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» 2007年09月17日 10時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:携帯シルバー市場のポテンシャル

シルバー層の携帯電話ユーザーには、メール、カメラだけでなく、GPS・ナビなどを使いたいと考えているユーザーも多く、さまざまな可能性を秘めている。飽和状態を迎えつつある若者中心の携帯電話市場に、シルバー層がもたらす新たな伸びしろとは。

[神尾寿,ITmedia]

 9月4日、NTTドコモが「NTTドコモレポート No.59」として、“みんなに使いやすいケータイ 「らくらくホン」シリーズ”を公開した。詳しくはニュース記事に譲るが、今回のドコモレポートではシルバー向けの「らくらくホン」シリーズにフォーカス。累計販売台数1100万台を超えて、同社の主力商品の1つとなった“シルバー向け”端末・サービスの現状について紹介している。

 今回のドコモレポートの中で筆者が注目したのが、ドコモプレミアクラブ会員向けのアンケート「プレミアアンケート」の結果だ。ここで「らくらくホンIV」で利用したい機能についての質問があり、回答者は「メール」(67.4%)、「カメラ」(52.4%)、「GPS・ナビ機能」(49.8%)を、利用希望機能のトップ3に選んでいる。シルバー層というと通話など基本機能しか使わないのではないかという先入観にとらわれてしまうが、実際は付加価値機能や先進機能の利用意欲が高いことが分かる。特に利用したい機能の第3位にGPS・ナビが入ったことは興味深い。

シルバー層向けのGPSナビゲーション

 ふと振り返って筆者の母親を見ても、意外とケータイの機能・サービスを使っている。母はもうすぐ60歳。3年ほど前からauの携帯電話を使い始めており、今ではメールやカメラ機能を使いこなしている。今では写真付きメールや動画メールを普通に利用しており、パケット料金定額制にも加入済みである。

 一方、コンテンツ・サービスは興味のあるものがないらしく、当初はほとんど使っていなかった。しかし、筆者が「EZナビウォーク」を紹介して使い方を教えてると喜んで利用し始めた。GPSナビゲーションよりも乗り換え案内機能を主に使っているようだが、出かけたときに「(GPSで)地図が確認できる」のは便利だという。着うたフルやゲームはラインアップが若者向けであることもあってシルバー層に訴求することは難しいが、GPSナビゲーションは使い方を説明すればニーズが引き出せる分野と言えそうだ。

 なお、蛇足であるが、母が話すEZナビウォークの不満は、“駅の中を案内してくれない”ことである。駅の施設内マップおよび現在地の確認や、乗り換え先ホームや目的とする出口までの経路誘導をしてほしいという。確かに都市部の大きな駅は内部構造が複雑で、乗り換え先のホームや出入り口を探すのが大変だ。また高齢者ならば、階段ではなくエレベーターやエスカレーターを使いたい、段差のないルートで移動したいというニーズもあるはずだ。

 今後、シルバー層の携帯電話需要が拡大することを鑑みれば、屋内も含めて「高齢者の移動」にフォーカスしたGPSナビゲーションのサービスは検討する価値があるだろう。

端末機能にはサーバー連携の可能性

 シルバー層向けで潜在市場がありそうなサービス分野は、GPSナビゲーションだけではない。カメラやメールなど、シルバー層が使う基本機能にも、サービス連携の可能性がある。

 特に筆者が需要があると感じているのが、カメラやメールデータの「サーバ保管」サービスである。筆者の母もそうなのだが、シルバー層の多くはmicroSDなど小型メモリーデバイスを活用することが苦手であり、携帯電話の端末メモリーに保存した写真やメールデータを「取り出す」「PCで保存する」「プリントアウトする」ことができない。端末機能と連動し、サーバへ自動的にバックアップして、簡単な操作でデータを活用できるようにするUIの補完的なサービスは、有料でもニーズがありそうだ。

 平成18年度の高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者人口は過去最高の2560万人に達し、高齢化率も20%を超えた。一方で、引退後も活発な社会参加をする高齢者も増えており、ここに新たな市場が形成されてきている。らくらくホンだけで累計1100万台を突破する携帯電話の“シルバー市場”も、今後しばらくは契約数ベースでの成長をしそうだ。

 しかし一方で、高齢者市場もいつかは契約数の飽和状態が訪れる。むしろ、今後のシルバー向け携帯市場で重要なのは、コンテンツ・サービス分野での利用促進だ。シルバー層のニーズをしっかりと捉えてサービスを投入すれば、データARPUやコンテンツARPUの伸びしろは、すでに開拓が進んだほかの年齢層よりも大きいだろう。

 シルバー層が求めるサービスを、シルバー層が利用しやすいUIで提供できるか。キャリア、メーカー、そしてコンテンツプロバイダーの取り組みに注目である。

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