“LINE無料”を打ち出した「LINE MOBILE」の衝撃――業界には大きな課題も石野純也のMobile Eye(3月14日〜25日)(1/2 ページ)

» 2016年03月26日 07時05分 公開
[石野純也ITmedia]

 LINEが、約2年ぶりとなる「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を3月24日に開催した。LINE Payの拡充や、ビジネスプラットフォームのオープン化、画面全体に表示できる「ポップアップスタンプ」の発表などまで、その内容は多岐にわたる。同社代表取締役社長 CEOの出澤剛氏が「スマートフォン時代に合った最高のポータルを提供してく」と語っていたように、発表の数々は、プラットフォームとしてのLINEを、より強固にしていくためのものだった。

LINE MOBILE
LINE MOBILE 「Closing the distance」というキャッチフレーズの元、出澤社長らから矢継ぎ早に新サービスが発表された
LINE MOBILE
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LINE MOBILE クレジットカードとして使える「LINE Pay Card」も発行。LINE Payをリアルに広げていく。ビジネスプラットフォームのオープン化も発表。メッセージサービスの新機能としては、ポップアップスタンプも披露された

 その中で、取締役 CSMOの舛田淳氏によって披露され、大きなサプライズとなったのが、MVNO事業の「LINE MOBILE」だ。以前から、上位レイヤーの強力なプレーヤーがMVNOに参入する可能性は取り沙汰されていたが、その一角であるLINEが、ついに通信事業者として名乗りを上げたというわけだ。しかも、単に通信料が安いだけでなく、LINEやその他サービスのデータ量をカウントしないという施策も打ち出している。

LINE MOBILE
LINE MOBILE イベントの最後に、サプライズ的に発表されたのがMVNO事業の「LINE MOBILE」。舛田氏がその狙いを説明した

LINEがMVNOを開始する狙い

 では、一体LINE MOBILEとはどのようなサービスなのか。まずは、その詳細を見ていこう。

 LINE MOBILEは、ドコモから回線を借りるMVNOだ。そのため、他のドコモ系MVNOと同様、「ドコモ品質のエリアや安定性を確保できる」(舛田氏)。安定性に関しては、MVNOがドコモから借りる帯域の幅や、ユーザー数、利用動向にも左右されるが、舛田氏によると、「速度が出ないといった問題についてはユーザーの皆さまも敏感。きちんと最善のプランを出していきたい」と、品質は重視していく方針だ。

LINE MOBILE 回線はMVNEを介してドコモから調達。これは、エリアや安定性を重視したためだという

 LINEがこのタイミングでMVNOを始めた理由は、2つあるという。出澤氏は、次のように語る。

 「スマートフォンは非常に高性能なデバイスで、ガラケーと違い、1人1人がコンピュータを持ち歩いているような状況がある。ただ、日本ではその普及率が低い。われわれのメリットとして増やしていくだけでなく、それ(普及率の増加)によって、いろいろな課題を解決していける。もう1つ大きいのが、タイミング。恐らく今年は、MVNOの普及率が非常に上がる。現状は、かなりリテラシーの高い層から動いているが、今年から来年にかけてマスが動く。今がいいタイミングだと判断した」

 iPhone 3Gの登場以降、スマートフォンは爆発的に普及してきた一方で、諸外国と比べ、その歩みには少々遅れがあることも事実だ。ここ1、2年は、徐々にスマートフォンへの移行ペースも落ちてきており、大手キャリアも2台目需要の獲得に力を入れ始めている。舛田氏も、49.7%という普及率のデータを挙げつつ、「短い期間で急速に普及してきたともいえるが、一方で、逆を言えば、まだ日本の半分がスマートフォン化されていない」と語っている。

LINE MOBILE 日本では、約半分がまだフィーチャーフォンに止まっている

 その理由の1つとしてあったコストがMVNOの台頭で解消されつつあり、これまでフィーチャーフォンを使っていたユーザーが重い腰をあげ、スマートフォンを使い始めるという状況が出始めていた。イオンが店頭でSIMロックフリー端末とのセット販売を開始し、メディアに「格安スマホ」として取り上げられてからは、その動きに弾みがかかった。NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」や、IIJの「IIJmio」のように、100万回線を突破するサービスも誕生している。

 一方で、出澤氏、舛田氏が言うように、MVNOはまだ多数派にはなっていない。携帯電話の全契約者に占めるMVNO割合は、どんなに多く見積もっても10%に満たず、まだまだ拡大の余地があるといわれている。LINEは、その転換点を、2016年から2017年と見ているようだ。実際、格安スマホの火付け役になったイオンも3月に独自のMVNOサービスを開始、5月には電気通信事業法が改正されるなど、普及が加速しそうな兆候も見えている。

 とはいえ、既にMVNOは200社を超えており、データ通信のみで3GB、月額900円程度が相場だ。価格競争も激しく、後発組が参入するには、何らかの武器が必要となる。舛田氏の言葉を借りれば、「プラスαがなければならない」ということだ。

月額500円でLINEの通信が無料に、Twitter、Facebook、LINE MUSIC用プランも

 では、LINEにとってのプラスαとは何か。舛田氏はこれを「ユーザーのニーズ、利用の仕方、利用シーンに基づいた最適なプラン」だと語る。そのために掲げたコンセプトが、「UNLIMITED LINE」。LINEの通信量をカウントせず、無制限に使えるようにするというものだ。しかも、テキストのメッセージだけでなく、「無料通話やタイムライン、LINEの持っている基本機能、コミュニケーション機能は、全てカウントフリー」だという。LINE内でやりとりされる画像や動画も、無料の対象になり、「月額500円から」という料金を打ち出した。

LINE MOBILE
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LINE MOBILE 「UNLMITED LINE」の料金は、月額500円から。LINEの通話や動画の送受信まで、データ量がカウントされない

 その上で、「UNLIMITED COMMUNICATION」として、「ネットのコミュニケーションをつかさどるサービス」というFacebookとTwitterもカウントフリーにしていく。こちらは、UNLIMITED LINEとは別料金になるようだが、LINEとTwitter、Facebookを合わせたときの影響力は大きい。これらに加えて、「UNLIMITED MUSIC」として、LINE MUSICの通信量をカウントしないプランも提供する構えだ。

LINE MOBILE
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LINE MOBILE UNLIMITED COMMUNICATIONでは、LINE加えて、FacebookやTwitterもカウントフリーの対象になる。LINE MUSICを対象にした「UNLIMITED MUSIC」も、提供する

 また、現状ではMVNOのユーザーのみ、LINEで年齢認証できない問題が起こっている。これは、LINE側が、ドコモ、au、ソフトバンクの提供する仕組みを使っているため。これら大手3キャリアで認証の行えないMVNOのユーザーは、全て「18歳未満」と見なされてしまい、ID検索ができなくなる。LINE MOBILEでは、これも解消していく方針。サービス開始は、今年の夏になる。

 舛田氏が「本質的な目標としては日本の半分。まだスマートフォンに変えるかどうかを悩んでいる方。あとは既にMVNOをお使いいたただいている方にも魅力的だと思う」と言うように、ターゲット層も広く取っている。メッセージサービスのプラットフォームとしてデファクトスタンダードとなっているサービスが始めるMVNOなだけに、業界に与えるインパクトも大きなものになりそうだ。

LINE MOBILE サービス開始は、2016年の夏を予定している
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