デザインで性能が変わる〜Suica改札機のわずかな傾きこばやしゆたか(1/2 ページ)

» 2004年08月04日 10時13分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

 8月16日まで、東京の松屋銀座7階のデザインギャラリーで、「デザインによる解決―Suica改札機のわずかな傾き」という展覧会が開催されている(入場無料)。

 ある日、家に帰ってみたらこの展覧会の案内ハガキが来ていた。あれ、なんでSuicaのが家に来たんだろう。“ペンギンマニア”(*1)なのがばれたかな、と思ってよく読んでみると、Suicaの改札機のデザインはリーディング・エッジ・デザインの山中俊治さんが関っていたのだと書いてある。

 山中さんにはMorph3ハルキゲニア01の取材などでお会いしているので、案内状をくださったのだろう。何にしても、面白そうな匂いがする。アップルストアに取材に行った帰りに寄ってみた(*2)。

 これが大当たり。

 最初に断っておくけど、会場は狭い。展示は本当にワンテーマ。普通の人だと3分で見終ってしまう。興味のある人で20分。だから、これだけのために出かけてとまでは、なかなか勧められない。でも、銀座に行ったついでだったら、「ぜひ」だ。

 Suicaというのは、JR東日本が2001年に首都圏ではじめたICカード(FeliCa)を使った定期券あるいはプリペイドカードシステムである。その後、仙台圏でも使えるようになったほか、JR西日本も同じハードウェアを使ったICOCAを開始(*3)。8月1日にはSuicaとICOCAの相互運用が可能になった。

 磁気カードの場合、カードを、定期入れや財布から取り出して自動改札機のスロットに放り込まなきゃいけない。でも、Suicaなら定期入れや財布に入れたまま、Suica改札機にちょっと触れる(JR東日本はこれを「タッチ&ゴー」と表現する)だけでいい。使い勝手のいいシステムだ。

 ところが、これを実現するのはそんなに簡単なことではなかった。1995年に作られた試作機による実験では、「全然使い物にならない」「5打数1安打だ(5回トライして1回しか読み取らない)と散々な結果だったのだ。

散々だったPrototype '95。文字は全くない。矢印がアンテナの上でいったん停止することをさりげなく表わしているようだが……

 Suica改札機が使用できる電波の強さは、法律で厳しく決まっている。このために、読み取りアンテナとカードとの距離は10センチまでしか離せない。また、改札を通すための一人分の情報のやりとりには0.2秒必要だ。

 つまり、10センチエリアの中にカードが0.2秒間存在してくれないと読み取れないのだ。ところが、この実験では、みんな歩きながらカードをさっとかざして(定期券を人間に見せるときのように)通り過ぎてしまう。これでは時間が足りない。エラーになるというわけだ。

 ここで、山中さんに白羽の矢がたった。

 JR東日本は聞いた。「この問題を、デザインで解決できないでしょうか」

 山中は答えた。「実験してみないとわかりません」

 と、思わず田口トモロヲになってしまうのだけど、ここからのプロジェクトが、この展覧会の展示物だ。

 山中さんたちは、アンテナが入っているパネルに窪みをつけたり、傾斜をつけたりした4種類のモデルを作成。比較対照としてフラットなものも含めて全部で5台の改札機を作った。これらを実際の駅の改札口に置いて(田町駅の昼間は使われていない改札が利用された)、被験者にICカードをもって、改札を抜けてもらう。


*1 Suicaのキャラクターは、さかざきちはるさんデザインのペンギン。かわいい。

*2 アップルストア銀座は松屋銀座のお向かいにある。

*3 ICOCAのキャラクターはイコカモノハシ。かわいい。

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