皆さんこんにちは。外はずいぶん暖かくなってきましたね。各社の春モデルも続々と発売されています。
さて今回は、意外に地味で気づきにくい、でもオリジナリティを表現する上で、外見デザインに次いで重要となるUI(ユーザーインタフェース)、特に待受画面やメニューなどのGUI(グラフィックユーザーインタフェース)について、春モデルを含めた最近のケータイで僕が感じたことをお話ししたいと思います。
普段、何げなくケータイを使っていますよね。端末そのものに触れる時間はもちろんですが、液晶画面の中の世界? 実は“液晶画面の中の世界”、GUIに触れる時間がもっとも長いのではないでしょうか。
こう言われてもあまりピンとこない人も多いと思います。でも、ケータイを操作している間は、実はGUIを使っていることになるのです。このあたりの感覚は論理的に言うのが非常に難しいのですが、簡単に言えばケータイを触っているときというのは、ケータイのインタフェースと自身のイメージが直結して、無意識のうちに操作している……ということです。
ケータイの短いようで長い歴史の中で、GUIは表示デバイスの進化とともに「使いやすく」「魅力的」に着々と進化を続けてきました。今までで、GUIの側面から大きな進化を遂げたのは、ケータイが音声通話端末からメールサービスを楽しめる端末になったときだと言えるでしょう。このことにより、ケータイ市場が一気に拡大しました。
さらに、NTTドコモの「iモード」を始めとするケータイでのインターネット接続サービスの登場や、ケータイにカメラが搭載されるようになって、画像を手軽に送受信できるようになったこともGUIの変化をもたらしました。
その後もケータイで音楽を楽しめるようになったり、ワンセグが楽しめるようになったりと、当初のケータイからは想像もできないくらい劇的な進化が進んでいるわけです。こうした進化は、いつでも技術とニーズのバランスによって実現されてきたというおもしろさがあります。
とくに昨年、Appleから発表された「iPhone」。この端末の登場は、世界中に大きなインパクトを与えましたよね。その本体デザインについては以前、この連載で紹介しましたけれど、実は本体デザイン以上にGUIや操作性のオリジナリティが、それ以後のケータイ業界にとっても大きなインパクトを与えたと思っています。
iPhoneは、日本のケータイの進化とは違った方向からのアプローチと言えるものです。AppleがApple IIやMacintoshを、独自の世界観によるインタフェース開発で進化させてきたからこそ実現したものだと思います。
このiPhoneは、画面デザインとサウンドデザイン、そのレスポンスや表現などが実に魅力的にミックスされていて、一度手にした人の心を離しません。これは、Appleファンならずとも実感できる部分でしょう。
僕としては、このiPhoneの次のモデルがどんなものになるのか、どんなデザインのGUIで楽しませてくれるのか、今からとても楽しみでます。
国内の端末に目を向けると、2007年の秋冬モデルや2008年の春モデルあたりから、これまでにない見せ方のGUIを採用したり、サービスと連動するような仕掛けが増えてきました。
例えばドコモの905iシリーズでは、プリインストールされているメインメニューのGUIに動画が使われていて、端末の持つ雰囲気と進化感をうまく表現しています。動画の使われ方にもさまざまなバリエーションがあって、とくに「N905i」では背景すべてを動画にしてしまったダイナミックなデザインになっていますし、「P905i」や「P905iTV」では、間接照明的なさりげない動画の使い方をしています。
そうですね、待受画面そのもので動画がダイナミックに映し出されている、そんなイメージでしょうか。こういった表現手法が進化したことの背景には技術の進化があるのですけど、無意識に人が進化を実感できる部分は、実はこういった部分が利いているのではないかと思います。
一方、ソフトバンクモバイルでは、「FULLFACE2 921SH」が動画+3Dというメニューのデザインを搭載していて、これからのGUIを予感させる表現があちこちに見受けられます。メインメニューから第2階層に移るときなどにも、深いところへ潜りこんでいくような効果が演出されていて、興味をそそられます。
これまでのケータイにはなかった、シームレスな操作感を実現してくれそうな可能性を感じますね。またこのモデルは、モーションコントロールやタッチセンサーが搭載されているのも非常におもしろいと思います。WiiやiPhoneのようでもあり、またそれとは違った新しさと進化を味わえるのではないでしょうか。
