「値上げ」は悪手ではない? KDDIとソフトバンクの“価値競争への転換”から見える勝ち筋:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2026年05月23日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]

 2025年に「auバリューリンクプラン」などの新料金プランを導入するとともに、既存の料金プランの値上げに踏み切ったKDDI。ソフトバンクもこの手法をトレースし、6月に「ペイトク2」や「テイガク無制限」などの料金プランを導入しながら、7月には既存プランを最大で550円値上げする。

 KDDIが5月12日に発表した前年度の決算では、この成果が営業利益やARPU(1ユーザーあたりの平均収入)にしっかり反映されていた。1年を通して値上げ後の料金が適用される2026年度は、よりその効果が大きくなりそうだ。対するソフトバンクも、2026年度の料金値上げを通じて収益増やARPUの向上を図っていく構えだ。

KDDI 新料金プランや値上げの効果がいち早く出た結果、モバイル収入が大きく増加しているKDDI

 一方で、値上げに踏み切れていないドコモは、KDDIやソフトバンクのように大幅な収益増を実現できていない。楽天モバイルも、ユーザー数が増加しているため、収益性は四半期ごとに向上しているものの、ARPUの上昇幅は緩やかだ。ここでは、先行する2社の指標を見つつ、値上げ効果を振り返っていきたい。

価格競争から「価値競争」へ――KDDIが証明したARPU100円増

 「これまでは販促費の競争、プライスの競争だったが、価値をつけることでお客さまに喜んでいただく競争にすることで、現場が非常に自信を持った。ステークホルダーの皆さまにも還元ができている。そうした循環が回っていることを実感できたのが、昨年1年の大きなトピックだった」

 こう語ったのは、KDDIの代表取締役社長CEOを務める松田浩路氏だ。KDDIは、約1年前の2025年6月に新料金プランのauバリューリンクプランを導入。既存の料金プランだった「使い放題MAX」なども、8月に値上げしつつ、「au 5G Fast Lane」や「au海外放題」を15日間相当無料にするサービスを新たに付加している。

KDDI 販促費競争から価値競争に軸を転換させたと話す松田社長

 メインブランドのauだけでなく、サブブランドのUQ mobileにも「コミコミプランバリュー」や「トクトクプラン2」を導入しており、auからやや遅れて既存の料金プランもデータ容量を増やすなどして、料金を上げている。KDDIが12日に発表した決算は、その成果が如実に出たものになっていた。分かりやすいのは、1ユーザーあたりの平均収入を示すARPUだ。

 2026年3月期のモバイルARPUは4440円で、前年同期比で100円アップを果たした。ここ数年は、サブブランドへの流出や料金値下げなどが直撃し、ARPUの伸びは多くて数十円単位だったが、値上げによってその状況をついに脱した格好だ。ただし、このARPUは年間を通してのもので、値上げ効果が全て含まれていない。

KDDI モバイルARPUは、一気に100円増加した

 より母数の大きな既存プランの値上げがauは25年8月、UQ mobileは同年11月からだったからだ。実際、四半期ごとのARPUを見てみると、25年6月までの第1四半期は4340円だったのに対し、値上げした8月が含まれる第2四半期は4460円と一気に120円上がっている。UQ mobileの値上げが実施された第3四半期には、そこからさらに90円上がり、4550円まで拡大した。

 この傾向が続けば、2026年度のARPUはさらに向上するはずだ。また、通信料収入は単純化すると回線数とARPUの掛け算で決まる。そのため、KDDIのモバイル収入も“爆増”しており、2025年度(26年3月に終了する決算期)は前年同期比で326億円増加。2兆円を突破している。業績面では、値上げの断行が成功だったといえそうだ。

KDDI 決算開示された主要オペレーションデータを見ると、ARPUが2025年度第2四半期から急増していることが分かる
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