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» 2016年04月21日 16時25分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:MVNOだけではない、LINEの大きな戦略転換 プラットフォーム事業を再定義か (1/2)

LINEがリアル決済や格安SIMへの参入を発表した。既存のプラットフォーム事業も見直しが進んでいる。その背景には何があるのか、昨今の動向から今後を見通した。

[佐野正弘,ITmedia]

 「LINE Payカード」でリアル決済の分野に進出したり、MVNOとして通信事業への参入したりするなど、最近急速に事業を広げ、注目を集めているメッセンジャーアプリの「LINE」。LINEに関するここ最近の動向を振り返り、LINEが何を目指そうとしているのか考えてみたい。

MVNOだけではない、LINEの大きな戦略変化

 国内では事実上の標準と呼べるほど定着しているスマートフォン向けメッセンジャーアプリのLINE。そのLINEを巡る動きが、ここ最近再び激しくなってきている。そのきっかけとなったのが、去る3月24日、約2年ぶりに開催された事業戦略イベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」だ。そこではいくつかの大きな発表があったが、中でも大きな驚きをもたらしたのが、MVNOとして通信事業に参入するという計画だ。

「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」 「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」で、LINEがMVNOとして通信事業に参入することは大きな驚きをもたらした

 LINEは今夏、「LINE MOBILE」という名称でスマートフォン向けの通信事業を開始する。既報の通り、その内容は「月額500円」「LINE上でのコミュニケーション利用時の通信料が無料」「Facebook・Twitterや、LINE MUSICなどの通信料が無料になるプランも用意」といったものだ。

 もっとも、LINE MOBILEの無料通信に関しては、ネットワークの中立性などさまざまな問題提起がなされているし、そもそも現在は大まかな情報しか開示されておらず、詳しいサービスの内容は明らかになっていない。だが非常にインパクトのある内容であったことは確かであり、注目を集めていることは確かであろう。

 だがLINE MOBILEだけでなく、このイベントで発表された他の内容や、ここ最近のLINEの取り組み見ていると、LINEが非常に大きな大きな戦略転換を図ろうとしていることが見えてくる。では一体、LINEはどのような戦略を打ち出し、何を目指そうとしているのだろうか。

LINEを大きく変える“公式アカウント”と“オープン化”

 LINEが見せた大きな戦略転換の1つが、プラットフォーム事業に関するものだ。LINEはこれまで、LINEアプリを起点として他のアプリやサービスの利用を拡大するプラットフォーム事業に力を入れてきた。しかしここ最近の動きを見ると、その事業自体に大きな変化が起きていることが分かる。

 変化の1つは、プラットフォーム展開の主軸を、LINEの関連アプリからLINEアプリ内の公式アカウントへ移行しようとしていることだ。従来のプラットフォーム展開は多くの人が利用しているLINEアプリから、ゲームなど他の関連アプリへと誘導し、そのダウンロード数とアクティブ率を高めようというものだった。

 だが、ユーザーが新しいアプリをダウンロードするには手間もかかり、そのアプリを継続的に利用してもらえるとも限らない。そうしたことからLINEは、ゲームなどどうしてもアプリでなければ提供できないものを除き、LINEアプリ内で利用する公式アカウントでのコンテンツ提供に大きく舵を切った。

姿を変えているLINEのプラットフォーム事業 LINEのプラットフォーム事業は、関連アプリへの誘導から、公式アカウントを活用したLINE内でのコンテンツ提供へと姿を変えてきている

 アプリから公式アカウントへ、というLINEの戦略転換を象徴しているのが「LINEニュース」だ。LINEニュースはもともと単独のアプリのみで提供されていたが、その後LINEのアプリ内で、公式アカウントを登録することでニュースが届く「LINE NEWS DIGEST」などに力を入れ、利用者数を増やしている。さらに2015年末には、公式アカウントを用いたニュース配信の仕組みを外部メディアにも開放する「LINEアカウントメディアプラットフォーム」を展開。現在ではLINE上で、LINEが提供するニュースだけでなく、60を超えるメディアのニュースが読めるようになった。

LINEアカウントメディアプラットフォーム LINEアカウントメディアプラットフォームには60のメディアが参加しており、参加メディアの記事がLINE上で読める

 そしてもう1つの変化が、プラットフォームのオープン化である。従来LINEは、プラットフォーム展開に積極的な一方で、外部パートナーへのプラットフォーム開放は消極的な姿勢をとり続けてきた。それを象徴しているのが企業向けの公式アカウントで、これまでは公式アカウントを利用するための料金が非常に高額であったことから、その利用も大企業に限られていた。

 だが先のLINE CONFERENCE TOKYO 2016で、プラットフォームのオープン化を積極的に進めることを宣言。これまで公式アカウントで提供してきたサービスを、従来よりはるかに安価な料金で利用できるようにするとした。さらにLINEを用いた会員登録やプッシュ通知など、企業のWebサービスとLINEを連携させる「Official Web App」も提供。LINE上でWebサービスを提供しやすくする取り組みも実施するとしている。

LINEの「Official Web App」 「Official Web App」を利用すれば、LINE上で企業のWebサービスを提供でき、サービスにLINEの機能やLINEアカウントなどを活用することも可能になるという

 一方で、LINEはここ最近、ECアプリの「LINE MALL」や、フードデリバリーサービスの「LINE WOW」など、いくつかのサービスを終了させている。ゲームや「LINE MUSIC」「LINE LIVE」など、専用のアプリが必要なエンタテインメント系サービス以外は、LINEのオープン化によって外部の企業に任せる方針に転換した可能性が高い。

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