一気に攻勢に出たように見えるUQ mobileだが、これによって、市場の構図が大きく変わってしまうかもしれない。auのスタッフを販売に手を貸すということは、事実上、auのサブブランドに近い位置付けになり、ソフトバンクに対するY!mobileにより近い立場になる。冒頭で述べたように、ドコモ系MVNO群とY!mobileが激戦を繰り広げていた市場に、UQ mobileが入り込む余地もありそうだ。
一方で、このサブブランド化は、auにとってもろ刃の剣にもなりかねない。スタッフ連携などは、「独占契約ではない」(野坂氏)というものの、やはり関連会社優遇との見方は避けられないだろう。こうした事情もあり、サブブランドを作ることに慎重なドコモとは、ある意味対照的だ。MVNOに大きく出遅れていたKDDIにとっては、苦肉の策といえるだろう。
UQ mobileの潜在能力を測る上では、他のMVNOやY!mobileと比べ、端末ラインアップが大きく見劣りするのは、不安材料だ。発表会ではSIMロックフリー端末も増えていく見通しが語られていたが、音声にCDMA 2000 1Xを使うauのネットワークを使っている以上、どうしても対応端末は少なくなる。端末をLTEだけに対応させ、音声通話にはVoLTEを利用する手もあるが、あるメーカー関係者は「仕様が3キャリアでバラバラなため、SIMロックフリーで実装するのが(コスト的、技術的に)難しい」と、裏事情を明かす。
メーカーの中には、auのVoLTEに対応することをもくろんでいたが、結果として直近での対応を見送らざるをえなかったところもあったという。そのため、対応端末のラインアップが充実するには、もう少し時間がかかりそうだ。
対Y!mobileという観点では、端末だけでなく、独自のショップがないところも弱みになる。野坂氏は「現状での計画はない」と述べていたが、将来的には、auとの連携をさらに踏み込み、auショップでUQ mobileを扱う必要も出てくるかもしれない。このように大きな課題は残っているものの、一方で、KDDIバリューイネイブラーが運営していた時代のUQ mobileより、サービスは魅力的になったのも事実だ。端末や営業力次第では、UQ mobileがMVNO業界の台風の目になるかもしれない。
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