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» 2014年07月14日 18時15分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:“義務化”で盛り上がる「SIMロック解除」 そのメリットとデメリット (1/2)

総務省が進める「SIMロック解除」の義務化。そもそもSIMロックとは何のために行われているのか、また解除すれば本当にスマホの料金は安くなるのだろうか?

[佐野正弘,ITmedia]

 「SIMロック解除が義務化」という報道が流れたことで、再び大きな注目を集めているSIMロック解除に関する話題。では一体、そもそもなぜSIMロックは存在するのだろうか。そしてSIMロック解除が義務化された場合、キャリアやユーザー、そして携帯電話の周辺ビジネスにどのような影響が起きる可能性があるのだろうか。

キャリアが「SIMロック」をかける理由とは

 去る6月30日、総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施した「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」において、SIMロック解除を義務化する方針が打ち出された。このことが多くのメディアで取り上げられたことで、再びSIMロック解除に関する話題が盛り上がっている。

 しかし、そもそもSIMロックとはどのようなものであり、SIMロックが解除されると何が起きるのか、意外と理解されていないことも多いようだ。そこで今回は改めて、SIMロックとその解除の影響について、確認していこう。

 まずはSIMロックとはそもそも何か? ということについて、簡単に説明しておこう。現在、国内で販売されている携帯電話やスマートフォンの多くには、「SIM」と呼ばれる小型のICチップが挿入されている。このSIMの中には、ユーザーの契約者情報や電話番号などさまざまな情報が入っており、SIMをスマートフォンなどに挿入することで、はじめて通話や通信が利用できるようになる。

 SIMと端末は分離しているので、それぞれ別々に用意したものを組み合わせて利用することも可能だ。実際、キャリアによっては端末を購入せず、SIMのみで契約をすることも可能だし、最近注目されている仮想移動体通信事業者(MVNO)も、多くはSIMのみを提供するスタイルを採っている。

photophoto SIMは端末内部に挿入して利用する。SIMを挿入して初めて、スマートフォンでキャリアの回線を用いた通話や通信ができるようになる

 それならば、キャリアから端末とサービスを一緒に購入せず、別々に購入してもいいのでは? という疑問も生まれてくるだろう。実際海外に目を移してみれば、キャリアとはSIMだけを契約し、量販店で購入した携帯電話端末にそれを挿入して利用するスタイルが一般的な国もある。

 この、一見シンプルなSIMと端末の関係を複雑にしているのが、「SIMロック」の存在だ。SIMロックとは何かというと、特定のキャリアのSIMでしか通信ができないよう、端末側にロックをかけてしまうことだ。キャリアが提供する端末の多くは、このSIMロックがかかった状態で販売されているため、購入したキャリアのSIMでしか利用できない。例を上げると、NTTドコモで購入したiPhoneにソフトバンクモバイルのSIMを挿入しても、ドコモのSIMロックがかかっているため通信はできない。

 ではなぜ、キャリアはわざわざSIMロックをかけるのだろうか。それには、端末販売にかけるコストが大きく影響している。キャリアは自社のサービスをより多く利用してもらうために、端末開発や調達にコストをかけている。また最近話題となった“キャッシュバック”のように、高価な端末をユーザーが購入しやすくするよう、コストを割いて割引施策を実施することも多い。そして割り引かれたコストの多くは、ユーザーが毎月支払う通信費から回収する仕組みがとられている。

 だがコストをかけて端末を販売したにも関わらず、SIMロックがかかっていなければ、ユーザーが短期間で他のキャリアに移ってしまう可能性があり、後から通信費でコストを回収することができなくなる。そこでキャリアは、SIMロックをかけてユーザーが他のキャリアに移りにくくし、確実に通信費(とコスト)を回収できるようにしているのだ。

SIMロック解除で競争を促進させたい総務省

 こうしたSIMロックの仕組みが、キャリア間の競争を阻害する要因になっているとして問題視し、キャリアにSIMロックの解除を求めてきたのが総務省だ。実際総務省は2010年にもSIMロック解除に関する議論を進め、SIMロック解除に関するガイドラインを策定している。

 この時の議論では、キャリア間でSIMロック解除に対する温度差が大きく、公開ヒアリングでも激しい議論がなされていたと記憶している。そのため策定したガイドラインでは、SIMロック解除の取り組みを強制せず、各事業者に委ねられる形に落ち着いた。その結果、ドコモは2011年4月よりSIMロック解除に対応した端末を提供するなど、積極的な姿勢を見せたものの、ソフトバンクモバイルはごく一部の端末のみSIMロック解除に対応、auは3Gの通信方式の違いを理由に対応を見送るなど、やはりキャリアによって対応が大きく分かれたのである。

