携帯電話にICチップを組み合わせて新しいサービスを提供しようという試みが増えている。ドコモが推進するFeliCaを代表例に、KDDIが試験を進める「Kei-Credit」や(2003年12月1日の記事参照)、日立、松下、東芝などが進めるICチップ内蔵メモリカード「MOPASS」もその1つだ。
ところが、ドコモやボーダフォンの第3世代携帯電話には、既にICチップが内蔵されている。呼び名はいろいろだが、一般にUSIMカードと呼ばれ、GSM圏で使われるSIMカードの上位規格となる。
「いろいろなサービスを実現する技術を統合するものがUSIMだ」。そう話すのは、ドコモやボーダフォンにUSIMカードを供給する、日本ジェムプラス テレコム事業本部の吉村晋一マーケティングディレクターだ。
FeliCaやMOPASSなどに含まれるICチップも、USIMのICチップも、役割は本人認証にある。改ざん、複製ができないというICチップの特性を生かして、セキュリティを保つのが目的だ。
もっとも、両者には実は違いがある。FeliCaやMOPASSなどのICチップは、携帯電話のネットワークと直接結びついてはいない。iアプリを経由するなどして携帯電話の通信ネットワークを使い認証が行えるものの、本来は非接触通信などを使い外部とやりとりするためのものだ。
それに対し、USIMはそもそもが電話を利用する際の本人認証が役割。「リアルとバーチャルをつなぎ合わせる役割は、SIMが担うべき」(吉村氏)。
吉村氏は、FeliCaやMOPASSなどのICチップは、本質的に通信キャリア以外でも発行できるようにすべきだと主張する。抜き差し可能な形を取り、携帯だけでなくカーナビや家電などでも利用可能にすることで市場が大きく広がるという考えだ。そして携帯電話に接続したときには、「(認証のために)SIMと連携する必要がある」(同)。
端末機能を通信キャリアが決めている日本では、海外と異なりSIM機能を利用しなくても新サービスを打ち出すことは簡単だ。この点、端末機能を端末メーカーに握られている海外オペレータとは状況が違う。
しかし、既に端末に内蔵されているICチップを活用しないのはもったいない話でもある。国内でSIMの機能を活用している例としては、ほぼ唯一、ドコモのSSLクライアント認証サービス「FirstPass」が挙げられるにすぎない。
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