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» 2004年09月16日 13時46分 UPDATE

地デジ+モバイルが生み出す世界(8):通信と放送は融合しない――KDDIの出した答えは? (1/2)

1セグ放送受信の試作機開発など「通信・放送連携」を着実に具現化していくKDDI。その先には、ITSとの連携も視野に入っている。同社の考えを聞いた。

[中村実里,ITmedia]

 地上デジタル放送に、早い時期から積極的に取り組んできたのがKDDIだ。2003年5月には、KDDI研究所との共同研究によって地上デジタル放送受信機を開発している(2003年5月19日の記事参照)。その際、NHK放送技術研究所と共同で「通信と連携する放送番組」を制作するなど、放送事業者との連携にも積極的に取り組んでいる。

 3月には、エフエム東京と共同で「地上デジタルラジオ放送PDA型端末」を開発した(3月3日の記事参照)。こちらも携帯対応を目指すという。こうした取り組みで同社が何を考え、何を目指しているのか、KDDI技術開発本部 メディア技術開発部部長の中村博行氏に聞いた。

通信と放送は融合しない

 驚いたのは、中村氏がインタビュー中「通信と放送は融合しない」と言い切ったこと。これは、KDDIが長年かけて「放送と通信」を融合する新しいサービスを模索した結果、得られた1つの解だという。

 もちろん同社も、国民の生活に密着した基幹放送メディア「テレビ」と、個人インフラとして定着している「携帯電話」が連携することで生み出される新しい可能性に、大いに期待を寄せている。

 とはいえ、「放送と通信の融合」の議論の中で、双方のポジションや性質の違いを痛感したのだと中村氏は話す。双方の比較は、以下の通りだ。

 放送事業者は、送り出すコンテンツに対して責任を負う立場。例えば、誤った情報や偏った情報、あるいは、公共良俗に反するような画像を流してはいけないなどの自主規制が伴う。一方で、通信事業者は、ネットワークに流れていく中身については関与しない。逆に、知ってはいけない立場。どんなものが流れていても、それを指定されたところへ正しく届けるのが役割だ。

 また、ビジネスモデルについても、放送事業が広告主との関係から成り立つ「B to B」に対して、通信事業は加入者との関係から成り立つ「B to C」のモデル。

 1セグメント放送では、放送と通信の文化が、携帯電話の画面という1つのプラットフォームに並んで表示されることになるが、このように全く性質の違う、2つの文化を“融合”させるという考えでは議論できないというのが、現時点で同社がたどり着いた見解だった。

 このような経緯から、KDDIは通信事業者と放送事業者間での相互理解の重要性を念頭におきながら、「通信と放送を“連携”させて、 ユーザーへ“通信と放送が融合したように見える形”でサービスを提供する」ことを基本プロセスとした。

 また中村氏は、通信事業者と放送事業者以外の、第3のビジネスパートナーの存在を示唆。具体的なアイデアなどは明らかにしなかったが、通信と放送が連携するプラットフォーム上でビジネスを展開する第3のパートナーを迎え、放送番組をトリガーとした既存にないサービスを実現したい考えだ。

 KDDIが放送に絡んだ取り組みとして、注目すべきは昨年11月のFMケータイサービスの導入だった(2003年10月6日の記事参照)。「FMラジオケータイによって、通信と放送が連携するサービスの原点を築くことができた」と、中村氏は話す。

 FMラジオケータイは、ただ単に携帯電話にFMラジオ機能が付いただけのものではない。BREWアプリによって、放送中の曲名を確認しながら着うたを検索できる機能を盛り込むなど、放送に付加価値を与えるものだった(2003年12月12日の記事参照)。これに伴い、コンテンツをダウンロードするきっかけが生まれ、通信の利用を促進。通信と放送の両者が、Win-Winとなる関係を確立した。

 ほかのキャリアに先駆けた、この新しい放送連携の試みはユーザーにも受け入れられ、FMラジオを搭載した携帯電話の契約者数は、早くも100万台を突破している(9月9日の記事参照)

ITSとの連携にも意欲的

 今年5月のNHK技研公開(5月28日の記事参照)では、NHKらと共同開発した、1セグ放送対応の「地上デジタルテレビ受信携帯電話機」のほかに、「地上デジタルテレビ受信車載端末」も披露されていた。

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