2兆円を超える世界の中古携帯市場の中でも“ドン”に君臨している中国深セン。携帯電話普及率は100%を超え、これから中古マーケットが急成長すると予想されているフィリピンマニラ。今回は、これら2カ国の中古携帯マーケットの現状をお伝えします。
まず両都市の紹介から。
深センは、中華人民共和国広東省にあり、中国第4位の人口1000万人以上を抱える大都市です。香港と隣接しているため、香港から陸路船路を通して世界中から大量のスマートフォンやそれに関連する情報が流入しています。世界的スマホメーカーのXiaomi、Huawei、OPPO、VIVOだけでなくiPhone製造工場もあるため、製造されたスマホや修理用部材が香港を通して世界中に輸出されています。
修理部材だけでなく修理技術もあるため、故障したスマホや外装が悪い端末をリファビッシュして高く販売するスタイルが一般的です。
中国の3大キャリアは、China Mobile(中国移動)、China Telecom(中国電信)、China Unicom(中国聯合)です。
フィリピン共和国は、人口約1億人で携帯電話普及率は約110%。キャリアはSmart(スマート)とGlobe(グローブ)の2社です。
今回視察した首都マニラは、深センと同様1000万人以上の大都市です。2016年ドゥテルテ大統領就任後、麻薬や犯罪の取り締まりで治安がかなり改善されました。中古マーケットはというと、小規模店舗が香港から主にiPhoneを輸入して販売しているだけというのが現状です。ただ、筆者が見た限り、iPhoneユーザー2に対しAndroidユーザーは8の割合で多いのに、iPhone以外の中古携帯があまり流通していないことに違和感を覚えました。
深センもマニラも日本とは異なり、キャリアは基本的に携帯電話端末と契約回線を分離して販売しています。
ユーザーは、キャリア(契約回線)を「料金プランがお得」「通信速度が速い」「懇意にしている」「キャリア特典やキャンペーン」などの基準で選択できます。
端末は、「メーカー」「スペック」「色や形状」「値段」などの条件で購入します。
中古端末は新品より安価で購入できるため、深センでは中古端末を購入するのが当たり前。iPhoneをはじめSamsung、Huawei、OPPO、VIVO、ソニーモバイルなどさまざまなメーカーの中古端末が流通しています。
それに対し、マニラでは中古流通が一般的ではないため、日本と同じような状況だと感じました。
日本では、基本的に端末と契約回線はセットという考え方があるため、分割払いで購入すると端末代金は毎月の料金に内包されています。そのため、新品の端末本来の価格が分かりにくく、中古の価格メリットが見えにくくなっているのが現状です。
それぞれの店舗形態を比較してみました。
深セン
マニラ
マニラは深センと同じような店舗の作りになっていました。深センと違う点は以下の通りです。
これらに対して日本の現状は以下の通りです。
最後に流通チャンネルを見ていきましょう。
深セン
マニラ
日本国内には、楽天市場やYahoo!オークション、Yahoo!ショッピング、Amazon.co.jpや専門マーケットプレースのムスビー、スマホのマーケットなどいろいろなECサイトが発達しています。日本では店舗販売よりもEC販売の方が主流になっています。
7〜8年前の深センでは、シャープや京セラのガラケーやガラケー用の充電器が販売され、3〜4年前からスマートフォンの修理用部材や修理ブースが急増するなど、時期によって特徴が変わります。今回取り上げた深センやマニラのマーケットも、これから急激に変わりそうです。
粟津浜一
株式会社携帯市場 代表取締役
1979年岐阜県生まれ。2004年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。その後ブラザー工業にて、さまざまな研究開発業務に従事。2009年株式会社アワーズ設立、社長に就任。2017年株式会社携帯市場に社名変更。中古携帯を日本中に文化として広めることをビジョンとして、中古携帯市場動向セミナー、事業説明セミナーを行い、これまでに1000以上の店舗に中古携帯事業を展開、コンサルティングを行っている。
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