“LINE無料”を打ち出した「LINE MOBILE」の衝撃――業界には大きな課題も石野純也のMobile Eye(3月14日〜25日)(2/2 ページ)

» 2016年03月26日 07時05分 公開
[石野純也ITmedia]
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料金の詳細は未定、SIMロックフリー端末のセット販売も?

 大きな衝撃を与えた発表だった一方で、LINE CONFERENCE TOKYO 2016で紹介されたのは、サービスの概要だけだった。詳細は「明言を避けたい」(舛田氏)ということで、まだ明らかになっていない。500円でLINE以外のサービスをどの程度使えるのかや、音声通話付きのプランがあるのかという点に関しては、今後の正式発表を待つ必要がありそうだ。

 「全てが選択肢。LINE中だけで閉じるつもりはない。LINEが一番強い接点になるとは思うが、その他も選択肢に入れて考えている」というように、販路については、実店舗も視野に入れていることがうかがえる。舛田氏の言葉を素直に解釈すると、家電量販店など、何らかの形で、ユーザーが手に取りやすい環境を作ってくる可能性はある。マスを狙ったサービスというだけに、ネットの中で完結してしまうということはないだろう。

LINE MOBILE LINEはキャラクターグッズを販売するショップを拡充しているが、こうした店舗が活用される可能性もありそうだ

 端末に関してはどうか。舛田氏は、「今日はあえて触れていなかったが、どうするかはまさに考えているところ」と言い、詳細への言及は避けた。一方で、あるMVNO関係者によると、既にメーカーや端末の選定、交渉は、始まっているという。LINE側はHuaweiや富士通など、複数の端末を導入することを考えており、実現すれば、国内外のSIMロックフリースマートフォンがそろう形になる。SIMロックフリーモデルとして売れ筋の、3万円を切る価格帯のモデルの導入を目指しているようだ。

LINE MOBILE
LINE MOBILE 端末については明言を避けたが、関係者によると、SIMロックフリーモデルの販売を検討しているという。写真はイメージ

 マスを狙ったサービスということを考えると、バリエーションが十分広がったSIMロックフリー端末をセットで販売するのが、合理的だ。SIMカードだけを入れ替えてキャリアを乗り換えるのは、リテラシーの高いユーザーが中心。まだスマートフォンを使っていないユーザーを狙っている以上、端末も一緒に提供しなければ、非常にハードルが高くなってしまう。

 また、「LINE Phone」などの専用端末を作ろうとすると、調達台数の問題もあり、競争力を出すのが難しくなる。特定のサービス名を冠した端末としては、過去にFacebookの「HTC First」や、Amazonの「Fire Phone」などもあったが、どれも在庫の山を築いてしまった。こうしたリスクをあえて取るより、売れ筋の端末を調達してきて、LINE MOBILEとして提供する方が、スムーズにユーザーを獲得できるかもしれない。

「通信の秘密」や「ネットワークの中立性」を侵害する懸念も

 期待感が高まるLINE MOBILEだが、懸念すべきこともある。前回の連載でも触れたように、特定のアプリ、サービスだけを優遇し、データ量にカウントしないという施策は、「ネットワークの中立性」という考え方と真っ向から対立するものだ。特にLINEは、メッセージサービスで、圧倒的なシェアを持つ。プラットフォームとしてゲームなどのアプリも載せ、これらも順調に伸びていることを考えると、上位レイヤーのプレーヤーとしての影響力は絶大だ。

 舛田氏は「最近では、(米国の)T-Mobileのように、サービス事業者と連携しながら、よりよいプランを作っていくようなことはある。そういうこともユーザーに求められているので、私どもとしては問題ないと考えている」と述べていたが、そのT-Mobileの施策に関しても、米国では意見が割れている状況にある。なし崩し的にネットワークの中立性が崩れていくのは、果たして本当にいいことなのかという点には、疑問符が付く。

LINE MOBILE 舛田氏はLINEのアクティブユーザーの多さを示していたが、その影響力の強さゆえに、大きな波紋を呼びそうだ

 特定のアプリ、サービスを見分けるために使用しているDPI(ディープ・パケット・インスペクション)という技術も、「通信の秘密」に照らし合わせると、グレーな部分が残る。LINEでも、FacebookやTwitterなど、他社のサービスを識別するために、「DPIでシグネチャを見ている」(舛田氏)という。ただ、これまでは、DPIの利用自体が原則として通信の秘密の侵害に当たり、その例外として「正当業務行為」に限ってこうしたことが許容されてきた。

 LINEは、このサービスを契約するユーザーは、あらかじめ特定のサービスが無料になっていることを同意しているため、問題はないという見解を示していた。一方で、正当業務行為の解釈が広すぎるという見方もある。DPIは、行き着くところまで進めてしまえば、検閲行為にもつながってくる。通信の秘密が憲法で保証されているのも、こうしたことを防ぐためだ。

 こうしたサービスを提供している事業者の事例が、日本ではまだ少ない。どこまでが黒で、どこまでが白なのかが、はっきりと線引きされていない状況ともいえるだろう。LINEのように影響力が大きな事業者が始めたことで、反発する事業者が出てくるかもしれない。結果として、総務省から「待った」がかかる可能性も、ゼロではないだろう。

 一方で、通信を本業としていない、異業種からの参入が増え、サービスが多様化することはMVNOの意義の1つだ。LINEのような上位レイヤーの会社が、自社サービスの通信をカウントしたくないと思うのは、自然な発想ともいえる。通信量をカウントせず、自社のサービスの利用を促せるのは、MVNOを始める動機になるからだ。なし崩し的にサービスが広がる前に、総務省や業界団体で早急に議論し、線引きを明確にしていく必要がありそうだ。

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