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» 2006年12月18日 10時41分 UPDATE

「赤耳」はどこまで粘るのか?──「W-OAM」対応W-SIMの感度を試す

W-OAMの大きなメリットである、高速なデータ通信速度は、前回の記事で明らかになったが、今回はW-OAMのもう1つの側面、「電波の到達距離の拡大」による粘りをチェックしてみた。

[坪山博貴,ITmedia]

 「赤耳」ことW-OAM対応の新W-SIM「RX420AL」のデータ転送速度を調べた記事で検証したように(12月11日の記事参照)、W-OAMは、電波状態に応じて変調方式を変更することで、アンテナの近くなど、電波の状態がよい場所ではより高速な通信ができるのが大きな特徴だ。

 一方で、低速ながらもエラー訂正能力が高い変調方式「BPSK」を利用すれば、電波の弱い場所でも従来より安定した通信が行えるという特徴も持つ。初代W-SIM「RX410IN」が登場してから1年近い時間が経過しており、その間に電波の送受信能力が向上していることも期待できるだろう。そこで今回は、電波の状態が悪く、アンテナの表示が圏外から1〜2本の間をふらつく場所に出向いて受信速度をチェックしてみた。

電波状態の悪い場所で通信ができるか──W-ZERO3[es]の内蔵ブラウザでチェック

 テストを行ったのは建物の1階にある奥まった場所だ。基地局が遠いというよりは、障害物が原因で電波が届きにくい場所という事になる。本来ならば基地局との距離が絶対的に遠いという状況での検証も行いたかったのだが、現時点でのW-OAMのサービスエリアが都心部という事を考慮すると、W-OAMをサポートしており、なおかつ基地局から遠い場所はちょっと探しにくいという事情もあって、今回は検証できていない。その点はご勘弁願いたい。

Photo 左がRX410INを装着したW-ZERO3[es]、右がRX420ALを装着した「9(nine)」。電波状態はバーが0本と1本。どちらも放置しておくと圏外から2本の間を推移する。表示の変化を見ている限りRX420ALの方が電波のつかみが特によいという印象は受けない

 まず、「W-ZERO3[es]」にRX410INとRX420ALを装着し、内蔵ブラウザ(Opera Mobile 8.6)を使ってPRINに2xパケット接続で通信してみた。RX410INを利用した場合は、平均すると約20kbps台前半という速度だった。最高で29.8Kbpsを記録したので、間違いなく2波の電波をつかんで2xでの通信ができているが、やはり電波が弱く、1波あたりの通信速度は10Kbps台といったところだ。

 ところがW-SIMをRX420ALに交換すると、同じPRINへの2xパケット接続でも最高で51.2Kbpsを記録した。30Kbpsを超えることも多く、コンスタントに40Kbps台を記録した。実際に変調方式をBPSKに切換えて通信しているかどうかは確認のしようがなく、理屈の上では、従来から採用されているQPSKに対して、BPSKはスループットが約半分に低下するはずなので、2xパケット通信では30Kbps台前半が限界となる。従って、より設計の新しいRX420ALのアンテナの性能そのもが高いという可能性も十分考えられるのだが、ともあれ従来のW-SIMより高速な通信ができることは間違いない。

 RX420ALでは、PRINへの4xパケット接続で最高85.3Kbpsを記録した。コンスタントに60Kbps台は出る。1波あたりに換算するとそれほど高速とまでは言えない。しかしAirH"のマルチチャンネル接続では、チャンネルあたりの速度がもっとも通信速度の遅いチャンネルに合わせられてしまうため、単純に4xパケットなら2xパケットの2倍、8xパケットなら4xパケットの2倍になるわけではない。従来のW-SIMでは2xパケットで最高29.8Kbpsだった訳だから、この2倍より高速という結果は高く評価できる。

PhotoPhotoPhoto 左から従来のW-SIMの2xパケット、RX420ALでの2xパケット、4xパケット。比較的安定はしているようで、通信の途切れや大きな通信速度の変化は無いようだ

PCに接続した場合の通信速度も良好

 次にW-ZERO3[es]をPCと接続し、モデムとして利用した際の受信速度もチェックした。内蔵ブラウザ利用時と異なるのは、W-ZERO3[es]を机上に水平に寝かせて置いていること。実際にモデムとして利用する時には当然このような使い方になると思うので、実環境に合わせてみた。どの組み合わせでもできるだけ同じように置いて検証を行っている。

 従来のW-SIM RX410INでは、PRINへの2xパケット接続で最高21.4Kbpsとなった。先に内蔵ブラウザでテストしたときは手で縦に持っていたので、今回のように電波状態のよくない場所では水平に寝かせたことが悪影響になった可能性は高い。受信速度の変遷を見ると結構フラットで、時折通信速度が低下しているという形だ。つまり速度が高速になる方向へのブレはほとんどないので、速度向上の余地がほとんどないと見ることもできる。おそらく1波しかつかめていないか、2波つかんでいるが1波あたりの速度が出ていないという状況だろう。

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Photo 10回計測して受信速度上位2つと最低速度の3つをピックアップ。受信速度の変遷を見ると、どうも途中で速度を上げようとしているが、結局無理で元の速度に戻っているという雰囲気だ

 W-SIMをRX420ALに切換えてPRINへの2xパケット接続を試みたところ、こちらは最高で51.3Kbpsを記録。コンスタントに40Kbps台が出る。受信速度の変遷をみると従来のW-SIMよりバラツキが大きいが、安定部分の受信速度は明らかに高い。低い受信速度が続く場合もあるのでBPSKに切換えている可能性もあると推測できるが、従来のW-SIMと違って2波つかんでいることは間違いなく、電波レベルでの送受信能力が高いと判断して間違いなさそうだ。

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Photo 条件は前出のグラフと同じで、10回計測してうちの受信速度上位2つと最低速度の3つをピックアップ。従来のW-SIMに比較すると弱い電波をがんばって捕まえているという印象を受ける。なおピーク速度の違いから、従来のW-SIMのグラフとはスケールが違う点に注意してほしい

 PRINへの4xパケット接続に切り替えると、今度は最高で92.6Kbpsを記録した。コンスタントに70Kbps台という事で、電波強度のピクト表示から考えると単純に4xパケットでの通信速度としてみても悪くない。受信速度の変遷を見るとさすがにバラツキは大きく、途中で4xパケットと2xパケットを切換えているか、4xパケットのままBPSKに切り替わっているのだろう。いずれにせよ従来のW-SIM(RX410IN)での2xパケット接続と比較するとRX420ALの優秀さがはっきりと分かる結果になった。

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Photo 10回計測した中の、受信速度上位2つと最低速度の3つを表示。受信速度の変遷では2xと4xを切換えているか、QPSKとBPSKの切換えが発生しているように見える

 W-OAMに対応したRX420ALは、今回の検証でも分かるように、電波状態が悪い場所でも従来のW-SIMと比較して明らかな通信速度の向上が見られた。残念ながらW-OAMの特徴である動的な変調方式の変更、つまりBPSKの明らかな効果は確認できなかったが、ほぼ1年ぶりに登場した新しいW-SIMであるRX420ALは、悪条件下での通信能力が従来のW-SIMと比べて向上していることは間違いないだろう。よく利用するW-SIM対応端末でなかなか通信速度が上がらない、といった悩みを持つ人にとっても販売が待ち通しい製品といえるだろう。

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