MWC 2014における無線通信インフラのトレンドにおいて、「仮想化」は一つの大きな流れとなっていた。この領域では、すでにNFV(Network Function Virtualization)、SDN(Software-Defined Networking)などのキーワードがある。NFVは仮想化技術を用いてネットワーク機能をハードウェアから分離することで、Intelのx86系プロセッサーを搭載するサーバ上でEPC(Evolved Packet Core)などのさまざまなネットワーク機能を利用するというアプローチだ。また、SDNは、ネットワークの構成や端末が持つリソースの配分、割り当てや設定などを処理負荷にあわせて動的な変更をソフトウェア“だけ”で実現する。
サーバ事業も展開しているHuaweiでは、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」がベースの「FusionSphere」を利用したシステムを展示していた。OpenStackはオープンソースのクラウド基盤で、NFVは欧州の標準化団体「ETSI」のNFVISG(Network Functions Virtualisation Industry Specification Group)で仕様を策定しているネットワーク機能の仮想化技術だ。FusionSphereの上でNFVを利用することで、システム運用においてこれまでの専用ハードウェアが不要となるので、コストが削減できるほか、生産効率性、そして、システムの拡張性などのメリットが得られる。
Huaweiのブースではさらに、通信業界固有の仕様を反映したオーケストレーションレイヤー(クラウドに展開する複数のプロセス制御を調整する)の「MANO」(Management and Network Orchestration)に関するデモも行っていた。
このデモでは、マシン間通信モジュール用のシステムを300万台規模で実装する場合でも、事前に設定したトラフィックモデルからクライアントマシンの情報を収集してクラウドOSに読み込むなど、大規模システムの導入作業や設定作業が容易にできることを示していた。Huaweiの説明では、通常で1カ月かかるような作業が10分以下で完了するという。
さらに、システムのリソースを一元化して制御できるので、CPUの利用率をモニタリングしながら、処理負荷に合わせて必要なリソースを振り分けることもできるという。このように、MANOではハードウェアコストだけではなく、オペレーション面でもコストと時間の削減が期待できる。Huaweiは、MANOがNFVのメリットを活用するために重要な技術になると訴求している。
Huaweiは、NFVを「Cloud Edge」ソリューションに導入して展開する予定だ。Cloud Edgeではモバイルブロードバンドネットワーク上にNFVを構築するために必要となる、vEPC(virtualized Evolved Packet Core)、vMSE(virtualized Multi-Service Engine)、そして、MANOをサポートする。商用化は2014年中を目指す。
このように、NFVは「これまでやってきたことの効率化」とHuawei キャリアソリューション&マーケティング本部キャリア・ソフトウェア&コアネットワーク・ビジネス部プロダクト・マネージャーの三品隆嗣氏は強調する。「なにか新しいサービスがでてくるのではない。現在行っていることを効率よく、簡素化し、コストをさげるのがNFVだ」(三品氏)
一方、Huaweiは、SDNに対するアプローチとして「SoftCOM」を2013年2月に発表している。サーバ事業も展開しているHuaweiにとってネットワーク仮想化技術のNFVとソフトウェアによる動的なネットワーク設定技術のSDNの融合はチャンスといえるが、NFVでは異なるベンダーの技術を利用することを想定している。それでも、システムインテグレーション企業で「サーバの知識を持つのはHuaweiのみ」であり、そのことをHuaweiの差別化にしていきたいと三品氏は語った。
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