 ちなみにドコモの端末は購入時点でSIMロックが解除されている訳ではなく、購入後に3150円のSIMロック解除手数料を支払うことで、解除できる仕組み。またiPhoneやiPadなど、一部SIMロック解除の対象外の機種もあるため、必ずしも全ての機種が解除できる訳ではない。

photo NTTドコモは2011年よりSIMロック解除ができる端末を投入している。ただしiPhone・iPadはその対象外だ

 このガイドラインの発表とキャリア各社の対応によって、SIMロック解除に関する動きは一旦落ち着きを見せた。だがその後、ソフトバンクがイー・アクセスを買収したことで、携帯電話事業者がドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの3系列に。解約率も依然1%台以下にとどまっており、新料金プランを打ち出しても横並びとなるなど、大きな競争が起きにくい状況となっている。

 このことに業を煮やした総務省は、再びSIMロック解除に向けた動きを積極化させた。冒頭で触れた「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」において、携帯電話の契約に関するトラブルが増えていることによるクーリングオフの導入に紐づけ、利用者の自由な選択を妨げ利便性を損なっているとして、“SIMロック解除義務化”という方針が取りまとめられたようだ。

 ただし、SIMロック解除義務化の具体的な内容に関して、決定した事実はない。現在のドコモと同じスタイルでの義務化がなされるのか、あるいは最初からSIMロック解除した端末しか販売できなくなるのか。どのような形でSIMロック解除の義務化がなされるのかは、現時点では不明だ。

SIMロック解除のメリットとデメリット

 ではSIMロック解除が義務化した場合、ユーザーにとってどのようなメリットが生まれるのだろうか。最も大きなメリットの1つとなるのは、端末を変えることなくキャリアを容易に変更できることだろう。例えばドコモで購入したiPhoneが、SIMフリー化すればauやソフトバンクモバイル、あるいは他のMVNOのSIMでも利用できるようになるため、端末を新たに購入するコストが不要で、自在に好みのネットワークが利用できるようになる。その結果として、総務省の思惑通り競争が加速して通信費が安くなる可能性も考えられるだろう。

photophoto SIMロック解除すれば、既存キャリアの高性能スマートフォンに、安価なMVNOのSIMを挿入して利用することも可能になる

 ただしこの場合、必ずしも全ての端末が、全てのキャリアのネットワークに相互対応している訳ではないことを覚えておく必要がある。例えばauとそれ以外のキャリアでは3Gの通信方式が異なるため、auのSIMでは利用できる端末はかなり限定されてしまう。またau以外の場合でも、キャリアによって使用する周波数帯が異なるという問題がある。端末によっては利用できる周波数帯が限定されているため、SIMを挿しても利用できない、あるいは本来のネットワーク性能を発揮できない可能性がある。

 もう1つは、海外での通信費を安く抑えられることだ。海外旅行や出張などの際は、国際ローミングよりも現地のSIMを調達した方が通信費が安く済むケースが多い。そこで普段利用しているSIMロックフリーのスマートフォンに、現地のSIMを挿入して利用する。一方で普段利用しているSIMは、通話専用のSIMフリー端末に挿入し、通話専用として利用する。こうすれば、現地での通信費を大幅に抑えられるだろう。ただし、海外でSIMを契約するにはさまざまなハードルがあることは覚えておきたい。

 一方デメリットとして上げられるのは、端末の割引がなくなる、もしくは減少することで、端末価格が大幅に上昇する可能性があることだ。現在日本では、SIMロックや2年以上の長期契約などでユーザーを“縛る”ことを前提として、最新の高性能スマートフォンの価格を大幅に割り引き、“0円”などかなりの低価格で購入できるケースが多い。だが、例えばキャリアが一切のSIMロックをかけられないという厳しい規制がかかった場合、キャリアはSIMロックでユーザーを縛ることができなくなり、縛りを前提とした割引もできなくなってしまう。

 その結果、割引がなくなることで端末購入時の金額が高騰し、ユーザーは端末を定価、もしくはそれに近い値段で購入せざるを得なくなる。人気のiPhone 5sの場合、Appleが直販しているSIMフリー版の価格は最も安い16Gバイトで6万7800円、64Gバイトでは8万7800円となっている。もしSIMロックフリーが義務化されれば、iPhone 5sの購入価格は同程度になり、初期導入コストは大幅に上がってしまうだろう。

photo キャリアの割引施策で安価に購入できるiPhone 5sも、SIMロック解除の影響でキャリアの割引がなくなれば、購入に少なくとも7万円近くかかってしまう
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