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» 2014年06月03日 20時30分 UPDATE

ワイヤレスジャパン2014:「5G」のめどは付いた――2020年のトラフィック1000倍増に挑むドコモ (1/2)

2014年度中に下り最大225Mbpsの「LTE-Advanced」を開始するドコモ。2020年には1000倍にも増えると予想されるトラフィックをさばくため、さらに第5世代通信規格のシミュレーションも進めている。

[平賀洋一,ITmedia]
photo NTTドコモ 常務執行役員 ネットワーク担当 ネットワーク部長の徳広清志氏

 国内キャリアで初めて「VoLTE」による通話サービスをスタートし、さらに下り最大225Mbpsの「LTE-Advanced」を2014年度中に開始すると発表したNTTドコモ。同社の常務執行役員でネットワーク担当 ネットワーク部長である徳広清志氏が、ワイヤレスジャパン2014の基調講演でドコモのネットワーク戦略と移動通信技術の将来像について語った。

 「2014年は、1979年12月に日本で自動車電話サービスが始まって35年目。この間、第1世代から第3世代まで、携帯電話のシステムは3代に渡って入れ替わってきた。そしていよいよ、年度末(2015年)には第4世代の周波数が割り当てられる。まさに今年は記念の年といえるだろう」と切り出した徳広氏は、「この業界は技術革新が激しい業界。それは増大を続けるトラフィックに対し、常に新しい規格を使って対応してきたからだ」と述べ、第4世代、つまりLTE-Advancedへの期待を示した。

急増するトラフィックにどう対処するのか ドコモの悲しい過去から学ぶ

 徳広氏は現状の業界トレンドについて、「業界全体でスマホ普及率は50%。デバイスがフィーチャーフォンからスマートフォンに移行することで、トラフィックは10倍から20倍になると予測されており、現実に従来から桁違いで増えてきている」と分析。そして、「トラフィックが急増したことで、我々のネットワークがパンクするという悲しい過去もあった」と、2011年から2012年にかけて立て続けに起こった通信障害を振り返った。

photophoto スマートフォンの普及とともに、トラフィックも増加している

 「パンクした理由は、データのトラフィック、制御信号、同時接続数の3つが増えたこと。トラフィックの増加は予測していたが、急所は制御信号だった。当時のアプリは画面の切り替えなどで発呼信号や着呼信号などの制御信号を使う仕様だったため、それを賄い切れずに(障害発生の)引き金になってしまった」(徳広氏)

 その後ドコモは、通信障害の原因となったトラフィック/制御信号/同時接続の増加に対応するため、設備を増強して能力を拡大。地道な努力を重ねることで「人為故障によるネットワークダウン・ゼロを、560日以上連続で継続している」(徳広氏)とその成果を強調した。しかし油断はできない。「スマホの普及によりこの5年でトラフィックは10倍になった。今後5年でさらに10倍、つまり10年で100倍へとうなぎ上りで増えていく。キャリアにとってネットワークのパンクは1番のホラーストーリー。それをさせないよう(ネットワークを)設計するのが重要」と説明した。

 ドコモは現在、800MHz帯/1.5GHz帯/1.7GHz帯/2GHz帯と4種類の周波数を使ってサービスを提供している。徳広氏は「このうち800MHz帯と2GHz帯で広さをカバー、1.5GHz帯と1.7GHz帯で下り最大150Mbpsの速さを追求するという、“ハイブリッド”な使い方をしている」と解説。端末側の対応については、「2013年9月から取り扱っているiPhone 5s/5cは、800MHz帯と2GHz帯、そして1.7GHz帯に対応。またドコモブランド(Android)のスマホの多くは4つすべての周波数に対応しており、新しいモデルであればあるほど対応する周波数が多く、スピードが出やすいためによりサクサクと利用できる」とアピールした。

photophoto ドコモは4つの周波数帯域でLTEサービスを提供している

2014年度にほぼ完成するドコモのLTEネットワーク

 徳広氏は同社加藤社長がよく口にする「ネットワークは生き物」というキャッチフレーズを引き合いに、「ネットワークは道路の車線に例えられるが、道路がどれくらい混み合うのかを予測しながら、車線の数を増やすなど、常に手を入れていく必要がある」と話す。予算面でもLTE向けに2013年度は3878億円を投資したが、今年度(2014年度)はこれを4650億円へと増やした。LTE対応基地局も5万5300局から9万5300局へと増強し、中でも下り最大100Mbps以上のサービスを提供できる基地局を2013年度末の3500局から4万局へと10倍にする計画だ。ドコモ全体の設備投資額が7031億円から6900億円に減っているが、無線アクセス部の強化には今後も力を入れていく方針だ。

photophoto LTEの設備投資として2014年度に4650億円を投下(写真=左)。基地局数も3Gに匹敵させる(写真=右)

 人口カバー率100%を達成している3GサービスのFOMAは、全国の基地局数が約10万局。徳広氏は2015年度にもLTE対応基地局が10万局近くになるため、「今年でネットワークが(3GからLTEに)入れ替わるかな、と。年度末には人口カバー率が99%になる見込みで、LTEネットワークがほぼ完成する」と予測した。

 先述のようにドコモは4つの周波数を使い分けており、人口が密集してエリアと速度、キャパシティのすべてが求められる都市部では、1局で複数の周波数を使い小さなセル(基地局がカバーするエリア)を6つ構築する6セクタ型基地局を採用。郊外など中間部は2セクタ型、山間部など人口が少ない場所では1局で広いエリアをカバーするオムニ型と、使い分けている。

 ただ設備を強化するだけではなく、運用面も重要だ。特に東京は「世界でもめずらしく鉄道網で支えられた都市。電車の乗客によるトラフィックは密度が通常よりもはるかに濃く、世界最高レベル。これをいかにさばくかが重要」(徳広氏)だという。特に混み合うのが品川駅周辺で、「新幹線、京浜急行、山手線が同時に入ってくると、1両目から信号が次々と飛んでくる。エラーが少なくなるよう、30年間のノウハウを使って地道にパラメータをひたすらチューニングして対応している」と、経験がものをいう一面ものぞかせた。

 LTEエリアが充実することで、高速通信が可能なロケーションが増えるだけでなく、新しい音声通話規格の「VoLTE」を使った高音質な通話も可能となる。VoLTEは音声品質が良くなるだけでなく、発着信の動作が速い、通話をしながら高速なパケット通信が可能なマルチアクセスができる、そしてビデオ通話ができるなどの特徴を持つ。

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