営陣が業界トレンドとNokiaの研究開発に関して話した。

 Nokiaによると、携帯電話の加入者数は現在、年間増加率24%で増えており、2007年には20億人に達する見通し。10億人を達成した2002年までに10年がかかったが、20億人達成までに要する期間はその半分の5年の見通し。巨大化する携帯電話市場で、現在王者のNokiaはどのようにしてトップの座を維持する戦略なのだろうか。

左から上席副社長 ユハ・プトキランタ氏、取締役副社長 マッティ・アラフフタ氏

シェア低下の原因〜ミッドレンジラインアップと折りたたみ型

 この春、GartnerとIDCから発表された2004年第1四半期の携帯端末市場調査では、Nokiaはシェアを落とした。Gartner調べでは28.9%(前期比マイナス6%)、IDCでは29.3%(前期比マイナス4.8%)と30%を割った(6月9日の記事参照)。同社がこの日発表した独自調査資料では、もう少し良い結果が出ているが、それでも32%。同社のヨルマ・オリラ会長兼CEOは以前、ターゲットとして40%という数を口にしていたというから、Nokiaにとって満足のいく結果ではないはずだ。

 アナリストらはシェア低下の原因を、ミッドレンジの製品ラインアップの弱さ、カメラ付きや折りたたみ式などで流行に乗り遅れたこと、などを挙げている。同社がこの日発表した新製品は、まさにその指摘をカバーする内容となった。

 Nokiaで副社長を務めるマッティ・アラフフタ氏はこの日、同社がクラシックなデザインからどのように端末を多様化させてきたかを示しながら、今後の方向性として、折りたたみ、ファッションやアクティブなど新カテゴリの創出、ミッドレンジ、スマートフォンなどを挙げた。

多様化するNokiaの端末

 中でも、折りたたみ式は日本や韓国のメーカーが売り出して大成功したデザイン。これまで「Nokia 7200」しか発表していなかったNokiaも、「議論があったが、人気を集めている」(アラフタタ氏)「(最大手として)プライドを持ってコピー(模倣)することもある」(上席副社長 ユハ・プトキランタ氏)と、市場動向を見誤ったことを認めた。

 この日、折りたたみ式端末として「Nokia 6260」「Nokia 2650」「Nokia 6170」の3機種を一気に発表、「これまではスローだったが、今後ポートフォリオを強化する」(アラフタタ氏)という。

今回発表された折りたたみ型の新3機種。「Nokia 6260」「Nokia 2650」「Nokia 6170」

 また携帯電話に通話以外の機能が盛り込まれるようになり、日常生活の一部となったことに対応して、ファッションやアクティブという新カテゴリーも作られた。

 ファッションカテゴリは、初のメガピクセルカメラを搭載し、キー配列がユニークな「Nokia 7610」や「Nokia 8210」などが主力に、アクティブカテゴリは防水加工、ショックにも強い「Nokia 5140」や「Nokia 5210」「Nokia 5100」が該当製品となる。セグメント化は「Xelibri」ブランドでファッション端末を提供するSiemensなど、各社も取り組んでいる分野。Nokiaは、今後も分析を続け新カテゴリを創出していくという。

 折りたたみが含まれるミッドレンジでは、「強くできる分野だったのに強くなかった」(アラフタタ氏)とここでもアナリストらの批判を認めた。「Nokia 6610」「Nokia 3220」「Nokia 6230」「Nokia 6170」を発表しているが、今後の強化分野としている。

 また成長市場のスマートフォンもある。プトキランタ氏によると、PDAを含むスマートフォン市場では、Nokiaは28%と最大のシェア(2位はPalmOneで17%)を占めるという。「2年前、『Nokia 9000』でスマートフォンカテゴリを作ったのはNokiaだ」とプトキランタ氏はリーダーとしての自信を見せる。ビジネスとマルチメディアがキーワードで、中核は、同社が最大株主であるSymbianのSymbian OS、それにSeries 60などの同社のUI技術となる(6月3日の記事参照)。この日、すでに発表済みの「Nokia 7610」「Nokia 6600」に、新たに3G端末「Nokia 6630」や「Nokia 6260」を加えた。

Nokiaのチャレンジ〜ゲーム、エンタープライズ

 そのほかに、同社にとって挑戦市場であるゲームやモバイルメディア、エンタープライズも挙げられた。

 これらを支える研究開発について説明した同社CTO兼取締役副社長のペルティ・コルホネン氏によると、Nokiaの研究開発は無線アクセス/無線コミュニケーション、ソフトウェアプラットフォーム、製品コンセプト、製品技術の4カテゴリに絞られ、昨年は37億ユーロを投じたという(売上高の約11%)。半分以上が端末(製品コンセプトと製品技術)に充てられるというが、将来の方向性であるスマートフォンを支えるソフトウェアにも15%程度を費やしているという。

採用技術別に見た端末の数

 同社のシェア低下の要因は端末設計だけではない。背景には、力を強めるオペレータの姿がある。

 オペレータ主導の日本など、アジア系ベンダーはオペレータとの協業によりシェアを伸ばしている。またオペレータとの端末の協業は、英Vodafoneの「Vodafone Live!」などサービス側から見ても、成功といわれている。オペレータとの協業に関する質問に対し、同社のアラフタタ氏は「時代が新しくなり(オペレータが差別化を望んでおり)、端末にもカスタマイゼーションが求められてきた。Nokiaはさらなるリソースをカスタマイゼーションに充てて、容易に差別化できる技術を開発した」とSeries 60のオープン性を強調した。

 また、「ブランドの維持とオペレータとの協業をどう両立するのか」と聞かれたコルホネン氏は、「数年前、米国市場で当時のAT&Tと経験済みだ。この結果、Nokiaは米国市場でプレゼンスを強めた。最大限の効果を得られるような組み合わせの戦略をとる」と述べた。

 Nokiaは1990年代後半、GSMにいち早く目をつけてあっという間に市場勢力図を塗り替え、米Motorolaや当時のEricssonを抑えて頂点に立った。ところが携帯電話の機能が増え、コンピュータなど他分野との統合が進むにつれて、求められるデザインや機能が変わり、以前のバリューチェーンが崩れつつある。このような市場の変化にどう対応するのか、オリラ会長以下、同社の対応が注目されている。

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