さらに、PCでは当たり前になっているマルチタスクも進化を実感できる1つの要素だと思います。これは、例えばワンセグを見ながらWebブラウザやメールの閲覧が同時できるものなのですが、ケータイのあの小さな画面で実現できるようになったのですから、ちょっとした驚きです。
GUIといった観点から見ると、僕が思うにau(KDDI)にはセンスのよいモデルが多かったし、今なお多い気がしています。とくにカシオ計算機のモデルは、ずっと以前から端末本体のデザインだけでなく、インタフェースデザインについてもハイレベルでハイクオリティだなぁと感心しています。
それから、昨年の秋冬モデルで発表された「au one ガジェット」が待受画面に登場したことも大きな話題でしょう。au one ガジェットは待受画面上に好きなアプリケーションのような物をおいて、手軽に情報を見ることができるサービスです。
これからさまざまなガジェットがダウンロードできるようになると思うのですが、きっと、おもしろい情報を活用するものが出てくるでしょうし、どんどん盛り上がってくれるといいなと思います。
au one ガジェットは待受画像の上に表示されるものなので、ガジェットは好きな透明度に設定できるようになっています。GUIと合わせたテイストのシリーズでガジェットを作ってもいいですし、携帯待受画面のアクセントとしても見せ場になるかもしれません。いずれにせよ、思い思いの楽しみ方ができ、そしてその幅が広がっていて、今後の展開がとても楽しみですね。
前回も取り上げましたが、ディズニーモバイルの「DM001SH」は、ディズニーの世界観そのものが、ほかを寄せ付けない強みとしてあると思いっています。
ディズニーの端末では、ディズニーをケータイ端末上でも思う存分に味わえるように、たくさんのコンテンツが搭載されています。オリジナル待受画像やメインメニューのGUIはもちろんのこと、絵文字やちょっとしたアイコンにまで、ありとあらゆる部分にミッキーを始めとするディズニーキャラクターをモチーフとしたデザインが採用されています。
DM001SHにプリインストールされているコンテンツは、ディズニーらしい世界観のものや、大人でも普段使えるモダンなものまで、幅広く準備されていることはとても素晴らしいことです。
こういった、微に入り細に入りディズニーらしさを徹底して楽しませてくれる、エンターテイメントとしてまさに“ディズニーの魔法で端末が楽しくなる!”といった印象です。
画面デザインだけでなく、着信サウンドやメロディーも、それこそあの名曲までもがダウンロードコンテンツとして展開されそうですから、これだけでも相当、興味をそそられる世界ですよね。
最後にGUIはキャリアや端末メーカー独自の公式コンテンツだけでなく、ユーザーが自由にカスタマイズできるところも魅力の1つと言えるでしょう。キャリアと端末メーカーは力を合わせて、クオリティの高いメインメニューGUIを作り込んでいますが、キャラクターをモチーフにしたGUIや、もっととがったデザインのGUIなどはやはりコンテンツプロバイダから配信されているものならではの世界です。
その日の気分でGUIを変えて楽しんでもいいし、お気に入りのグラフィックやキャラクターがデザインされているGUIを自分のケータイで持ち歩けば、まったく違ったケータイに変えたのかと思うくらいに、一気に気分が変わるものです。
もちろん、自分で撮った画像や動画を待ち受け画面や着信時のグラフィックとして使うというのも、カスタマイズのスタートではありますけど、どんどん自分の好きなケータイにカスタマイズして使いこなす、そしてこの使いこなしそのものを、とことん楽しむ、というものが、これからのケータイとの楽しい付き合い方なのかな、と考えています。
今回はGUIに注目してみました。最後に触れたGUIのカスタマイズについては、服をちょっと着替えてみたような気持ちになれるのではないかと思うのです。
人は皆、意外とケータイのGUIには無意識のうちに触れていると思います。だからこそ、今回ここを訪れてくれた方に、ちょっとした気分の変化をご提案したくて、メニューデザインを中心にしたGUIをテーマにしてみました。
外は春を迎えています。冬の装いから春のファッションに着替えるように、あなたのケータイも春色にカスタマイズしてみてはいかがでしょうか?
1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。
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