携帯に実は入っているICチップをどう使うか?

» 2004年09月17日 17時30分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話にICチップを組み合わせて新しいサービスを提供しようという試みが増えている。ドコモが推進するFeliCaを代表例に、KDDIが試験を進める「Kei-Credit」や(2003年12月1日の記事参照)、日立、松下、東芝などが進めるICチップ内蔵メモリカード「MOPASS」もその1つだ。

 ところが、ドコモやボーダフォンの第3世代携帯電話には、既にICチップが内蔵されている。呼び名はいろいろだが、一般にUSIMカードと呼ばれ、GSM圏で使われるSIMカードの上位規格となる。

見えざるICチップ〜USIMを何に使うか

 「いろいろなサービスを実現する技術を統合するものがUSIMだ」。そう話すのは、ドコモやボーダフォンにUSIMカードを供給する、日本ジェムプラス テレコム事業本部の吉村晋一マーケティングディレクターだ。

 FeliCaやMOPASSなどに含まれるICチップも、USIMのICチップも、役割は本人認証にある。改ざん、複製ができないというICチップの特性を生かして、セキュリティを保つのが目的だ。

 もっとも、両者には実は違いがある。FeliCaやMOPASSなどのICチップは、携帯電話のネットワークと直接結びついてはいない。iアプリを経由するなどして携帯電話の通信ネットワークを使い認証が行えるものの、本来は非接触通信などを使い外部とやりとりするためのものだ。

 それに対し、USIMはそもそもが電話を利用する際の本人認証が役割。「リアルとバーチャルをつなぎ合わせる役割は、SIMが担うべき」(吉村氏)。

 吉村氏は、FeliCaやMOPASSなどのICチップは、本質的に通信キャリア以外でも発行できるようにすべきだと主張する。抜き差し可能な形を取り、携帯だけでなくカーナビや家電などでも利用可能にすることで市場が大きく広がるという考えだ。そして携帯電話に接続したときには、「(認証のために)SIMと連携する必要がある」(同)。

 端末機能を通信キャリアが決めている日本では、海外と異なりSIM機能を利用しなくても新サービスを打ち出すことは簡単だ。この点、端末機能を端末メーカーに握られている海外オペレータとは状況が違う。

 しかし、既に端末に内蔵されているICチップを活用しないのはもったいない話でもある。国内でSIMの機能を活用している例としては、ほぼ唯一、ドコモのSSLクライアント認証サービス「FirstPass」が挙げられるにすぎない。

海外では、プリペイドSIMカードをプロモーション用のギフトとして使う動きが盛んだ。国内では、テレホンカードの需要が低下したあと、QUOカードやパスネットなどがキャンペーン向けのプレゼントとして使われることが増えた。これらの代わりにSIMカードを使うアイデアもある

CDMAでも──R-UIMの可能性

 SIMというと、電話番号などに紐づけされた認証を行うチップという認識がほとんどだ。しかし、チップの高度化、大容量化に伴って、アプリケーション機能が注目されつつある(8月26日の記事参照)

 例えば、サーバに電話帳を置いておき「電話帳を更新すると、その情報が自動的にSIMに配布される」といった「SIMchronize」という機能だ。このプッシュ型の情報更新機能は、ローミング時に提携オペレータの情報を自動通知する機能を活用している。

 またFeliCaとの大きな違いとして、SIMはそれ自体でアプリケーションを動作できる点が挙げられる。これにより端末に変更を加えることなく、サーバからSIMが情報を受け取ってiモードのようなサービスが提供できる。「南米やインド、ロシアなどにGSMが広がっていくときに、評価されている」(吉村氏)。

 GSM端末やW-CDMA端末と違い、CDMA2000端末ではSIMカードが使われていないが、「R-UIM」というCDMA2000用のオプション規格を目にすることが多くなってきた(6月7日の記事参照)。これは「電話機能ではなく、(SIMの)アプリケーション機能を評価している」と吉村氏は説明した。

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