もっとも、いくらARPUが上がっても、掛け算のもう1つの変数である回線数が減ってしまえば効果は限定的になる。値上げを嫌気し、ユーザーが大量流出するような事態になると、ARPUは上がっても、モバイル収入が増えない可能性もある。この数値を実現できたのは、契約者数をきちんと維持できたことも背景にある。
スマホの解約率は1.26から1.29へとやや上がっているものの、年度末の主要回線数は4234万で、スマホの稼働数に絞ると3323万。いずれも、前期からわずかながら純増している。値上げしながらも、ユーザーが大量に離反することはなかった。こうした状況を指し、松田氏は「値上げありきという話ではなく、価値作りありき」だとしながら、「皆さまのニーズに合った、受け入れられる価値を作っていけるかがポイントになる」と話す。
実際、KDDIは値上げの際にも、先に挙げたau 5G Fast Laneや海外ローミングの無料化、さらにはそれに先立つ形で「au Starlink Direct」に対応し、ユーザーの利便性を向上させた。こうした点が、ユーザーから評価されたというわけだ。
こうした結果を受け、KDDIは新たに策定した中期経営計画でモバイル通信を「テレコムコア」と位置付け、増収増益を加速させていく方針を示した。収益は成長をけん引する金融やローソン、デバイス販売などの領域への投資にも充当しつつ、「テレコムコアのエンゲージメントを高める好循環を生み出すことで、成長の相乗効果を創出する」(同)としている。
値上げで先行し、好循環を生み出しつつあるKDDIだが、これを追うのがソフトバンクだ。同社は、KDDIから1年遅れて新料金プランのペイトク2やテイガク無制限を導入。これに伴い、7月から既存の料金プランも最大で550円値上げする。au 5G Fast Laneと同じ優先制御の「Fast Access」や、海外データローミングの無料化も行い、単純な値上げではなく、サービスを拡充することで納得感を与える。
ソフトバンクの値上げはまだ実施されていないため、決算にその成果が反映されるのは今期からだ。一方で、その前哨戦として、新規獲得から既存の利用者を重視する方向にかじを切り始めている。解約率を引き下げることで、値上げ後の収益を最大化できるからだ。ソフトバンクの代表取締役社長 執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「新料金プランの浸透やグループ経済圏の利用、長期ユーザーへの注力に取り組んでいく」と話す。
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