ソフトバンク、安売りには「理由が必要」だが?Mobile Weekly Top10

» 2006年04月06日 22時17分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 先週のトップは、ボーダフォンのワンセグ端末「905SH」の記事。ボーダフォンのハイエンドモデルで、しかも売れ筋のシャープ製端末とあって、ユーザーの注目度も大きかった。

 3位には、ソフトバンクの携帯事業に関連した記事が入った。「ソフトバンクに何を期待するか」という読者アンケートの結果発表記事だが、結果は予想通り「安さ」に期待が集中していた。こうなると、ソフトバンクも通信料や端末代金を安くせざるを得ない……と言いたいところだが、果たしてそれを可能にできる「理由」があるだろうか。

 過去を振り返ると、ソフトバンクがかつてYahoo!BBを“激安”で提供した際には、いくつか安売りの理由があった。その1つがAnnex.Aという方式を採用したこと。また、100万規模という新規ユーザー数を見込んだことも挙げられる。

 Annex.Aはご存知のとおり、ヨーロッパ各国で一般的に使われているADSLの規格。このため、ネットワーク機器の調達コストを抑えることができる。ただし日本ではAnnex.Aは使わないほうがいい……というのが“常識”だった。理由は簡単で、日本ではISDNが普及しているという事情があり、これとの干渉を抑えた規格であるAnnex.Cを使うのが望ましいとされていたからだ。

 ソフトバンクがAnnex.Aを採用するといったとき、ライバル企業は「干渉による速度低下が著しいに違いない」と笑った。ソフトバンクの孫正義社長はこれに憤慨し、訴訟まで起こしている(2003年4月に取り下げ)。実際のところ速度低下したか、という部分はここでは深く議論しないが、Yahoo!BBが常識の裏をいく「Annex.Aの採用」によって低価格戦略を実現したことは間違いない。

 もう1つ、「100万規模の新規ユーザー数を見込んだ」ということも忘れてはならない。当時ADSL市場は、携帯市場とは異なりまっさらな“拡大市場”だった。孫氏はブロードバンドの潜在的なニーズは大きいとにらみ、100万、200万というユーザーを獲得することでペイするという事業プランを立てた。実際には数千ユーザーしか集まらない可能性もあったわけで、大きな賭けだったが、孫氏は2005年末の段階で500万を超えるユーザーを集めることでこの賭けに勝ってみせた。

 しかし、ここでもう1つのサービスを振り返ってみよう。ソフトバンクはFTTHの分野ではそれほど安売りできなかった(2004年10月4日の記事参照)。「ソフトバンクがFTTHでも安売りを仕掛けてくるぞ」と注目されていたのにも関わらず――だ。理由は、FTTH事業に決して手を出さないイー・アクセスに聞いたほうが早いかもしれない。イー・アクセスのある経営幹部は、記者に対し「NTTから高い金を払って光ファイバーの回線を借りているうちは、安売りできるわけがない」と笑っていた。

 NTTの“回線卸値”が高ければ、最終的なユーザーへのサービス価格がそれより高くなるのは自明だ。この点では、NTTから光ファイバーを借りているソフトバンクの“弱さ”が出た格好となる。ちなみに、回線を自前で持っているUSENなどは、低価格路線でサービス提供を進めている。

 というわけで、やや長くなったが結論としては「安売りにはそれなりの理由が必要。理由がなければ安売りはできない」ということ。今後、ソフトバンクがマジックのように安売りの理由を作り出して見せるのか。注目したい。

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