「F505i」(2003年4月の記事参照)以降、富士通製端末の一部では「POBox」風の予測入力が可能になっている。最近はユーザにアピールするためか、文字入力システムのブランド名を公にしている端末も多いが、富士通はそのような方針をとっていない。
富士通は日本語入力に長年の経験をもつメーカーだ。業務用ワープロの「OASYS」は、親指シフトキーボードとともに業界標準の地位を保ってきた。オアシスの日本語入力はその後「Japanist」と名を変え、現在でもWindowsの世界で生き残っている。
しかし、富士通は予測入力の登場以降、携帯端末への自社技術の採用をあきらめてしまったらしい。通常変換での文節の区切りかた、予測辞書の付属語候補などを見るかぎり、「F901iC」(2004年11月の記事参照)に使われているのは「ケータイShoin」の変換エンジンと予測辞書だ。
とはいうものの、富士通端末の文字入力画面はケータイShoinとは異なり、POBoxを強く意識したものになっている。おそらく富士通はシャープから変換エンジンと辞書を買い取り、その上に独自のユーザインタフェースをかぶせているのだろう。F505iでは操作時のふるまいにケータイShoinの影響が色濃く残っていたが、今回のF901iCではPOBoxへのよりいっそうの傾斜が見てとれる。
F901iCの操作画面は予測入力では一般的なものであり、POBoxや「Advanced Wnn」とよく似ている。文字を入力すると前方一致予測ウィンドウが開き、「↓」キーで候補が選べる。候補を確定すれば次文節予測ウィンドウが開き、カーソルを移動するだけで続く単語を入力できる。
F901iCがPOBoxと大きく異なるのは、候補ウィンドウ内でカーソルを上下左右に移動できるところだ。このためジョグダイヤルのない富士通端末でもすばやい候補選択やスクロールが可能。その代わり、すべての候補をたどる操作に左右キーを使わなくてはならず、上下キーだけで完結する「ATOK+APOT」やAdvanced Wnnと比べて操作がやや複雑になった。
F901iCのもう1つの長所は「自動カーソル」だ。文字入力せずに一定時間がすぎると、カーソルが自動的に次の入力位置に移動する。たとえば「あ」行の文字が連続するときも、いちいち「→」を押さなくていい。濁点キー、大小切替キー、逆トグルは移動後も有効だ。自動カーソルの反応時間は0.5〜1.5秒のあいだで3段階に設定でき、不要ならオフにも設定できる。
文字入力時には一部の省略が可能だが、基準はちぐはぐだ。濁点、半濁点は末尾の文字についてのみ省略できる。小文字の「ゃ」「ゅ」「ょ」はどの位置でも大文字のままでいいが、「っ」は逆にどの位置でも小文字にしなくてはならない。
それでは例文を入力してみよう。
例文1 | 大学を卒業して出版社に就職し、今では中堅編集者として活躍している。 |
入力1 | だい↓(大学)↓(を)そつ↓(卒業)↓(して)しゆっは↓(出版社)↓(に)しゆうし↓(就職)し 、い↓(今)↓(で)は ちゆうけ↓(中堅)へん↓(編集)しや↓(者)↓(と)し↓(して)かつ↓(活躍)↓(して)↓(いる)↓(。) |
例文2 | 中央線が事故で止まっているので少し出社が遅れます。 |
入力2 | ちゆうお↓(中央線)↓(が)じ↓(事故)↓(で)とま↓(止まっ)↓(て)↓(いる)の↓(ので)す↓(少し)しゆ↓(出社)↓(が)お↓(遅れます)↓(。) |
例文3 | 銀行行ってる暇がないんだけど2万ほど下ろしておいてくれない? |
入力3 | ぎ↓(銀行)い↓(行っ)↓(て)↓(る)ひ↓(暇)が な↓(ない)ん↓(んだ)け↓(けど)に[変換](2)まん↓(万)ほ↓(ほど)おろ↓(下ろし)て おい↓(おいて)くれな↓(くれない)? |
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