「HSDPA、IMSによりモバイルもオールIP化へ」Ericsson3GSM World Congress 2005

» 2005年02月21日 00時06分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 欧州ではやっと3Gの本格導入が始まったところだが、3.5GといわれるHSDPAへの関心はすでに高い。本イベントの基調講演で「今年末」と宣言したNTTドコモが先行しそうだが(2月16日の記事参照)、HSDPAでは先発組との時差は短くなりそうだ。

 例えば、英大手オペレータのO2は、3G開始は後発だったがHSDPAでは先行するという戦略を打ち出している。

 その日本のNTTドコモを顧客に持つのが、スウェーデンのEricssonだ。同社は会期中、地中海に船を浮かべHSDPAのデモを行うなど、先進技術への取り組みを強調した。同社ビジネスユニットシステム事業部ディレクター兼マーケティング部長のミカエル・ハレン氏に、HSDPAをはじめとした通信技術動向について話を聞いた。

Ericssonでは、音声、インターネット、テレビなどの放送が1つのインフラ上で実現される“トリプルプレイ”がモバイルにも起こると予想している。まだ名称のない“Super 3G”に関しては、昨年11月に3GPPが作業部会レベルでの取り組みに着手、2007年に標準化され2009年に商用化と見ている
日本支社にいたこともあるというミカエル・ハレン氏
――EricssonのHSDPAの取り組みについて教えてください。 

ハレン氏 2004年、顧客と共にフェイズ1のフィールド実験を開始し、同年秋には中国・北京の「PT-EXPO COMM CHINA」でデモを行いました(10月27日の記事参照)。ここカンヌでは、初となるHSDPAのフェイズ2のデモを披露し、下り最大11Mbpsを記録しました。上りに関しては、HSUPAを利用し上り最大1.8Mpbsを記録しました。

 Ericssonでは、HSDPAの実装は今年第2四半期に始まり、年末に本格サービスが始まると見ています。第1号はおそらくNTTドコモでしょう。米国のCingularも積極的です。2社ともEricssonの顧客で、NTTドコモに関してはPDC時代からの関係で、W-CDMA構築も手伝いました。

 HSDPAは、基本的にはW-CDMAシステムのソフトウェアアップグレードとなります(3月3日の記事参照)。低いコストで高速化できるためオペレータにとってメリットは大きく、多くのオペレータがHSDPAサービスを開始すると見ています。当初、データ通信カードでスタートとなるでしょう。携帯電話でのサービスがはじまるのは2006年と見ています。

 3Gが普及するにつれて、ユーザーは携帯端末で電子メール、音楽ダウンロードなどを利用するようになります。今後モバイルTVのサービスが本格化すれば、さらにネットワーク容量が必要となるため、HSDPAの潜在ニーズは高いと見ています。

――“モバイルブロードバンド”という意味では、固定網からのWiMAXもあります。 

ハレン氏 WiMAXは、固定網ブロードバンドを補完する技術と見ています。WiMAXはまず、銅線が敷かれていない地域にブロードバンドを提供する技術として適用されるでしょう。WiFiの進化系であって、真のモバイル技術ではないと考えています。

 移動体通信という意味でのモバイル技術としては、GSM、W-CDMA、CDMA 2000など、すでに素晴らしい技術があります。

――“モバイルブロードバンド”時代の端末はどのようになるのでしょう? 端末メーカーの中には、Skypeを搭載する動きもあります(2月15日の記事参照)。 

ハレン氏 端末はさらにセグメント化が進むでしょう。いま現在、ノートPCと高機能なPDA、スマートフォンは同じ価格帯になっています。境界はさらにあいまいになり、いろいろなタイプのものが登場すると思います。HSDPAに関しては、内蔵ノートPCも登場すると予想しています。

 Skypeですが、真の意味での“マス市場”に普及するには、オープン、標準をベースとし、相互運用性があることが重要です。SkypeはVoIPを実現する技術の1つで、これらVoIPはプロプライエタリで相互運用性がありません。

 西欧オペレータは、売り上げの平均30%を相互接続や国際ローミングに依存しています。サービスがオープンではない場合、この収益チャンスを逃すことになります。

 VoIPはIMS(IP Multimedia Subsystem)があってこその技術です。IMSは、品質や信頼性の面で通信事業者なみのVoIPサービス、つまりIPテレフォニーを実現する技術です。IPテレフォニーは、一般消費者や企業にとって非常に有益なサービスになるでしょう。IMSは3GPPで標準化されており、標準は年内に最終的に整う見込みです。IMSベースのIPテレフォニーは2007年にフィールド実験が始まり、商用サービスはその後、2008年以降と見ています。

――IMSについて、もう少し教えてください。 

ハレン氏 IMSは100%IPベースを実現するサービス技術です。いま現在、音声、動画、テレビ、データなどのサービスを支える技術は、回路スイッチ、パケットスイッチなどそれぞれ異なります。IMSはIPをベースに、これらのサービスを統合するものです。IMSにより、オペレータはコストを大幅に削減できます。さらに、オペレータは音声サービスのほか、リッチコミュニケーションも提供できます。

 現在、標準化の完成と相互運用性の検証という2つの課題が残っていますが、今後IMSの重要性は高まるでしょう。

 コストという問題やSkypeやMicrosoftなどとの競合に直面する固定網では、すでにIP化への取り組みが始まっています。Ericssonでは、モバイルネットワークも将来IPベースに移行すると見ており、IMSの取り組みを積極的に進めています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  4. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  5. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  6. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  7. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  8. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  9. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
  10. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年