迷惑メール事業者「進化の系譜」

» 2004年07月02日 23時12分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 携帯のメールと迷惑メールは、残念ながら切っても切れない関係になっている。キャリア、総務省ともに対策を講じてはいるが、迷惑メール事業者も巧みに抜け穴を探し「対策への対策」を講じてくる。

 7月2日、ビッグサイトで開催された「フラットパネルディスプレイ製造技術展」のセミナーにはドコモのiモードビジネス部、森健一氏が登場。同社と迷惑メール事業者の戦いを「イタチゴッコだった」としながら振り返った。

迷惑メールの業界構造

 迷惑メールは、受信したユーザーに無駄なパケット料を発生させる。一方で、キャリアにとっても過度なトラフィックをもたらす、やっかいな存在だ(2001年11月6日の記事参照)。1日10億通ともいわれる規模の迷惑メールに「これまで、何度かサーバがパンクしかかった」(森氏)。

 そのため、ドコモは迷惑メール事業者の動向を研究してきた。森氏は、“迷惑メール業界”にも一定の構造ができあがり、メール送信に向けて最適化されていると話す。

 すなわち、悪質な出会い系サイト運営者のほかに、「名簿開拓業者」と「送信業者」が分かれており、それぞれが分業体制で効率よく作業を進めている。「彼らなりに、経営努力をしてくる」(森氏)

Photo 迷惑メールの業界構造

 この中で、キーになるのは名簿開拓業者だろう。有効な携帯メールアドレスを収集する役割を果たすが、その手口も年々高度化してきた。

 初期の頃は、携帯のメールアドレスといえば「電話番号@docomo.ne.jp」といった形式が多かったため、名簿作成も極めて容易だった(2001年6月29日の記事参照)。森氏は、事業者はExcelで番号を管理するだけでよかったと話す。

 しかしその後、携帯のアドレスは英数字混じりのランダムな文字列になる(2001年7月9日の記事参照)。これに対し名簿事業者は、アドレス生成ソフトを開発するなどして対抗した。

 「ユーザーは、英数字の文字列といっても全く無意味なものにはしない。ニックネームなどの組み合わせでアドレスを作るわけで、それをサーチできるプログラムを開発された」

 これにより、正しいメールアドレスのヒット率も向上してしまったという。

 ドコモのとった対策は、「名簿の陳腐化」だ。例えば、大量のメールを送信し、宛て先不明で戻ることのないアドレスは有効――という類推を許さないよう、大量のメール送信に一括して「送信エラー」を返すようにした(2001年11月6日の記事参照)。

 しかし迷惑メール事業者も、自動・手動でWeb上のメールアドレス収集を推進。ネット上に“流出”してしまったアドレスを拾い集め、名簿を生成し続けている。

 併せて、アドレス生成ソフトが強化されているのも不気味なところ。森氏によれば、ある程度長く複雑に組み合わされた単語も、生成可能になっているようだという。「1時間に200万通を送信可能な配信エンジン」(同氏)が利用されるなど、送信能力も向上している。

PHoto 名簿開拓業者の進化

送信手段もさま変わり

 迷惑メールをどこから送信するか、という観点でも変遷があった。

 当初は、迷惑メール事業者はPCからメールを送信していた、しかし、ドコモがドメイン指定受信機能でこれに対抗する。

 すると、今度は携帯からメールを送信してくるようになった。「はじめのうちは送信元を携帯に“なりすます”だけだったが、こちらが対策を強化すると(2002年1月9日の記事参照)本当にiモードメールで送ってくるようになった」。

 もちろん、iモードメールで送信すればパケット料金がかかるが「おそらくコスト計算すると、ダイレクトメールを郵送するよりは圧倒的に安い」。迷惑メールは、有料で送られる時代へと突入する。

 その後、ドコモは迷惑なEメールを送信している端末を、利用停止に追い込む(2003年7月10日の記事参照)。また、携帯からの送信数に上限を設定するなどの措置をとった。

 すると、事業者は抜け穴としてショートメールを多用するようになったという。「現在は、ショートメールの迷惑メール送信端末を利用停止にしている」(3月24日の記事参照)。2004年6月9日現在で、ショートメールによる迷惑メール送信が原因の利用停止件数は、164件だという(ドコモのページによる)。

ゼロにはならないが……

 森氏はこうした対応で「(迷惑メール事業者が)次にどう出てくるのか見ものだ」と話す。しかし一方で、「ドコモが対策を強めると、事業者がほかのキャリアに流入して、そこから迷惑メールを送信するなどするため、「なかなかゼロにはならない」ともコメントする。

 ドコモは今後、迷惑メールを根絶すべく、法的手段の行使も辞さない構え。現に2002年には、特定のメール送信業者を相手取って提訴も行っている(2002年6月27日の記事参照)。

 併せて、迷惑メールを封じこめるような立法支援も行う。ユーザーが被害を避けられるよう、むやみにアドレスを通知しないなどの周知活動も徹底したいとした。

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