従来の通信トラフィックからリアル連携へ──。非接触ICチップFeliCaの導入など、ビジネスモデルの転換を図るNTTドコモだが(2004年2月27日の記事参照)、その道のりは遠そうだ。
ドコモが1月28日に開催した2004年度第3四半期決算で、平田正之副社長は、「従来思っていたよりも一定の数量が必要になる。テレビ電話などは生活習慣にまで踏み込んだものになる。当初の想定よりは、成果が出るのに時間がかかる」と、新サービス普及の難しさを表現した。
FeliCa搭載端末も2004年12月末に130万台を突破したが、「やはり1000万台規模にならないと、目につくところまでいかない。多少時間がかかる」(平田氏)と、サービス普及の見通しには慎重。トラフィック収入は減少を続けており、来期のV字回復のためには新たな収益の柱を構築することが必須だが、未だにその形が見えてこない。
現在のところ、焦点はコスト削減に向かっている。平田氏は大きく2点のコスト削減策を挙げた。
1つは、間近に迫った普及型FOMA「700iシリーズ」の投入だ(1月28日の記事参照)。「700iシリーズは(メーカーからの)購入価格を1万円程度下げられる見込み」とし、端末調達コストの削減を狙う。
2つ目は設備投資だ。「現在設備投資の前倒しをしているが、いずれ償却費として効いてくる。小型基地局など、単価の安い基地局建設に努める」(平田氏)
実際、決算を見ても物件費(端末の販売報奨金、インセンティブを含む)は前年よりも減少している。「(コストについては)聖域なき見直しをしている」(平田氏)
第3四半期の決算内容は中間決算で発表した修正予想通り(2004年10月29日の記事参照)。対前年比4.8%減の減収だが、米通信オペレータAT&T Wirelessの株式売却に伴い(2004年10月27日の記事参照)、6995億円の収入があり、結果的には増益となっている。
期 | 2004年3月期第3四半期 | 2005年3月期第3四半期 | 比較増減 |
---|---|---|---|
営業収益 | 3兆8283億 | 3兆6431億 | 4.8%減 |
営業利益 | 8430億 | 7514億 | 10.9%減 |
税引前利益 | 8360億 | 1兆2501億 | 49.5%増 |
この第3四半期(10〜12月)のトピックは、解約率がついに1%を切って0.95%となったことだ。9カ月通算でも1.03%と改善されている。
「ファミリー割引など囲い込みの効果があった。ただし第4四半期は高まるだろう」(平田氏)
ドコモはファミリー割引サービスを拡大し、家族間のiモードメール無料を業界に先駆けてサービス開始した。さらに無料通話分の2カ月繰り越しに加え、家族間の分け合いも可能にするなど、囲い込みに力を入れている(2004年10月18日の記事参照)。2004年12月末で、ファミリー割引の契約率は60%を超えた。
パケット定額制サービスの導入なども合わせ、合計1700億円の減収要因にはなったが、効果は解約率低下として着実に現れてきている。
ただし最大の商戦期である3月を含む第4四半期は、動きが激しく、毎年解約率が上昇する傾向にある。
ARPUは減少傾向が続いている。ただしKDDIとは異なり(1月27日の記事参照)、2004年11月に施行された道路交通法改正の影響はないとした。「影響としてはごくわずかだろう。急に落ち込むというような状況にはない」
種類 | 対前年同期 | ARPU |
---|---|---|
FOMA | -350円 | 9860円 |
ムーバ | -990円 | 6950円 |
総合 | -690円 | 7300円 |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.