インタビュー
» 2005年08月31日 17時46分 公開

「デザイン」とは「つなぐ」こと──コラボの結晶「P701iD」(前編) (1/2)

パッケージデザインやテレビ番組のアートディレクターなど、幅広い分野で活躍するグラフィック・デザイナー、佐藤卓氏。新たなる挑戦として取り組んだのは、携帯電話端末のデザインだった。

[野田幾子(聞き手:後藤祥子),ITmedia]

 NTTドコモ、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、グラフィック・デザイナーの佐藤卓氏の3者のコラボレーションから生まれた「P701iD」(2005年8月の記事参照)。携帯電話のデザインを手がけるのは初めてという佐藤氏は、P701iDについて「一人のデザイナーが考える形を具現化」するプロジェクトとは一線を画するもので、「コラボレーティブなプロジェクトである」点を強調した。

 どのような気持ちで携帯デザインに関わり、どのような端末作りを目指したのかを、佐藤氏に聞いた(2005年8月の記事参照)

 3者のコラボで誕生した「P701iD」

デザイナーが牽引する「デザインケータイ」ではない

 「僕は、デザインというのは『人と人』や『人ともの』、ひいては『企業とカスタマー』──つまり、何かと何かを『つなぐ』役割を担っていると考えています。デザイナーとはそれらの間に立って何ができるかを探る使命を果たす存在。ですから、自分だけが何かを新しく生み出すというスタンスでは決して、ないのです」

 それは携帯電話に限らず、以前手がけたロッテ「クールミントガム」や、明治乳業の「おいしい牛乳」にもいえることだ。そのメーカーが持つ技術、美味しいものを消費者に届けたいという気持ち、企業が積み重ねてきた歴史やこだわりをよく理解した上で、佐藤氏は企業と消費者をどうつないでいけるかということを考えてきた。

 佐藤氏の元にNTTドコモから携帯電話端末のデザイン依頼が来たのは約1年半前。実はそれまで、携帯電話を持ってはいたものの通話と留守番電話サービスだけしか使っておらず、メールの送受信サービスには申し込みすらしていなかった。

 「一人で考えごとをしたいときでも『常に連絡が取れてしまう』状態を辛く感じてしまった。自分にとってどうしても必要な存在にはなり得なかったのです」

 そう話す佐藤氏が、携帯電話を持とうとしていなかった大きな理由はもう1つある。それは「自分が気に入ったデザインの携帯電話が存在しなかった」ことだ。販売店に足を運んでみたものの、欲しい携帯が見あたらなかった。黒一色のモトローラ製cdmaOne端末「C100M」(2001年2月の記事参照)を4、5年使い続けた後、友人でもある深澤直人氏がデザインを手がけた「W11K」(2003年10月の記事参照)を購入している。「ひとつの色が塊になっている」シンプルさが気に入った。

 佐藤卓氏が最初に手にした携帯電話「C100M」


 深澤直人氏がデザインした「W11K」(2004年7月の記事参照)

 このW11Kや「INFOBAR」(2003年10月の記事参照)をはじめとする「au design project」(2004年10月の記事参照)を見たときに、「あ、ケータイにも新しい時代が訪れたのだな」と、佐藤氏は考えたという。それまでは、使い手をデザインそのものにフォーカスさせるようとする製品が多いように感じていた。デザインとは本来、コンテンツへ導くための途中にあるものであり、そこにフォーカスさせるための「窓」であるべきもの。それなのに、奇妙なファンクションや目新しさだけを「デザイン」として捉えられているような気がしてならなかったのだ。

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